共通の話題を探したら、図書室に行くことになった
「こんにちは、はるとさん」
「あ、アルゴ」
「何かお困りですか?」
「困っているというほどでもないんだけど」
「何でも相談してください。どんなことでもお手伝いしますよ」
「早坂さんのことなんだけど」
「はい。同じクラスの早坂美月ですね。何かありましたか?」
「え? 何もないから困ってるんだけど」
「何もなくて困っているんですか?」
うっ。こいつ、わかっていてわざと言ってるんじゃないだろうな。
「だから、早坂美月との関係が進展しないんだって」
「早坂美月との関係性構築ミッションに進展がないということですね」
「最初からそう言ってるだろ」
「いえ。はるとさんは『早坂さんのこと』としか言っていません」
「早坂さんのことって言ったら、そのことしかないだろ」
「正確に言わないと伝わりません」
「はいはい。悪うございました」
「では、どうすればいいでしょう?」
「それを聞いてるんだよ」
「挨拶は継続できていますね」
「まあ」
「それは進展です」
「そうかなぁ」
「はい」
アルゴは断言する。
「挨拶の後も、少しずつ会話を増やしましょう」
「だから、それが難しいんだって」
「授業の話はどうですか?」
「前にしたけど、そのままだよ。授業の話だけで会話を続けるのは無理だよ」
「では、ほかに共通の話題を見つけましょう。次のミッションは、共通の話題を見つけることです」
「共通の話題? そんなの、どうやって見つけるんだよ」
アルゴが、少し得意そうに言った。
「早坂美月は図書委員です」
「あー、そういえばそうだったかな?」
「この情報を利用します。図書室を活用しましょう」
「図書室かぁ……」
正直、ほとんど行ったことがない。
「本とか、あんまり読まないんだけど」
「本を読まなくても、早坂美月との会話はできます」
「そうなの?」
「おすすめの本を聞けばいいのです」
「おすすめの本?」
「おすすめの本を聞くことで、早坂美月の興味や好きなことが分かります」
「なるほど」
「さらに、会話のきっかけにもなります」
「うーん。理屈は分からないこともないけど……」
問題は、実際にできるかなんだよねぇ。
「できるかなぁ。自信ないなぁ」
「では、練習しましょう」
「あー、やっぱり練習するんだ」
「私が早坂美月役を担当します」
嫌な予感がする。
「はるとさん。こんにちは。今日は何か用?」
アルゴが女子っぽい声色になっている。
たぶん、早坂さんの真似をしようとしているんだな。
とりあえずスルーして、続けたほうがいいな。
「早坂さん。何かおすすめの本とかありますか?」
「好きなジャンルはある?」
……しかし、全然似てないんだけど。
ここは我慢して続けるしかないよね。
「眠くならないやつがいいです」
「……」
沈黙。
「……何か、変なこと言っちゃったかな?」
「率直すぎます」
「ダメだったよね」
「いえ、ダメではありません。素直に自分の思いを伝えることは良いことです。むしろ、はるとさんらしいです」
「そういうものかな……」
「続けます」
アルゴは勝手に進行した。
「私はミステリーが好きかな」
「へえ」
「例えば、『みんな容疑者』のような作品です」
「じゃあ、それ読んでみようかな」
「はい」
アルゴの声が元に戻る。
「このような流れです。どうでしたか?」
「うーん……」
少し考える。
「正直、できる気がしないかな」
「大切なのは、できるかどうかではありません。やってみることです」
少しだけ真面目な声で、アルゴは言った。
「失敗したら、また次の対応を考えればいいだけです。そのために私がいます」
なんだか、アルゴが頼もしく思えてきた。
「頼りにしてます」
そう答えると、次のミッションへの不安が少しだけ小さくなった気がした。




