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脳筋忍者はシノビたい  作者: ハマ


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セリア2

【アルメニア王国記】では、仲間になるキャラ次第で、魔王討伐の難易度を下げることが出来る。


 その筆頭たる隠しキャラが、召喚師ココ。

 黒猫の獣人の娘で、ゲーム開始時では盗賊に捕まっている。

 公式からも、作中最強の仲間と認定されており、終盤では必須のキャラクターでもある。

 伝説の召喚獣であるフェニックス、フェンリル、バハムートを従えていて、一人でも魔王に挑むことが可能と明言されている。

 完全にアスト・サモントの上位互換だ。

 さらばアスト、君に席は用意して上げられない。


 そんなココちゃんとの出会いのチャンスは一度きり。


 それが、騎士科で行われる魔物討伐のイベントである。


 盗賊から逃げ出したココちゃんを保護することで、仲間に加えることが出来るのだ。


 このイベントに参加するには、騎士科に所属するか、騎士科の誰かと仲良くなる必要がある。


「あの、ピスターブさんですよね?」


「そうだが、君は?」


「私はセリア・ノルドと言います。これ差し入れです」


「差し入れ? お菓子か……」


「あっ毒とか入ってないんで安心して下さい。それで、一つお願いがあるんですけど……」


「何だ?」


「私、回復魔術が得意なんですけど、騎士科の訓練に参加させてるもらえよう、先生にお願いしてもらえませんか? その、回復魔術の訓練がしたいんです」


「……分かった、一応話はしてやる」


 警戒すると思ったけれど、すんなり話を聞いてくれた。

 流石、攻略難易度易しいのキャラクターだ。


 ピスターブ・ヒストリカは大きな体格で、他のキャラに比べてヴィジュアルは劣る。それでも、男気溢れる人物で、ゲームをした男性ユーザーから最も支持されているらしい。


 この後、魔術科の授業の一環として、騎士科の模擬戦の時のみ参加が許された。


「セリアさん、今日も騎士科に参加するの?」


「ええ、クレアさんも一緒にどう? 回復魔術のいい練習になるよ」


「私はいいわ。騎士科にはしつこい男がいるから気をつけてね」


「ありがとう。でも、騎士科のみんなはとても紳士だよ」


 クレアさんは、一体誰のことを言っているのだろう。騎士科の人達は、男子も女子もとても優しいというのに。


 騎士科の訓練場に向かうと、大きな男子が駆け寄って来る。


「セリア!」


 それは、私が最初に声を掛けたピスターブ。

 訓練で負った傷を治していると、何故か懐かれてしまった。


「ピスターブ、今日もよろしくね」


「ああ、君がいるから俺達も思う存分訓練に励むことが出来る! 殿下もとても感謝していたぞ!」


「うん、そう言ってもらえると、私も嬉しいよ」


 素直にお礼を言ってくれるピスターブが、何だか大きな犬に見えて来るから不思議だ。いや、セガール殿下の護衛でもあるから、番犬に見えてもおかしくはないのかもしれない。


 他の騎士科の人達からも受け入れられて、怪我をした生徒を治療して行く。


「セリア、いつも助かる」


「ミレイさんも、無茶しないでね」


 他の生徒達とも交流を深めていき、なかなか良い関係が築けているのではないだろうか。

 それだけじゃない、セガール殿下との距離も縮まったような気がする。


「最近、回復魔術が上達しているのではないか?」


「本当ですか⁉︎ セガール殿下に褒めていただけると、とても励みになります」


「あはは、じゃあたくさん褒めないとな」


 ぎゃっ⁉︎ 眩しい! イケメンのキラキラ具合が眩しい⁉︎

 流石は勇者になる人物。リーナちゃんには劣るものの、私の目を焼き尽くすだけの輝きを放っている。


「ところでセリア、来週野外での演習があるんだが、君も参加してくれないか?」


「え? それって、騎士科がやっている魔物討伐ですか?」


「そうだ。他の回復魔術の使い手にも参加してもらう予定だが、君にも是非参加して欲しい」


 これは間違いなく、ココちゃん出会う為のイベントだ。

 なら、迷う必要は無い。


「はい、よろしくお願いします!」


 こうして、私の演習参加が決定した。




   ◯




 演習に参加すると、アンドレアさんがいた。

 他にも普通科の生徒はいたけれど、ジール君じゃないので気にしなくていいだろう。


 運の良いことに、私とアンドレアさんはセガール殿下の班に入った。

 私は回復魔術を期待されて、アンドレアさんは、ダブルキャストと呼ばれるスキルを見込まれてだろう。


 アンドレアさんの魔術の腕前は凄まじい。

 二つの魔術を同時に使用し、重ね合わせることで一段階上の魔術に昇華させることも出来る。

 仲間にすれば、最後まで第一線で戦える戦力になる。


 それに、絶対に仲間にしないといけない。

 

 もしアンドレアさんを仲間にしなければ、彼女は途中で死んでしまうから。


「アンドレアさん、よろしくお願いします!」


「えっと、あなたは、セリアさん、だったかしら?」


「はい! セリア・ノルドです。アンドレアさんのお噂は予々伺っております」


「そう……噂は真に受けないでね。私は天才じゃないし、もう魔術師を諦めているから……」


 暗い顔をするアンドレアさん。

 その理由を私は知っている。

 リーナちゃんの存在だ。リーナちゃんが作り出す新たな魔術とその理論を見て、アンドレアさんの自信は粉々に砕け散ったのだ。


 スキルの恩恵で天才と呼ばれたアンドレアさん。

 努力と才能で天才になったリーナちゃん。


 どちらも天才だけど、その下地がまるで違う。


 リーナちゃんは自分の力で、どこまでも行ける天才。

 アンドレアさんは、誰かの理論を使わなくてはならない天才。


 周囲の評価は、完全にリーナちゃんに傾いてしまっていた。


 でも、私は違う。

 アンドレア様の良さを知っている。


「そんなことないです! アンドレアさんのその能力は、神様が与えてくれた物。誰かと比べるんじゃなくて、自分の道を行くべきなんです!」


 これは、ゲームでも言っていた台詞。

 この言葉で、アンドレアさんは はっ⁉︎ として自分の道に気付く。


 そう思っていたのだけれど、思っていたのと違った。


「……はあ。同じようなこと、あの子にも言われた。本当の天才って、他人の可能性まで見抜ける物なのね。懇切丁寧に、ダブルキャストの可能性を教えてくれたわ。おかげで、私の自信は粉々に粉砕されちゃった。あっ勘違いしないでね、魔術師になる気はないけど、魔術の練習を辞めるつもりは無いから」


 そう言うと、アンドレアさんは先に行ってしまった。


「……え? 思ってたのと違う」


 予想外の反応に、私はしばらく動けなかった。




   ◯




 やっぱり、何かがおかしい。

 ここに来て、ゲームとの違いがはっきりと見えて来るようになった。


「これって、誰かが介入している?」


 私以外に、転生者がいる可能性がある。

 その人も【アルメニア王国記】をプレイしていて、ゲームの知識がある。

 それも、アンドレアさんに話が出来るほど地位が高い人だ。


「……もしかして、リーナちゃんって転生者?」


 演習中に考えていたからか、ピスターブに聞かれてしまった。


「さっきから、何ぶつぶつ言ってるんだ?」


「考えごとしてるの。……ねえピスターブ、セガール殿下の婚約者ってリーナ・ストロングさんだよね?」


「……それ、誰から聞いたんだ?」


「え? みんな知っているんじゃないの?」


「そんなわけないだろう、セガール殿下に婚約者はいない。リーナ嬢が……その……なかなか首を縦に振らなくてな。それに、王妃様も反対に回ってしまって、婚約は難しいだろうな」


「え? 断ったの?」


「断られた、な」


 やっぱり何かがおかしい。

 リーナちゃんが転生者だとしても、どうしてセガール殿下との婚約を断るのだろう?

 そもそも、王妃様が反対に回るというのも理解が追い付かない。

 確か、リーナちゃんを見付けたのが王妃様だったはずだ。


 もうここは、直接リーナちゃんに話を聞いた方が早いだろう。


 この演習が終わったら、直接会って話をしてみよう。


「それよりも今は、ココちゃんね」


 今は、ココちゃんの救出が最優先だ。


 あの子は、私達を追手だと思って逃げる。

 それを捕まえて、やって来た盗賊を返り討ちにすれば、私達を信用してくれる。

 ココちゃんの覚醒イベントも一緒に発生するので、気を引き締めないといけない。


「さあ、いつでも来い!」


「おお、やる気なところ悪いが、下がっていてくれ」


 そうピスターブに注意されて、大人しく下がった。



 森の中の捜索、もとい魔物討伐は続いて行く。


 そろそろ、ココちゃんと接触する場所にたどり着く。

 森の開けた場所。その中央で眠るココちゃんを起こしてからが、鬼ごっこのスタートだ。


 ゲームでは、このイベントがあるはずだった。


 間違っても、魔王軍四天王最強の龍将ヴェルダンドンが現れるイベントじゃなかった。

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