表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
68/239

聖女の血は毒なのか

霧が迫る夜空の下、私とフレイルくんは将軍の屋敷からやや離れた場所に立っていた。ベイルくんをはじめ、将軍やサムライたち、フレイルくんの部下の騎士たちは、邪魔にならないように、と少し離れた場所でこちらを見ている。


「ごめん、スイさん……」


フレイルくんは脱力したように地べたに座り込むと、項垂れてしまった。


「……なんで、あんなウソをついたの?」


フレイルくんのウソは、王都の人々と大地を危険に危険に晒すことになる。王子であるフレイルくんにとって、それは許しがたい行為だったはずなのに……。


「俺は、あいつの想いを守りたかったんだ」


「……」


私は黙った。

だって、そんな言葉だけでは、納得できなかったから。


フレイルくんは私の気持ちを察したのか、ウソの意味をさらに語った。


「ずっと、兄さんのことを好きなリリアを見てきたんだ、俺は。あいつは本当に、兄さんのためにずっと頑張ってきた。頑張った分、何回も泣いて、何回も立ち上がって、また頑張った。あれだけ全力で、諦めずに頑張れるやつを、あいつの他に俺は知らない。そんなやつの想いが報われないなんて……」


フレイルくんは拳を握りしめ、道路にそれを叩き付ける。


「許せないんだ! だから、俺が守る。あいつの想いを守るためなら、俺は……」


泣いている、のかな。

子どものくせに、女のために自己犠牲かよ。


フレイルくんは笑い出す。

小さく乾いた笑いだが、それは自嘲に満ち満ちていた。


「スイさんに軽蔑されても、構わないよ」


フレイルくんは手の甲で目元を拭うと、ふらりと立ち上がった。


「別に、軽蔑なんてしてないよ」


私は溜め息交じりに言う。


「ただ、フレイルくんって馬鹿なんだな、って思っただけ」


「馬鹿……?」


面を食らったのか、フレイルくんは目を丸くして私を見る。


「そうだよ。君は馬鹿だ。だってさ――」


私はフレイルくんを睨みつけた。


「そんなの、君の想いはどうするんだよ」


私たちは、さらに霧に近付く。これ以上は、聖女かドラクラではければ進めないだろう。


「フレイルくん、私も謝ることがあるんだ」


「なに?」


「私の血は、普通のドラクラとは同調できないんだ」


「……どういうこと?」


「私自身も分からない。けど、私と同調できたのは、ベイルくんただ一人だけ。他の人は、誰一人例外なく、私の血を飲むと体の異常に苦しんで、何日も寝込んでしまう。たぶん、君もそうなるよ」


フレイルくんは何を思ったのだろうか。薄く笑みを浮かべたように見えた。


「兄さんは特別ってこと?」


「特別なのか、ただのポンコツなのか……私たちにも分からないけどね」


「……大丈夫だよ、スイさん」


フレイルくんは、自信があるのか、真っ直ぐと霧を睨みつけた。


「俺は今まで兄さんができたことを、できなかったことはない。負けたのは、テストの点と方向感覚くらいだ」


「その自信が、君を守ってくれるといいけど……」


私は将軍に渡された儀式用の短剣を抜く。


「それじゃあ、やろう。絶対に無理しないでね」


「大丈夫。絶対に俺が……王都を守る」


本当はリリアちゃんを守りたいだけなんだろ。分かっているよ、フレイルくん。って、私もいつまでもネガティブ思考でいられない。


ベイルくんとフレイルくんは兄弟だ。

きっと、フレイルくんも私と同調できる。


そう信じるしかない!


私は短剣で指先を傷つける。


「天にまします我らが星の巫女よ。今こそ我が血に貴方の祝福を。そして、彼に魔を払う力を与えたまえ!」


そして、滴る血をフレイルくんの口元に。やや躊躇いを見せながら、フレイルくんが私の指先を口に含み、血を吸った。ゴクリッ、と彼が血を飲み込む。


「うっ……!!」


フレイルくんが口を抑えた。

やっぱり、ダメだったんだ!


「ぐっ……」


フレイルくんが前かがみになり、そのままうずくまると思われたが…… 。


「……き、きた!」


「ほ、本当??」


フレイルくんの筋肉が少しだけ膨れ上がった。ベイルくんみたいに、大人になることはなかったけど、身体能力が上がっていると見て間違いないみたい。


「行こう、スイさん……。霧の中へ!」


フレイルくんは腰に下げた長剣を引き抜くと、確かな足取りで霧の方へ進んで行く。


……あれ?

本当に大丈夫なのかな?


私は驚きながら、振り返る。

離れた場所で、こちらの様子を窺っているサムライたちの中、ベイルくんも私たちを見守っていた。


どうしよう、ベイルくん。

私、君以外のドラクラと同調できちゃったみたいだけど……。

「面白かった!」「続きが気になる、読みたい!」と思ったら

下にある☆☆☆☆☆から、作品の応援お願いいたします。


「ブックマーク」「いいね」のボタンを押していただけることも嬉しいです。よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] ええ! まさか成功するとは。 意外な展開でした。 ……本当に大丈夫なのかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ