① 評定二・九
三年生の三者面談の日がやって来た。
私は朝から落ち着かなかった。
進路の話になることは分かっていた。
推薦を受けられるのか。
一般受験になるのか。
その分かれ道になる面談だったからである。
私は親とともに教室へ向かった。
いつも授業を受けている教室だったが、その日はまるで別の場所のように感じられた。
担任の先生の前に座る。
机の上には成績表が置かれていた。
先生は書類に目を落としながら静かに話し始めた。
私はその言葉を待った。
しかし次の瞬間、その期待は崩れた。
評定は二・九。
推薦に必要な三・〇には届いていなかった。
一瞬、自分の耳を疑った。
あと〇・一。
数字だけ見れば本当にわずかな差だった。
しかし推薦を受けられるかどうかという意味では、とてつもなく大きな差だった。
先生は慎重な口調で話を続けた。
現状では推薦は厳しいこと。
一般受験の準備を進めた方が良いこと。
国語、数学、英語の試験を受ける可能性が高いこと。
私は黙って話を聞いていた。
何か言葉を返そうとしても頭が真っ白になっていた。
三者面談が終わった後も、頭の中では「二・九」という数字だけが何度も繰り返されていた。
家へ帰ると親から厳しい言葉をかけられた。
なぜもっと頑張れなかったのか。
どうしてあと少し届かなかったのか。
今振り返れば、それは心配や焦りから出た言葉だったのだと思う。
しかし当時の十五歳の私には、その言葉を冷静に受け止める余裕はなかった。
悔しかった。
情けなかった。
そして何より、自分自身に失望していた。
私は一般受験を覚悟するしかなかったのである。




