第一話 血を継承した者たち
腹が減ると、すぐ側に腹を満たすものがあった。
温かい大きな身体から流れる白い汁。
押せば途切れず、飲めば腹の中が静かになる。
その身体は動かないとき、壁のようだった。
近くには、同じ匂いの小さな塊がいくつもいた。
高く割れる音を出し、押し合い、鳴き合い、白い汁へ群がる。
うるさい。だが同じ匂いがした。
匂いには違いがあった。
近いもの。
遠いもの。
弱いもの。
強いもの。
白い汁は、待てばまた満ちた。
争わずとも腹は満たされた。
身体がそれを覚えていった。
この穴の中には、温かい大きな身体と、同じ匂いの小さな塊たちがいた。
それが当たり前だった。
眠れば重なり、起きれば散る。
押し合い、鳴き合い、白い汁へ集まる。
あるとき、ひとつが静かだった。
鳴かない。
押してこない。
白い汁の近くへも来ない。
近づく。
同じはずの中に、知らない冷たさが混じっていた。
鼻先で押す。
転がるだけだった。
もう一度押す。
返してこない。
温かい大きな身体が近づき、その塊を口で持ち上げた。
いつもより乱暴だった。
穴の外へ消えた。
戻らなかった。
腹は満ちた。
だが何か足りなかった。
眠るとき、ぶつかってくる重さが減った。
耳元で割れる音も減った。
暗さが広くなった。
その後、もうひとつ消えた。
今度は先に匂いで分かった。
弱く、薄く、遠くなる匂い。
身体は覚えた。
近くにあるものでも、なくなる。
満ちている場所にも、空くところができる。
血を繋ぐものは強き者だけ。




