第2話 伝説のソードを振ったら、一撃だった!
「夜、だったんだ……」
吹雪が晴れると、夜空に虹色のカーテンが風に柔らかな風になびく。
もう、寒さは感じないけど、この夜空の美しさに、思わず僕達は足を止めた。
「綺麗ですね、スート様。 オーロラを見るのは初めてですか?」
「うん、僕の故郷は火山だからね。 冬でも土の奥深くから熱がこもって、とても暑い所なんだ」
「とても暑い所? それなのに、こんな北の果てまで……凄いですね! 流石ですスート様!」
「確かに凄い! 僕は伝説のソードを手にしたんだから!
あはは、少しだけ誇ってもいいかなって……」
「スート様……。 どうしてその様に悲しい顔をするのですか?」
「なんでもないよ! きっと、僕はこれで……うわっ! どうしたの?」
「大丈夫ですよスート様! 私は、いつでもスート様の味方です!」
「あはは、そんなんじゃないって」
急にアイシスが僕を抱きしめる。
氷河の精霊だけど、その腕の中はとても暖かくて、僕はどこか、居心地の良さを感じ取っていた。
少しだけ安心したせいか、三日三晩凍ったポーションしか口にしていない僕のお腹が急にグーっとなってしまった。
「スート様、お腹が空いているのですね」
「ごめん、ポーション齧ったらたぶん、腹の虫も収まると思うから」
「いいえ、スート様。 ちゃんとしたお食事をした方がいいです!」
「そんな事言われても、この極寒の大地じゃ、食べる物なんて何も……」
アイシスは僕の瞳を見つめ、ニコリと笑みをこぼした。
「こんな環境でも、逞しく生きている動物はいますよ! ホラ、丁度あそこに」
アイシスの指さした方を見ると、遠くに動物の影が見える。
人型にも見えるその影は、僕よりもずっと大きくて、真っ白な毛皮の魔獣がこちらへとのっそのっそと歩み寄って来ていた。
「アイシス、僕がやる! この伝説のソードを使ってあの魔獣を倒す! そして、念願の食事をしようじゃないか!」
「そのイキです! スート様!」
今までは魔獣と遭遇しても逃げる事ばかりだった。
でも今は……このソードがある!
僕は剣を突き出し「いくぞ!」と言って走り出した!
長い旅路でクタクタだったのに、力が湧いて出て来る様だ!
魔獣の大きさは僕の4倍も5倍もあるかと言う巨躯。
全然恐ろしくない! それどころか、負ける気がしない!
僕は一気に間合いを詰め、剣を振った!
大きな魔獣のけたたましい悲鳴が轟き、やがてそれは雪と風の音に吸われて失われていく。
それと同時に、倒れた魔獣の鼓動も小さくなり、灯の如く、フッと力尽きるのを目の当たりにした。
「まさか一撃でホワイトベアーを倒すなんて! 凄いですスート様!」
僕よりも先に喜びの声を上げたアイシスの声を聞いて、僕はふと我に返った。
確かに残る手応えに、僕も遅れて「やったぞー!」と勝鬨を上げる!
冒険はきっと、今始まった。
僕が感じたのは、きっと、そんな手応えだった。




