どーんっと構えてりゃ良いのよ
再びニアちゃんの研究室に戻る。
「あ、ベイル様。お待たせしました」
「ううん。大丈夫だよ」
ニアちゃんと会話するベイルくんを見ていると、ついニヤニヤしてしまう。が、ベイルくんに気付かれて、睨まれてしまった。
「それで、何か分かった?」
「スイさんの検査結果は、ただただ健康だということが分かっただけです。後は血液検査の結果ですが、これに関しては数日かかってしまうので」
「そっかー。何か分かると良いけど」
「ただ、ベイル様が持ってきた呪木に関しては、改めて分かったことがあります!」
ニアちゃんは成果をベイルくんに伝えたくて仕方がないようだ。
「何が分かったの?」
「とても重要なことです。たぶん、国家レベルの問題になるかと」
真剣なニアちゃんの顔に、ベイルくんも固唾を飲む。
「ここ最近、王都で出た呪木に含まれている成分をずっと調べていたのですが、他の地域で出る呪木には見られない何かが入っていることが分かりました」
「何かって……?」
ニアちゃんは首を横に振る。
「それをこれから調べることになりますが……推測でよければお話しします」
ベイルくんは頷く。
「恐らく、特別な養分だと思います。王都西部黒霧発生事件のとき発生した、例の呪木は特にその成分が多く検出されました。さらに、この養分と思われるものは呪木の中で生成されるのではなく、外部から注入された形跡が見られています」
「が、外部から??」
「誰かが呪木の種を持ち込み、土に埋めた後、養分を注入しているのだと考えられます。その成分は王都の土に含まれていないものですから。どこかから入手したのか、どのように生成したのか、まったく分かりませんが……」
「だとしたら……都内に呪木は誰かが故意に植えた、ってこと?」
「同時にテロリストたちの襲撃があったことを加味すると、最悪なケースではありますが、自然とその結論に至るのでは、と」
えーっと……つまり、呪木が都内に出るようになった原因はテロリストの仕業ってことかな。しかも、呪木を急成長させる手段があるから、自由に黒霧を発生させられる、
ってことだよね??
霧に乗じてテロを起こせば、大混乱だよ。実際、この前がそんな状況だったわけだし!!
「信じられない」
ベイルくんの顔は少し青ざめているようだった。
「そんな技術をテロリストが持っているなんて。本当に霧を自由に発生させられるなら、いつか王都西部黒霧発生事件のときより、恐ろしいことが起こるかもしれない」
ニアちゃんが暗い表情で頷く。
「父上や将軍に報告は行っているの?」
「いえ、ついさっき立てた仮説ですので……」
「そっか……。気が重いね」
「はい……」
何だか暗い雰囲気になっちゃった。
って言うかこの二人、子どもなのに悪い方に考え過ぎじゃない??
「大丈夫、何も問題ないよ!」
私が突然口を開いたせいか、二人は驚きながらこっちを見た。
「確かにテロリストは黒霧を使って悪さするかもしれないよ? だけどさ、こっちにはベイルくんと私がいるじゃない!」
ここまで言っても、二人は理解できないのか、目がまん丸状態だ。
「ニアちゃん、ベイルくんが変身した姿、見たことある?」
「あ、ありませんけど……」
「もうめちゃくちゃ強いんだよ。本当に無敵の王子様! その上、大聖女である私が付いているんだから、無敵に無敵を足すようなもの! どんなにテロリストが呪木を植えても、片っ端から引っこ抜いてやるんだから!」
意味もなく天に向かって拳を突き上げる私。これ以上、言うことはなかったので、研究室の中は静まり返ってしまったが……ベイルくんが笑い出し、ニアちゃんに向かって言うのだった。
「ほら、スイさんって凄いでしょ。本当にこういう人なんだよ」
ベイルくんはおかしくてたまらない、って感じだけど、ニアちゃんは違った。その表情は不安に溢れ、心配そうにベイルくんの横顔を見つめている。
「ベイル様……」
その呟きは、ベイルくんには聞こえなかったみたいだけど、ちょっと寂し気だった。
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