朝から元気な王子様
結局、イルに無理やり服と髪を整えられて、学園まで引っ張ってこられた。
「はあー、だるい」
魔法学園の正面にある、無駄に長い階段を見て、私はため息をつく。
「これぐらいすぐじゃないですか。登らないと、身体が衰えますよ」
「そりゃ筋肉人間にはすぐかもしれないけどさ」
隣に立つ筋肉人間こと、イルを見上げる。
スラリとして見えるが、その服の中に強靭な筋肉が隠れているのを知っている。
こいつも戦闘狂なのだ。
そういやこいつ、私のスカートも普通に履いてたな。
身長もかなり違うのに。
……いや、私が太っているのではない。断じて違う。イルが締まりすぎているのだ。
「何をしている、クラウディア。通路の真ん中で」
そのとき、後ろから声をかけられた。
振り向くと、顔の非常に整ったキラキラしい男が、鋭い視線でこちらを見ていた。銀色の髪も制服も完璧に整っている。
(整いすぎてて、見てるだけで疲れるんだわ)
「何もしてないですけど」
この男は、私の婚約者で、この国の王子だ。
……いや、正確にはちょっと違うか。
私が嫁ぐ予定ではあるが、多分正妃にはならない。妾か側妃か。だから、正式な婚約者かといわれるとちょっと違う。
「何もしていないのになぜ立ち止まっている。通行の邪魔になるだろう」
「朝から元気ですね。尊敬します」
「皮肉を言っている暇があるなら動け」
王子、セドリックは私をジロリと睨む。
「……それとも、その程度のこともできないのか」
(感じ悪っ。)
「申し訳ありません、すぐ移動します」
イルが一歩前に出て私をずるずると引っ張る。
「ああー、イル、そのまま運んでー」
「もう、ディア様が変なところで立ち止まるから、王子に目をつけられたじゃないですか!」
「あの人は私が普通に歩いてても気に食わないから」
「ディア様が普通に歩いてることなんてあります? 大体やる気なさそうに歩いてるか、急に立ち止まるかじゃないですか」
「貴方はどっちの味方なの」
「ディア様ですけど、王子の気持ちもわかる、ということですっ!」
そう言いながら、イルは私を教室に放り込む。
「……はあ、だる」
「ちゃんと授業受けるんですよ!」
廊下に消えていくその声を、聞き流す。
(……受けるわけないじゃん。)
私は、机に突っ伏した。




