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君のタイプは分かったぞ

「はぁ……」


私はナカ×ナカのフルーツキャンディーを舐めながら、ベンチに座って溜め息を吐く。


「お疲れ様です、スイさん。これ、お茶です」


ベイルくんがやってきて、紙コップを渡してくれた。


「ありがとう……」


「元気ないですね、検査は終わったのに……」


「何か疲れちゃって」


「でも、注射痛くなかったでしょ? ニアは注射の腕も天才的って評判なんですよ」


「うん、痛くなかったよ。痛くなかったけど、凄く疲れた……」


ぐったりする私に、ベイルくんはかける言葉が見つからなかったらしく、ただ苦笑いを浮かべて視線を逸らした。が、その先に何かを見つけたらしく、明るい表情に。


「スイさん、あれを見てください!」


「えー、なにー?」


ベイルくんが指をさす方向を見上げてみると……。


「な、なにあれ!!」


いま、私たちはめちゃくちゃ広い体育館のような場所にいたのだが、まさか天井にあんなものがぶら下がっているなんて、気付かなかった!!


しかも、あれって……。


「僕たちが公開除去で斬った呪木ですよ」


「えええ?? あれがこんなところに??」


そう、天井に巨大な呪木が空中に横たわっていたのだ。 たぶん、横にされた状態で、天井からつるされているみたいだけど。


「久しぶりに王都に出た呪木です。なぜ、王都に出たのか。どうやって、民に気付かれず大きくなったのか。たくさんの謎に包まれた呪木なので、ニアが中心になって研究しているんですよ」


「ほえぇぇぇ」


「つまり、スイさんは歴史的な呪木を除去した、歴史的な大聖女ってことです!」


「え、私が!?」


笑顔で頷くベイルくん。

そっか、そうだったのか。


私って私が思ってたより、凄いことしていた……のかな?


「さっき除去した呪木を運んできたのも、ニアの調査に役に立ってほしかったからなんです。ニアなら、きっと何かを見つけてくれるはずですから」


ほうほう。

ベイルくんとニアちゃん、私が思っている以上に仲良しなんだね。


リリアちゃんは知っているのかな、そのこと。


「そういえば、さっき約束がどうとかって言ってたけど、あれは何だったの?」


「昔、僕とニアは約束したんです。僕がたくさんの呪木を獲ってくるから、ニアはそれを研究して、謎を解明する。そして、いつか二人でこの世界から霧を根絶させようって……そういう約束だったんです! でも、僕がぜんぜんドラクラになれなくて……だから、スイさんのおかげです」


「ふふんっ、そうだろうそうだろう」


いやいや、こちらこそなんだけどね。


「じゃあ、二人は昔から友達だったの?」


「はい。まだドラクラになれるって信じてた頃から、呪木について知りたくて、よく研究所に訪れていたんです。最初、ニアも人見知りなので、上手く話せなかったのですが、僕がしつこく質問を続けて、少しずつ仲良くなれました」


なるほどねぇ。

もしかしたら、ニアちゃんにとっては初めて仲良くなれた男の子がベイルくんで、年頃になってから少しずつ意識するようになった、って感じかもね。


「ニアは本当に凄いんですよ。僕が持っている呪木に関する知識は、ほとんどニアから教わったものですから。スイさんに資格の勉強を教え上げられたのも、ニアのおかげなんです!」


うーーーん??


気のせいかもしれないけど、ベイルくんが他人について、こんなに嬉しそうに話しているの、珍しいような。


……も、もしかして。


「ねぇ、ベイルくんって、年上の女が好きだったりするでしょ?」


「えっ!? な、な、なんで……!?」


お、動揺してるぞーーー!!

素直で可愛いんだから!!


「やっぱりねぇ。なーんか、ニアちゃんのこと話しているときは、目がキラキラしていると思ったよ。向こうも満更でもないみたいだし? 歳はいくつ離れているの? 二歳か三歳かな? 二人とも賢いし、お似合いかもね。このこのー!」


ベイルくんのほっぺたを指先でツンツンすると、彼の頬はみるみるうちに赤くなっていく。


照れてる照れてるー!


「ちっ、違いますよ! ぼ、僕はス――」


「分かってる分かってる! お姉さん、無理に聞こうとしないから! ええ、皆には黙っててあげます」


「だ、だから、そうじゃなくて……!!」


ベイルくんはそんなに恥ずかしいのか、立ち上がると、バタバタと地団太を踏み始める。


「はいはい。でも、いいのかな? リリアちゃんにバレたら、大変なんじゃない?? あの子、私にまで嫉妬しちゃうようなタイプだよ? 怒られたりしないの?」


ベイルくんは不満げな表情で、何か言いたそうに口をもごもごさせるが、諦めたのか溜め息を吐き、私の隣に座った。


「僕とリリアは、周りが言っているだけで、ただの幼馴染ですよ」


あらあら。そう思っているのはベイルくんだけなのになぁ。


「それに、リリアはフレイルがあれだけ相性抜群で仲も良いのに、無理に僕と結婚させる必要はないと思います。色々と家の問題はあるでしょうけど、そういうのは本人同士が決めるものではないでしょうか」


本気で不満そうなベイルくんだけど、私は思わず吹き出してしまった。


「いやー、ベイルくんは、まだまだ女心が分からないみたいだね。あ、でもニアちゃんに呪木をプレゼントするのは正解だと思うよ。これからも続けるようにね。私も協力するからさ」


私はベイルくんの肩をバシバシと叩いたが、彼は不満顔のまま、ぼそぼそと呟くのだった。


「スイさんだって、男心を分かってないじゃないですか……」


年上(・・)に対して失礼なやつだな、君は!

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