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亡国の姫は生活魔法で快適に暮らしたい  作者: 甘くないオクラ


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3/6

朝から元気な王子様

 結局、イルに無理やり服と髪を整えられて、学園まで引っ張ってこられた。


「はあー、だるい」


 魔法学園の正面にある、無駄に長い階段を見て、私はため息をつく。


「これぐらいすぐじゃないですか。登らないと、身体が衰えますよ」


「そりゃ筋肉人間にはすぐかもしれないけどさ」


 隣に立つ筋肉人間こと、イルを見上げる。

 

 スラリとして見えるが、その服の中に強靭な筋肉が隠れているのを知っている。

 こいつも戦闘狂なのだ。

 

 そういやこいつ、私のスカートも普通に履いてたな。

 身長もかなり違うのに。


 ……いや、私が太っているのではない。断じて違う。イルが締まりすぎているのだ。

 

「何をしている、クラウディア。通路の真ん中で」


 そのとき、後ろから声をかけられた。

 

 振り向くと、顔の非常に整ったキラキラしい男が、鋭い視線でこちらを見ていた。銀色の髪も制服も完璧に整っている。


 (整いすぎてて、見てるだけで疲れるんだわ)


「何もしてないですけど」


 この男は、私の婚約者で、この国の王子だ。

 ……いや、正確にはちょっと違うか。


 私が嫁ぐ予定ではあるが、多分正妃にはならない。妾か側妃か。だから、正式な婚約者かといわれるとちょっと違う。


「何もしていないのになぜ立ち止まっている。通行の邪魔になるだろう」


「朝から元気ですね。尊敬します」


「皮肉を言っている暇があるなら動け」


 王子、セドリックは私をジロリと睨む。


「……それとも、その程度のこともできないのか」


 (感じ悪っ。)


「申し訳ありません、すぐ移動します」


 イルが一歩前に出て私をずるずると引っ張る。


「ああー、イル、そのまま運んでー」


「もう、ディア様が変なところで立ち止まるから、王子に目をつけられたじゃないですか!」


「あの人は私が普通に歩いてても気に食わないから」


「ディア様が普通に歩いてることなんてあります? 大体やる気なさそうに歩いてるか、急に立ち止まるかじゃないですか」


「貴方はどっちの味方なの」


「ディア様ですけど、王子の気持ちもわかる、ということですっ!」


 そう言いながら、イルは私を教室に放り込む。

 

「……はあ、だる」


「ちゃんと授業受けるんですよ!」


 廊下に消えていくその声を、聞き流す。


 (……受けるわけないじゃん。)


 私は、机に突っ伏した。

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