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脳筋忍者はシノビたい  作者: ハマ


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セリア1

 この世界が【アルメニア王国記】という乙女ゲーだと気付いたのは、メノウ学園に転入が決定した時だった。


 私、セリア・ノルドは転生者だ。


 はっきりと転生したのだと認識したのは、メノウ王立学園の文字を見た時だ。

 その時、頭の中がパァーッ⁉︎ と明るくなった感覚を今でも覚えている。

 これまで、違和感を覚えながら日常生活を過ごしていた。その原因は、前世の記憶だったのだろう。


 前世の私は、オタクではあるが普通の女子高生だった。

 アニメ、漫画、ゲームと何でもやっていたのだけれど、特に乙女ゲーというジャンルが好きだった。

 数ある乙女ゲーの中でも、『アルメニア王国記』はお気に入りの作品だ。

 復活した魔王を倒すという王道でありながら、サブキャラにもストーリーがある良作。キャラ育成も幅広く、能力値から得意魔術、その組み合わせでいくらでも強化出来る。更に特殊スキルや、数多くの武器により、ロールプレイングとしても完成度が高かった。

 良作ではあるのだけれど、一般的にはそこまで人気があったわけではない。

 でも、私の大好きな作品だ。


「勝ったな」


 この世界に転生した時点で、私の勝利は決定した。

 アルメニア王国記を私は徹底的にやり込んでいる。どこで仲間が加わり、どんなイベントがあり、どこにアイテムが眠っているのか、全て私は把握している。


 今の時点で、私は最弱の魔物にも負けるだろう。

 このゲームの難しい所は、レベル制ではなくポイント割り振り制、でもなく、戦い方次第でパラメーターが上昇するという物だ。

 変更可能アイテムもあるにはあるけれど、それを手に入れるには、かなり大変なイベントを終えなければならない。


 可能なら鬱展開でやりたくないイベントなのだけれど、ゲームでは強制発生だった。

 あのイベントの時だけは、やるせない思いをしながらコントローラーを握っていたのを覚えている。


 そんな私は、こうして転生してメノウ王立学園の前に立つ。


「この一歩からゲームが開始される」


 片田舎の学舎で、回復魔術の才能が見込まれてスカウトされた。

 二年生の途中からの参加だけど、ゲーム知識があればどうにでもなる! そう自分に言い聞かせて、私は第一歩を踏み出した。



   ◯



 私の学科は魔術科だった。

 ゲームでは、学科を選べて好きな所に行けるのだけれど、現実だと魔術科一択だった。

 それも当然だろう。そもそもの話、回復魔術の才能を見込まれて転校して来たのだ。他に選択肢がある方がおかしかった。


 とはいえ、魔術科というのは悪くはない。

 魔術科には、攻略対象であるジック・プレットがいる。

 ジックは魔術科なだけあり、様々な魔術に精通しており、育成次第では全属性使えるようになる。

 彼を仲間にすれば、かなりの戦力間違い無し!

 まあ、仲間に加える気はないけどね。


 それに、この科なら魔術の練習と偽って、授業を抜け出すのも可能だ。


 この時間を使って、私は騎士科の訓練に参加させてもらうのだ。


 騎士科には、この国の第二王子であり、いずれ力に目覚めて勇者として覚醒するセガール・ジ・アルメニア様がいる。


 そのお供で、子爵家のピスターブ・ヒストリカが在籍している。

 ピスターブは最も攻略がやり易いキャラだ。ただ性能は中盤までは十分使えるけど、終盤だとどうしても控えに回ってしまう。


 普通科だと、ジールだろう。このキャラは、隣国であるコーダイ帝国からのスパイだ。

 槍や魔術を使って戦い、様々な育成要素がある。魔王との決戦でも使えるポテンシャルを持っていて、ぜひ仲間に加えておきたい。


 特別科には、召喚師のアスト・サモントがいるけれど、上位互換が他にいるので、余り気にしなくてもいいだろう。

 それに、このキャラだけは、私が干渉しない方が幸せになる可能性がある。


 次に隠しキャラになるけれど、ベルモット・ストロング。

 彼には、是非仲間になってほしい。

 最初からステータスが高くて、とても魅力的な見た目をしているのだ。

 私の、推しキャラの一人でもある。


 学園で知り合える男性キャラは、これくらいだろう。

 次に女性だけど、学園で仲間になるのは二人。悪役キャラが一人。


 仲間になるのは、アンドレア・カーニバル。それとミレイ・リンレイ。

 この二人は強い。乙女ゲーというわけではないけれど、男性キャラと比較して女性キャラは基本的に強い。


 最後に悪役だけれど、名前はリーナ・ストロング。

 ベルモットの妹で、セガール殿下の婚約者。

 新たな魔術をいくつも開発している、魔術科切っての天才。


 そして、いずれ魔王に肉体を乗っ取られる不遇のキャラクターでもある。


「まずは、リーナちゃんにセガール殿下を諦めてもらわないと……」


 リーナちゃんはセガール殿下に依存している。

 貴族で婚約者という立場があるから表には出さないが、セガール殿下が他の女といるのを見掛けると、陰で嫌がらせをする。

 それこそ、女子生徒が学園を辞めるくらいの嫌がらせをする。


 作中で最も病んでいる娘である。

 はっきり言って怖い。


 リーナちゃんは最終的に、魔王と一緒に死ぬ。

 最初は、ヴィジュアルが良いから生き残るんじゃないかと思ったけれど、どのルートを通っても死ぬ。

 助ける為の隠しアイテムがあるんじゃないかと思って探したけれど、そんな物存在しなかった。製作陣の容赦の無さには、人の心あるんか? と聞きたいほど容赦がなかった。


 ただ、その心を救う方法はある。


 魔王に乗っ取られる前に、セガール殿下への依存度を下げるのだ。


 ゲーム中では、どうしてセガール殿下に依存しているのか明確な表現はされていなかったが、過去に何かあったのだと察せられる。


 恐らくだけど、セガール殿下に似たイケメンに恋をしていたのではないだろうか。その人物が事故で亡くなってしまい、セガール殿下に重ね合わせている。という説を勝手に作ってみたりして楽しんでいた。


 とにかく、依存度を下げるには、セガール殿下の無様な姿をリーナちゃんの前で晒さなければならない。


 騎士科の試合に負ける。

 目の前で転ぶ。

 猫をあやしていたら引っ掻かれる。


 そういう小さな積み重ねで、リーナちゃんは幻滅してしまう。依存度は下がり、最後は安堵した表情で逝ってくれるのだ。


 とりあえず、リーナちゃんの依存具合を見ておきたい。


 リーナちゃんを探して学園を回るのだけれど、どこにも見当たらない。ゲームでは、研究室にいるか騎士科の訓練が見える教室にいるのに、どこにもいない。


「一体どこにいるの?」


 探している途中で、ゲームに登場しないイケメンとすれ違う。


「あっ、イケメン。モブにもイケメンっているんだ……」


 考えてみれば当然だ。

 この世界は現実になったのだから、モブにはモブなりの人生がある。

 彼らの世界を守るのが、私達の役割りなのだろう。


 必死に探してもリーナちゃんは見つからなかったのだけれど、同じクラスのモブ、もといクレアさんに尋ねるとあっさり見つかった。


「リーナ様なら、地下の研究室で次の授業の準備をしていますよ」


「地下? そんな所にもあったんだ。ありがとう、行ってみる」


 クレアさんの言う通り、リーナちゃんは地下の研究室にいた。

 そこでたくさんの資料を持っており、これから教室に行く所のようだった。


「リーナ・ストロングさん?」


「はい、あなたは?」


「っ⁉︎」


 こちらを見るリーナちゃん。

 ゲームでは病んでいるような表現をされていたけれど、現実は違う。

 金糸の髪に、芸術品かと思うほどの整った顔立ち、制服の上からでも分かるプロポーション。その身から溢れる気品は、セガール殿下すら霞むレベルだ。


 この子が、あのリーナちゃん?


「あっ、あの、リーナさん、ですよね?」


「はいそうですけど、あなたは?」


「あっ、セリア・ノルドです。この前、二学年転入して来ました。その、リーナさんはたくさんの魔術を開発していると聞いたんですけど、本当ですか」


「たくさんではありませんが、幾つか作りましたね。もしかして、私の魔術を学びたいのですか?」


「いえ違うんです。その、少しお話がしたくて……」


 間違いなくリーナちゃんだ。

 でも、何だか違和感がある。私の知るリーナちゃんじゃないような、そんな気がする。


「お話しですか? ごめんなさい、今から授業があるので……」


「いえ、そんな。あの一つだけいいですか? セガール殿下との仲はどうですか?」


「仲とは?」


「婚約なさっているんですよね?」


 そう尋ねると、リーナちゃんの目が鋭くなった。

 これ、ヤバいやつだ。

 そう直感した私は、即撤退を決める。


「あっ、別に取り入ったりとか、邪魔がしたいとか、そういうのじゃないですから⁉︎ ただの好奇心です! ごめんなさい!」


 焦って核心に踏み込もうとしたせいで、リーナちゃんに敵認定されてしまったかもしれない。


 もっと慎重にならないと。

 これは現実になったのだから、ゲームのようにリセットは存在しない。

 たった一度のストーリーなのだから、道を間違えるわけにはいかないのだ。


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