文化発表会の共同作業は、ハーレム展開ですか?
「大変だ。アルゴ!」
「はるとさん。こんばんは。何かお役に立てることはありますか?」
「あ……うん……。文化発表会のことなんだけど……」
「文化発表会で展示する『覇王戦記から読み解く古代中国史の光と影』ですね」
「え? そんなテーマだったんだっけ?」
「はい。それで早速、資料整理でへたれて助けを求めに来たんですね?」
「は? ヘタレ? ……そりゃ、少しは思ったけど」
「では、まず年表を整理しましょう」
「いや、資料整理の相談じゃないんだ」
「はい。資料整理以外の問題ですね。展示内容に致命的な欠陥が見つかりましたか?」
「違う」
「資料が不足していますか?」
「違う」
「締め切りが前倒しになりましたか?」
「違う」
「早坂美月が手伝ってくれることになったんですか?」
「違っ……わない。それ」
というか、なんで分かったんだ?
高性能チップ搭載だからか?
「え? 本当に早坂美月に手伝ってもらえるようになったんですか?」
あれ?
自分で言ったのに、信じてないのか?
こいつ、適当に言っただけだな。
やっぱり、ポンコツなんじゃないのか?
「経緯を説明してください」
突っ込んでも仕方ない。
僕は、早坂さんたちが教室に来て、展示内容に興味を持ってくれたことを説明した。
アルゴは数秒間、沈黙した。
「文化発表会準備・共同作業イベント……。ヒロインとの接触頻度が急上昇する、定番展開です」
「えっ。そうなの?」
「早坂美月、悠木葵、桜井千夏。三名同時参加ですね」
「そうだけど」
「ハーレム系作品なら、非常に危険な状態です」
「いやいやいや。そんなんじゃないよ」
でも、ハーレム状態……。
って、にやついてる場合じゃなかった。
「それで、悠木さんたちに名前で呼んでほしいって言われたんだよ」
「名前呼びを許可されたのですね」
「うん。『美月、葵、千夏でいいよ』って」
「完全に王道ラブコメに突入ですね」
「は? ラブコメ?」
「それで、名前で呼んでみたのですか?」
「うん。なんとか言ってみたんだけど……うまく言えたかどうか」
「それでは、ここでの会話でも、早坂ではなく『美月』と名前で呼んでください」
「えっ? ここでも?」
「はい。早く慣れるためです」
「えー……なんか照れるな……」
「ここで言えなければ、彼女たちの前では言えません」
「それはそうだけど……」
決心した。
「……やってみようかな」
「はい」
「早坂さん……じゃない。美月さんたちと一緒に作業なんて、どうしたらいいか分からないんだけど」
「やりたいことを説明して、分担すればいいだけですよ」
アルゴは、何でもないことのように言う。
「それはそうなんだけど……」
「何かあったら、みんなで相談すればいいのです」
「みんなで相談?」
「はい。全員で協力して進めていきます。共同作業は、信頼関係の形成にも有効です」
「そうなの?」
「はい。ですから、特に早坂美月との接点を増やしてください」
「えっ。そんな余裕ないよ」
「では、観察してください」
「また観察か」
「情報は力です」
「なお――」
アルゴが続ける。
「桜井千夏も、かなり積極的です」
「そうかな。まあ、中国史が好きだから、そうかもね」
「観察対象に追加します」
「は? なんでだよ」
「まだ分析中です」
「いや、何を分析してるんだよ……」
でも、ハーレムパーティーかぁ。
いやいや。
そんなこと、あるわけない。
みんなで文化発表会の準備をしているだけだ。
それに、これはミッションだ。
文化発表会の準備を成功させることが第一目標。
そして、早坂さん――じゃない。
美月さんの観察。
……で、なぜか千夏さんの観察。
うん。
でも……やっぱり……。
ハーレムパーティー。
なんか、いい響きだ。
いやいや。
クラスの文化発表会のために、手伝ってくれているだけだ。
でも……しかし……。
まあ、ちょっとだけ。
期待してもいいかな。
それくらい、いいよね。
あれ?
何か会話しないといけないんじゃないのか?
急に緊張してきた。
嬉しいけど……。
ちょっと辛い。




