洗濯自動化魔法
「はあー、お腹いっぱい」
私はお腹をさすった。それを見たイルが、お皿を片付けながら言う。
「満足したら着替えてくださいよ、ディア様。制服汚れてますから」
言われて、私は着ている制服を見下ろした。
「うわ、本当だ。最悪」
白い制服のところどころに泥が跳ねている。気づかなかった。
立ち上がって全身をよく見ると、お尻の部分の汚れがすごい。王子と魔法陣を使う使わないで争ったとき、尻もちをついたからだ。
あ、これ、もしかして自分で洗わないといけないやつ?
ちらっとイルを見る。
(イル、洗ってくれないかな〜)
「ねえ、イ——」
「ちゃんと自分で洗えよ、ディア」
私の斜め前に座っていたハルが私の言葉に被せて言う。
「まだ何も言ってないでしょ」
「イルに洗ってもらおうとしてただろ。魂胆が見え見えだ」
その通りだけれども。
私は頬を膨らませた。
「そんな顔したって、俺は騙されないぞ。なんのためにお前に侍女をつけないで暮らさせてると思ってる。一人で身の回りのことができるようにするためだぞ」
「だってさー、洗濯面倒なんだもん」
「お前はなんでも面倒くさがりすぎだ」
「まあまあ。ディア様も今日は疲れてるし、制服くらい俺が洗いますよ」
イルがハルをなだめる。
けれど、ハルは首を振った。
「だめだ。イルはディアを甘やかしすぎだ。ディア、イルは従者じゃなくて護衛だからな」
ぐう。そう言えば王都で暮らし始めるときにそんなことも言っていたな。
仕方ない、自分でやるか。
「洗濯魔法作ろうかな」
「嫌な予感しかないんですけど」
イルがぞっとした顔で言う。
「洗濯魔法? 面白そうだな」
「面倒なのが増えた」
ハルが身を乗り出してきて、それを見たイルが呆れた様子で言った。
私は手早く制服から着替えて洗濯場に移動する。
洗濯場にはすでにハルがタライを出して待っていた。
「で?どんな魔法にするつもりなんだ」
「うーん、渦の水流を作って、洗濯物をこの中でぐるぐるかき混ぜる感じにしよう思ってる。水流と、布同士の擦れで汚れを落とすの」
「へえ。じゃあ、水生成だけじゃ足りないな。循環の紋様もいれるか」
「そうそう、それ」
さすがハルだ。
昔、一緒に魔法を作っていただけのことはあって、理解が速い。
言いながら私は魔法陣を描く。
「循環って、水流拘束とかで使うやつですよね」
いつの間にか洗濯場に来ていたイルが上から覗き込んでいた。
「そうだよ。洗濯物かき混ぜるのにぴったりじゃん」
「拘束魔法を洗濯に使うなんて……」
イルが驚きなのか呆れなのかよくわからない反応をする。
「ほら、イルも魔法陣描くの手伝えよ」
反対側から描いていたハルが言う。
イルは仕方なしにハルと私の間にしゃがみ込んで描き始めた。
描き進めていると、ふとハルが顔を上げる。
「これ、回転速度どれくらいにするんだ?」
「2秒で一周くらい?」
「速すぎないか?服が破れると困るだろう」
「じゃあ5秒」
「了解」
「ちょ、ちょっと待って!二人で話進めないでくださいよ。回転速度ってどうやって指定するんですか」
「そりゃ、ここの紋様をこうやって変えるんだよ」
「はあ?こんなとこ変えたことないですけど」
ハルが教えると、ぶつぶつ文句を言いながらもイルはきちんと描いてくれる。
「よし、こんなもんか。じゃあ試しに回してみるか?」
「うん。イル、服貸してよ」
私はハルの言葉に頷いてイルの方を見ると、イルはぶんぶん首を振る。
「なんで俺の服なんですか。タオルでやってくださいよ」
「お前の服、丈夫だろ」
ハルが加勢する。
「やっぱり面倒なのが増えてる……!」




