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第47話 王都とは

 俺たちは王都へと向かうため、バス停……ならぬ馬車停へ来ていた。


「今回は馬車で移動するんですね」


「ああ。あの早く移動する奴は腰への被害が大きいからな。……値段も高いし」


「バリスタってのは100年前は無かったから多少興味はあったが……。まあ馬車の旅も悪くないぜ」


 聞くところによると王都へ向かう馬車は1日1台。馬たちの休憩もあるので3日かかるそうだ。休憩場所である村も料理が美味しいとの噂なので多少期待している部分もある。


「ミナト~!」


「お、ルリカが帰ってきた」


 3人で馬車停で待っていると、遠くからルリカが手を振って現れた。

 実はいくつか食べれるものでも買っておこうとしたところ、良い女アピールの一環なのか1人で買い物に行ってくるというので任せていたのだ。大きな袋を肩に下げており、相当買い込んだに違いない。


「じゃん! 常温でも保存がきくパンや干し肉を中心に揃えてみたわ。もちろん水もね。あとは……はい、シルバ、おやつよ」


 俺たちの前にたどり着き早速袋の口を開くと、パンパンに食料品が詰まっている。途中で村に行かなくても3日は耐えられそうな量だ。


 ルリカはその袋の中から小さな骨を取り出すとシルバに投げ渡す。シルバはぶんぶんとしっぽを振ってそれにかぶりつき始めた。


「ふふん、どうかしら? ちょっとは見直した?」


「ああ、偉い偉い。1人で買い物できて凄いぞ」


「……なんか気に障るけどまあいいわ。それで、馬車は後どのぐらい?」


「もうそろそろだと言っていましたが……。あ、ちょうど来ましたよ」


 ダリアが顔を向けた方向に俺も視線を向けると、がらがらと車輪の音をたてながら馬車がやってきた。

 この異世界は妙に親切なので馬車に行先が書いている。……よし、回送ではなくちゃんと王都行きだな。早速乗り込もう。


*


 到着した馬車は俺たちが乗り込むと、早速進み始めた。

 どうやら今回は他に客がおらず実質貸し切り状態だ。気を緩めることができるのでありがたい。


 向かい合わせになった2列の座席に、俺とレオニック、ルリカとダリアに分かれて座る。シルバは俺の膝に顔を突っ込みブラッシング待ちの態勢だ。


「拠点を手に入れたらやっぱりまずは家具よね~」


 対面でルリカが紙とペンを用意し、ぶつぶつとつぶやいている。

 どうやら欲しいものリストを作っているようだ。拠点を作ると言った時にはぶー垂れていたのにいざ決定したらノリノリではありませんか。


「まずは天蓋付きのベッド、テーブルは黒檀製、そしてソファは牛革張り! これで決まりね!」


「私はベッドはミナト様と共用なので要らないとして……お揃いのマグカップ、それにイエスノー枕は必要ですね」


「……ちょっと突っ込んでいいか?」


 黙って聞いていれば2人ともとんでもないことを言い出した。ルリカは懐事情を一切考えていないし、ダリアに至っては論外だ。大体この世界はイエスノー枕があるのかよ。俺だって某新婚番組でしか見たことないってのに。


「ちょ、こんなところで発情しないでよ! いくら他に乗客がいないからって……!」


「私はちょっとだけなら構いませんよ」


「そういう突っ込みじゃない! 俺をどこでも欲情する変態扱いするのは止めろ!」


 俺は2人の勘違いに声が大きくなってしまう。今までそんな素振り見せたことないだろ。なんで認識が一致してるんだよ。


「くっくっく……」


 俺たちのやり取りを聞いていたレオニックは、下を向いて震えている。どうやら笑い声を抑えているようで、作り物の長い銀髪がかすかに揺れている。


「……レオニックも笑ってないでなんか言ってやってくれよ。まだ拠点が手に入る当てがあるわけでもないってのに」


 家にしろ土地にしろ、無いものは買えないのだ。俺たちが向かう王都は人も多いだろうし、良い場所がすんなり見つかるとは思えないし、見つけても予算の問題もある。


「くっくっく、悪い。だが少なくとも心配すべきなのは金の問題だけだな。拠点については何とでもなる」


「そうなのか? 意外と家が余ってるとか?」


「いや、行けばわかるぜ」


 レオニックは意味深な言葉を発言する。悪い大人ってのは情報を出し惜しみするから困る。

 まあよく考えれば100年前の情報だろうし、今は事情が違うかもしれない。100年経てばお城も高層ビル群になるわけだからな。


「……ちなみに2人は王都に行ったことあるのか?」


 俺はルリカたちにも話を振ってみる。やっぱり直近の情報の方がありがたいし、若い方にも聞いておくべきだろう。


「いや、無いわね。まあ何でも揃ってるんじゃないの? 何せ王都だし」


「私もありません。でも大丈夫です、王都ですから」


 ……なんだその王都に対する絶大な信頼。田舎者の東京信仰かよ。


「……結局自分の目で確かめるしかないか」


 王都まで3日かかるのに慌ててもしょうがない。俺はどすっと再び席に座ると、ルリカの買ってきた干し肉を齧りつつゆったり構えることにした。


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