↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亡国の姫は生活魔法で快適に暮らしたい  作者: 甘くないオクラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/21

一儲け?

「ん〜っ!」


 私はお茶会の場所から少し離れたところで伸びをした。

 開放感も相まって、空気が美味い。


 お茶会は、イライザは扇子の奥から睨んでくるし、セシルは意味がわからなさすぎて怖いし、抜け出せて本当によかった。


 たとえ制服が汚れようとも。自由でのびのびできる方が大事だ。

 

 (でも、グランヴィルって名前聞いたことある気がするんだよな〜。)


 セシル・グランヴィル。

 シルヴェリア国の元貴族だったのかな?


 (うーむ。いたっけ?そんな名前で、黒髪の貴族。)


 どう頑張っても思い出せない。


「あの……」


 私がもの思いに耽っていると横から声をかけられた。


「ん? ……何ですか?」


「申し遅れました。わたし、モニカ・マーシェントと申します」


 栗色の髪の少女がぺこりと頭を下げる。


「そういえば言ってませんでしたね。クラウディア・シルヴェリアです」


「存じ上げております」


 モニカは間髪入れず答える。


「え?」


「学園で知らない人はいないと思いますよ」


 ……複雑な気分だ。


「わたし、商家の娘で、貴族ではありませんので、敬語は必要ありませんよ」


「そう? じゃあ、私にも敬語はなくていいよ」


「いえいえ、そういう訳にはいきませんので」


 モニカはぶんぶんと首を振る。

 

 (本当になくていいんだけど。)


「さっきは話し合わせてくれてありがとうね」


「いえ。私も、あそこは窮屈でしたので、こうして出れて、ほっとしました」


 そう言いながら、モニカは扉を見て立ち止まった。


「あ、ここですね、医務室」


 そういえば、ここに向かっていたんだった。

 モニカが医務室の扉をノックする。

 

「……校医の先生、いないんでしょうか」


 中から返事が返ってこない。

 

「かもね。開けてみよ」


 私は扉を開けて、中を覗いた。


「誰もいないね」


 そう言いながら私は中に入る。


「そうですね。……先生がいらっしゃらないと替えの制服の場所もわからないですし、困りましたね」


 モニカが眉を寄せてうーん、と唸った。

 

 巻き込まれただけなのに、真面目に悩んでくれている。いい子だな。


「貸してもらえなくても大丈夫だよ」


「え?」


 そう言って私は制服の上着を脱ぐ。


「ちょっ?!クラウディア様?!何してるんですか!」


 下も脱ぐと思ったのか、モニカは慌てふためき、医務室の鍵を内から閉めた。


「男子生徒が入ってくるかもしれないんですよ! なんで急に脱ぐんですか!」


「最近、開発したの。洗濯魔法」


「へ?」


 あの実験の後、さらに魔法陣を改良した。もうタライすら必要ない。


 魔法陣を描けば、汚れた服をその場で洗えるはずだ。


「洗濯魔法って、なんですか?」

 

 モニカはこてん、と首を傾げて言う。


「まあ見てて」


 私はその場に魔法陣を手早く描いた。

 制服を置くと、魔法陣が淡く光る。


 次の瞬間。


 魔法陣から水が溢れ、制服が水に包まれる。


「……っ!」


 モニカが、小さく息を呑んだ。

 

 水は、流れていかずに、つるんと丸く、楕円体のような形でその場でとどまっている。


 すぐに、水の中で制服がぐるぐると回り出した。


「……不思議。水の中に、泡がたくさん」


「これは石鹸の泡だね」


 モニカの呟きに私は答える。


 しばらく見ていると、次第に水が魔法陣に引き始める。


「お、成功成功」


 水が完全に魔法陣に吸い込まれると、今度は魔法陣から熱風が出てくる。風で制服が浮かび上がった。


 空中で制服が舞い踊る様は、奇妙で少し面白い。


 やがて、それも終わり、制服が下に落ちて、魔法陣の光が消える。


 私は制服を拾い上げ、汚れの痕を確認した。


「うん、汚れ取れてるね」


「……」


 モニカは光の消えた魔法陣を凝視したまま、しばらく黙っていた。

 私は制服を羽織る。


「……クラウディア様」


「ん?」


「これ、一回いくらですか?」


「え? タダだけど」


 お金なんて使ってないけど。


 モニカは目を見開き、ダンッと音を立てて踏み込み、距離をつめてくる。


 (ちかっ!)


 私は思わずのけぞった。


「魔石代は?」


「? ……魔石使ってないよ。見てたでしょ」


「本当に使ってないんですか?こんなに魔力が必要そうな魔法で?」


「うん。攻撃魔法より効率いいから魔力量は少なくて済むよ」


「人件費は?」


「人件費?」


 一体何の話だ。


 モニカの視線が、魔法陣と私の制服を行き来する。


「洗う時間は数分。水も不要。魔石も不要……」


「え?」


「しかも強力な汚れが落ちる」


 モニカはぶつぶつと呟きながら指を折る。


「……」


「……」


 俯いてしばらく黙り込んだかと思うと、モニカは顔を勢いよく上げた。


「クラウディア様!」


「な、何?」


 モニカが私の両手をガシッとつかむ。


「これ、一儲けできますよッ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。