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脳筋忍者はシノビたい  作者: ハマ


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リーナ5

ロイヤルガード


獅子王   ライオネル・グライツ

人形使い  マリネット・マリオ

武王    ケンキ・ヒルメス

歌姫    ラムラン・レイブン

冰結    レイジ・レイブン

錬金王   アリフ・フロール

孤高    ハルミット・ヒキリ

魔剣    フォード・グランツ

魔術屋   リーナ・ストロング



  ◯



「魔王の復活が告げられた」


 円卓の会議で獅子王様が最初に放った一言。

 現実味の無い言葉に、ロイヤルガードの半数は眉間に皺を寄せた。

 寄せていない者は、何かが起こったと察知して、独自で調査をしていた者。急に増えた魔物による被害により、ある程度予想していた者になる。


「魔王? 物語りの話じゃないのか?」


 疑問の声を上げたのは孤高様。

 一人で戦い、一人だけ帰還するが故に名付けられた二つ名。あらゆる手段を使って戦い、条件次第では獅子王様に届くとも言われている。


「実在する。勇者アレスの物語りだけではなく、文献にも複数の魔王の存在が示唆されている」


「先日から魔物が活発化している。それも魔王復活の影響か?」


「そうだ。魔物の強化、凶暴化は勇者アレスの時代にも起こっていた。今はまだ強化は見られないが、いずれそうなってもおかしくはない」


 魔剣様は実体験したのであろう。

 街の周りでも、魔物の目撃情報が頻繁に上がっていると聞く。


「それで、どうするの? 魔王が復活したのなら、当然討伐に乗り出すのよね? まさか、みんなで魔王討伐に向かうってわけじゃないんでしょ?」


 歌姫様が、キセルを吹かせながら質問する。

 喉を痛めるようなことをして大丈夫かと思ったが、どうやら使っているのは薬草のようだった。体内の魔力も活性化されていて、常に喉の調子を保っているようだ。


「いや、我らはアメトラス王国、国王陛下の守護が任務である。魔王討伐には、他の者を向かわせる」


「ほう、そんな気骨のある者がいるのかい? 文献を読む限り、僕らでも倒すのは難しい相手だよ」


 錬金王様が蓄えた顎鬚を撫でながら告げる。

 この中でも、最も高齢な方で、話を聞くと百歳を超えているそうだ。

 それでも、まだ動けるというのは、自身が作り出す霊薬や魔道具によるところが大きいのだろう。


「討伐任務には、第二王子であるセガール殿下が向かわれる」


「王族が? セガール殿下は獅子王さんのお弟子だったが、それほどの腕前か?」


 心配そうにするのは、冰結様。

 歌姫様の弟君で、顔立ちも似ていてとてもカッコいい。


「いや、まだ未熟ではあるな。だが、魔王の配下と対峙して生き残っている。十分に資格はあると思うが?」


「魔王の配下? それはどういうことだ? 王族が狙われたってことか⁉︎」


 武王様が怒り始める。

 この人は、いつも怒っているのだろうか?


「いや、偶然だ。学園での魔物討伐の演習中に、魔王軍四天王を名乗る魔族に襲われた」


「四天王ね。言っちゃ何だが、セガール様を取り逃すほど四天王は弱いのかい?」


「錬金王、言葉を慎め。四天王は龍将のヴェルダンドンと名乗ったそうだ。同行していた生徒によると、森ごと消滅させるほどの力を持っていたそうだ」


「? では何故生きている? それほどの力を持っているのなら、学生程度、ものの数ではなかろうに」


「介入者がいたそうだ」


「ほう、介入者ね。そいつは何者なんだい?」


「……不明だ」


「森を消すほどの四天王、それを相手にできる者ならば、かなりの実力者なはず……。魔術屋さん、あんた何か知らないかい?」


 急に振られる話。

 私は笑顔で、


「分かりません」


 と返答する。


「殿下が襲われたという話は耳にしましたが、魔族が現れたというのも、四天王というのも初耳で、驚いているくらいです」


「王族が襲われたというのに?」


「ええ、襲った者は死んだと聞かされたものですから、特に追求はしませんでした」


「死んだ? どういうことだ獅子王」


 魔王の配下であり、四天王。それも広大な森を消すほどに強力な魔族。それから逃げたのではなく、葬ったとなれば大事だろう。


「それについては錬金王、これをどう見る?」


 獅子王様が取り出した物は魔石。

 それを錬金王様に渡すと、モノクロを取り出して鑑定を始めた。


「っ⁉︎ これは、まさか国宝の白光の魔石⁉︎ 貰ってもいいのかい⁉︎」


「いいわけないだろう。それは、白光の魔石ではない。セガール殿下が回収して来た魔石だ」


 錬金王様の感動を理解出来ないのか、拳王様が問う。


「何だよ、ただの石ころだろう? 何騒いでんだ」


「価値の知らん馬鹿者め‼︎ これほど純度の高い魔石を売れば、この王城が建つのだぞ‼︎ これ一つで、どれほどの魔道具が作れるか……」


「おい、返せ」


 懐に忍ばせる錬金王様を注意する獅子王様。


「くっ⁉︎ おい獅子王、セガール殿下はどこで見つけたんだ⁉︎ 今すぐ回収に行くぞ‼︎」


「残念ながら、魔石は全て回収してある。権利は全てセガール殿下にある」


「おおそうか⁉︎ では交渉だ‼︎」


「待て、話はまだ終わってはいない」


 立ち上がった錬金王様を留めて、魔石を回収すると、獅子王様は再び話を始める。


「錬金王は、これを白光の魔石と勘違いした。それほどの価値のある魔石である……」


「どうしたのだ? 勿体ぶらずに話せ」


「知っている者もいるだろうが、白光の魔石は降臨した神が作ったとされる魔石だ。この魔石は、龍将ヴェルダンドンを倒した者が作った物になる」


「作った⁉︎ 作っただとぉ⁉︎⁉︎」


 絶叫する錬金王様。


「じゃあ、その介入者っていうのが神様で、ご降臨なさったってこと?」


「ならば、教会から何か報告があるのではないのか?」


 歌姫様と冰結様から意見が出るが、獅子王様は首を振る。


「教会からは何も無く、目撃したセガール殿下、そのお供の者らも人のようであったと言っていた」


「でも、神様はお一人ではないのでしょう? また別の、人間に近い神様ってわけじゃないの?」


「それは不明だ。ただ、目撃者の一人が名を呼んでおった」


「何て?」


「あれはニンジャ、だと」


 その言葉に思わず反応してしまい、椅子から腰を浮かしてしまう。

 しまった。そう思った時にはもう遅く、注目を集めてしまう。


「どうした魔術屋、何か心当たりでもあるのか?」


「いえ、初めて聞く神様の名だったので、驚いてしまいました」


「ほう、魔術だけでなく、神にも詳しいのか?」


「これまでに降臨なされたと言われている神様は、一通り調べております。新たに顕現された神様であれば、是非知っておきたいと思いました」


「新たに顕現か……、その可能性もあるのか?」


 何とか誤魔化しの言葉を捻り出せても、私の頭の中は混乱していた。


 どうして忍者を知っているの?

 もしかして、誰かが裏切って情報を流した?

 いえ、それは無いわね。私の魔力が混じっている以上、裏切るのは不可能。だったら、兄様が報告しなかったという可能性の方がある。

 でも、基本的に兄様は名乗らない。

 名乗っても殺す前。決して広まらないように、兄様自身努めていたはず。

 ならばどこから漏れた?

 忍者という存在は、お師匠様から伝え聞いただけで、他の誰も知らない。文献を調べても、間者のような似た物はあっても、忍び、忍者という記述は無かった。


 じゃあ、誰が、どうやって知ったのだろう。

 私達が調べ切れなかっただけ?

 まさか、私以上の情報網を持っている?

 だとしたら、近付くのは悪手。

 この会議も覗かれている恐れがある。


 だからといって、踏み込まなければ潰されるのはこっち。


 迷う必要は無い。


「獅子王様、ニンジャを知っている方とは、どなたでしょうか? 文献など残っているようでしたら、是非拝読させていただきたいのですが……」


「学園の女子生徒だ。それだけ分かれば十分であろう?」


 私は必要な情報を手に入れると、感謝を述べてお辞儀をした。


 その後も、会議は続いて行き、魔王討伐パーティの打診を受けたが断った。



  ◯



 円卓の会議が終わり、円卓の間から退出しようとすると人形使い様から呼び止められる。


「魔術屋リーナ・ストロング、少し話があるのだ」


「はい」


 少女の人形がトコトコと歩き、その後に着いて行く。

 誰もいない廊下、日差しが差し込みとても心地良い場所だ。

 人避けの魔術が使われていなければ、ここに止まり談笑している人がいただろう。


「私はね、君がいろんなことを知っているのを知っている。それこそ、私が知らないこともね」


「はあ、そうかも知れませんね」


「知っているだろうけど、私は自分の居場所を明かしたことは一度もないんだ。何者か知っているのは、ごく少数に限られていてね、ロイヤルガードでも獅子王しか知らないんだよ」


「それは、とても献身的ですね」


「……そうだろうね、君ならそう言うと思ったよ。さっきの会議で、武王に詰められた時、君はズルをしたと言ったね。それは本心だね」


「はい、事実ですから」


「……君は、国王陛下に、忠誠を誓っていないね?」


「ええ、それを分かっていて、私を認めたのですよね?」


 少女の人形が動きを止める。

 柱の影から人が現れて、倒れる人形を受け止めた。


 私はその人物に対して、最大限の礼を尽くす。


「始めましてマリネット・マリオ様……いえ、マリーベル・アメトラス様」


 マリーベル・アメトラス様は、この国の王妃様。

 ロイヤルガードの一人、人形使いでもある。


 そして、私が最大限警戒している人物でもある。


「始めまして、リーナ・ストロング。あなたが、私の正体に気付いたのはいつ頃なのかしら?」


「人形使い様を、初めて見た時で御座います」


 その答えに、王妃様は苦笑を浮かべる。


「まさか、一目で見破られるとは思っていなかった。……リーナ、やはりあなたは優秀過ぎる。私がロイヤルガードに推薦したのも、あなたを監視する為よ。それも分かって、この話を受けたのでしょう?」


「はい、私にとって損にはならないと判断しました。たとえ見られても、困るようなことはしていませんので」


「よく言う。あなたの屋敷は、私の眼を持ってしても見通せない。これほど強力な結界を張って、あなたは何をしているの?」


「ただの人助けです。行き場を失った子達を保護して、教育を施しています。屋敷に勤めるメイドも、皆そういう子達なんです」


「……嘘は言っていないわね。本当に油断ならない子、私の能力も知っているのね?」


「はい」


 王妃様の能力は、その目に宿っている。

 他者の嘘を見破る能力、遠く離れた場所を見る能力、物を透過して見る能力。

 これらに加えて、神の加護も受けている。


 故に、忍者の正体に行きつく恐れがある。


 そんな危険人物は、目を細めて私を見る。


「まるで、全てを知っているようね」


「そんなことはありません。必死に情報を集めているだけですから」


「その情報に、どれ程の価値があることやら……」


 頬に手を添えて悩ましげな顔をする王妃様。

 その頭の中では、私の扱いをどうするのか思案しているのだろう。

 沈黙が続いたあと、王妃様から質問される。


「……ロイヤルガードに必要な忠誠心の無いあなたは、その地位に何を求めている?」


 意外な質問だった。

 まさか、歩み寄られるとは思っていなかった。

 少なくとも、ストロング伯爵家を人質に取るようなことを言われると予想していた。

 ならば、こちらも相応の覚悟で告げるべきだろう。


「……多くを救う権利と、悪を挫く権利です」


「また曖昧な権利だこと。救うとは、どのような人物? 悪とは、何を持って悪と見做す?」


「救うは、理不尽に曝される人、私が生かすに足ると判断した人物。悪は、暴虐の限りを尽くす人でなし、人の発展を妨げる存在」


「その中には、王族も含まれている?」


「はい」


 肯定すると、王妃様の魔力が動く。

 次の瞬間、機械仕掛けの大きな口が私の前に現れる。

 その口の中には、あらゆる物を粉砕する牙が並んでおり、飲み込まれたら一瞬でミンチになるだろう。


 それでも私は動かない。


「……まったく、恐ろしい子だこと。いいでしょう、私がこの地位にある限り、あなたの後ろ盾となりましょう」


 王妃様の魔力が霧散すると、大きな口が消え失せる。

 どうやら試験には合格したようだ。


「感謝申し上げます」


「ただし、条件があります。アメトラス王国に害を及ぼす者の情報を私に渡しなさい」


「承知いたしました」


 こうして、私は後ろ盾を得た。

 ただ、下手をすると直ぐに消えてしまいそうなので、一つ忠告をする。


「ではまず一つ。忍者が何者なのか、正体を探るのはお控え下さい」


「それはどうして?」


「正体を知れば、この国が滅びる恐れがあるからです」


「……冗談では無さそうね。分かりました。捜索を取りやめるよう手配しておきましょう」


 これで憂いの一つ解消された。

 私は、礼をして王城を後にした。

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