着替え自動化魔法
「よし、のってるうちに着替え自動化魔法も作ってしまおう」
「やめてください。普通に着替えないと学園に遅れますよ、ディア様」
イルの小言は聞かなかったことにして、もう一つ床に魔法陣を描く。
「魔法の起点はこのクローゼットにして、着る服はこの紋様で指定して、風魔法で持ってくる、と……」
イルが私の書いている魔法陣を覗き込む。
「よくそんな細かい魔法作れますね。……面倒くさがりなのに」
「面倒だからやってんの」
「普通に着替えた方が絶対速そうですけど」
「あのね」
私は手を止めて、イルの方を見た。
「今の魔法使いたち、どんだけ勿体無いことしてるかわかってる?
既存の大雑把な攻撃魔法ばっかでさ、やれ魔法使い同士の戦闘やら、やれ魔獣狩りやら戦ってばかりで。
もっと生活に役立つ魔法作りなよ。戦うために生きてるわけじゃないでしょ」
「普通の魔法使いは新しい魔法なんてそんな簡単に作れませんからね。……どうしてその才能をもっと別のところに活かせないのか」
やれやれ、と言うようにイルは首を振る。
「……本気出せば、もっとまともな魔法も作れるでしょうに」
だめだ、こいつとは分かり合えない。
イルを無視して魔法陣を描き上げる。
「よしっ!」
魔力を流すと、魔法陣が淡く光った。
クローゼットがバァン!と開き、中から制服のブレザーが飛び出てくる。
同時に私のパジャマも勝手に脱げていく。
「ここまでは上々!」
「ちょっとは恥じらいを持ってください!」
イルは慌てて顔を背ける。
私は気にせず両腕を上げた。そのまま上の服を迎え入れる。
次はスカートだ!
「……ん?」
「なんで下履いてないんですか!」
ちらりとこちらを見たイルが叫ぶ。
「全身指定にしてなかった」
魔法陣に書き足す。
対象者の全身、っと。
「二度目のしょうじきぃ〜」
魔法陣に手を置いてもう一度起動する。
「あれ?おかしいな、来ないんだけど」
「ちょ、ちょっと!止めてください!」
「え、なんでそっち?」
イルの方をみると、脱げていくシャツとズボンを必死に押さえている。
さらにその上から、私の制服のスカートがチャックを開けて迫っている。
「そっか、部屋に二人いるから、対象者がどっちかわかんなくなっちゃったのか」
「いいからはやく止めて!」
すでに自分の服の上から私のスカートを履かされているイルが、叫ぶ。
「もうちょっと高速で着替えれる方がいいかな」
魔法陣に高速化を描き足す。
瞬く間に私が着ているブレザーが脱げて、イルの方に飛んで行った。
そのままイルの肩に着地する。
「おお!できた!」
「できてないですから!」
しかし、すぐにイルにまとわりついていた制服が脱げてクローゼットに戻り、今度はドレスがイルの上に覆い被さる。
「わぷっ!」
またすぐにドレスがクローゼットに戻っていき、今度は外套が飛んでくる。
「すごいすごい!速い!」
「喜んでる場合じゃなくて!」
しばらくイルの早着替えをながめる。
「待って、酔ってきた」
「だあー!もう!!」
イルが足に魔力を溜め、ダンッ!と音を立てて、魔法陣を踏み消した。
沈黙が落ちる。
「……」
「……」
「服くらい、自分で着てください」
「やだ」
……次は全自動の髪セット魔法だな。




