カーテン自動化魔法
朝だ。
ぴっちりと閉じているカーテンの向こう。窓から、鳥の鳴き声や早起きの人間の様々な生活音が聞こえてくる。
私は、布団の中で顔をしかめた。
起きたくない。
目は覚めている。けれど、起きてからの準備が果てしなく面倒で、億劫なのだ。
布団の中でもぞもぞと動く。
たぶん、そろそろあいつがくる。
毎朝、「カーテンくらい開けてくださいよ」って容赦なくカーテンを開けて朝日を叩き込んでくるあいつ。
「……開けるの、めんど」
自分につぶやく。
——なら、勝手に開いたらいいのでは?
天から、ひらめきが降りてきた。
(これで、一生カーテン開けなくて済むじゃん)
ワクワクしながら床に降りる。
布団を引きずったまま。
真っ暗な部屋の中、指先に魔力を灯す。
床に、円を描き、魔法を組み込んでいく。
「光を感じたら、勝手に開くようにするか……光を取り込む紋様をいれて、と」
ぶつぶつ言いながら、線を足す。
「カーテンを開けるのは、風魔法でいいかな……」
ガチャ。
「……何やってるんですか、ディア様」
ノックもなしに、扉が開いた。
あいつだ。私の従者——兄のところからつけられた監視役、イルネーゼ。
私は顔も上げずに言う。
「見てわかんない? 革命」
「真っ暗ですが」
「だからだよ。カーテン開けたくないの」
「なにがだからですか。開けてください」
「やだ」
私は魔法陣を描き終えて、ようやく従者——イルの方を見た。
「……できた」
魔法陣に魔力を流す。
その瞬間、魔法陣が光った。
カーテンが——
ガシャン!!
勢いよく左右に弾け飛んだ。
朝日が容赦なく差し込む。
「まぶしっ!!」
「普通に開けた方が早いのでは?」
「うるさい、今のはちょっと開ける力が強すぎただけ」
そう言いながら、私は魔法陣を調整する。
「調整すれば何もしなくても毎朝ちゃんとカーテンが勝手に開いてくれるから」
調整を終えて、私は確かめるように頷いた。
「これでよし」
カーテンが、すうっと静かに開く。
「……完璧」
イルが少しだけ感心したように目を丸くした。
「こんなことに才能を使う人、ディア様くらいですよ」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
「褒めてないですけどね」
一言多いんだよな。イル。
「……次は、服も勝手に着替えられないかな」
「いや、服くらい自分で着替えましょうよ」
私はイルの言葉なんて聞こえなかったことにした。




