未結4
未結4
「副産物?」
梓が本多に問いかけた。
「うん。応用と言ってもいいかな。偶然だけど、別の使い方を見つけちゃってさ」
本多は椅子に座ったままマグカップに口をつけた。しかし、もうコーヒーは残っていなかった。中身が空であることを確かめると、静かに机の上へ戻す。
目の前には梓がいて、その梓に、自分の成果を説明している。胸の奥がわずかに高鳴っていたが、その高揚を悟られたくなくて、本多は必死に平静を装った。
「このシステムを使うと、ネットワーク上のセキュリティも分解したり、復元したりできるってことがわかったんだ」
「え?」
梓の表情がわずかに動く。
「セキュリティそのものも、分解と復元の対象ってわけ」
「それって、つまり……」
「うん。つまり、セキュリティを突破して、あらゆる会社や公的機関の保存データにアクセスできちゃうってこと」
「セキュリティも?」
「復元するときに“パスワード不要”って形で組み立てれば突破できる。実は、いくつか試しててさ、成功してる」
「なんか、ごめん。本多くんが言うと妙に軽くて、真実味がないというか……」
言葉を探すように梓は口ごもる。
それを聞いて、本多は小さく笑った。
「はは。そりゃそうだよね。データ保存の研究をしてたつもりが、気づいたらクレジット会社に不正アクセスして、カード番号と暗証番号を抜き取れるハッキングシステムを作ってました、なんて。冗談にしか聞こえない」
「なんか、すごいの作っちゃったね」
「うん。もしかしたらさ、AIで作られたフェイク動画とかも、分解して解析すれば見分けられるかもしれない。まだ試してないから理論上の話だけど」
「ただ……」
一呼吸置き、本多の表情がわずかに曇る。
「この話を梓ちゃんにしたのには、理由があるんだ」
「理由?」
「うん」
最初は驚きを隠せない様子だった梓も、少しずつ落ち着きを取り戻し、本多の話に耳を傾けていた。
――後日。
本多は何者かに連れ去られる。
薄暗くなり始めた時間帯、自宅近くの人通りの少ない道で。




