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寝床!?

 それから、カミラはウルとの生活の上での注意事項をアルヴェールと使用人たちに一通り説明し、

持ってきたスーツーケースの中身も説明をしてからアルヴェールに渡して笑顔で帰って行った。



「アルヴェール様、改めまして、これからよろしくお願いいたします。」

ウルはカミラを玄関まで見送った後に隣に立っていたアルヴェールに改めてお願いをした。


あぁ。と短い返事を返してくれたが、

すでに振り返りリビングの方へ向いはじめていたアルヴェールの表情はわからない。




やっぱり、面倒だよね…




それにしても、この家大きすぎない?

しかも使用人がいるって、カミラ様の家にも使用人がいたし、アルヴェール様とカミラ様はいったい何者なの??

でも、ヴァレリー家は有名な起業家の一族なのだから使用人がいても不思議ではないか…

それにしても大きい家だ。



ひとまずウルは、リビングにてくてくと4つの足で向かいアルヴェールを探すが、

ウルからの視線の低さではその姿が見えない。

自室にでも行ってしまったのかなと思っていると、

ソファーの背上から顔を出したアルヴェールがマルセイユを呼ぶ。

一言二言話して、すぐにマルセイユはキッチンの方へ行ってしまった。

その隙に、アルヴェールはウルを呼んだ。


呼ばれたのでソファーの座面に乗り、上半身を起こした、いわゆるおすわりの姿勢でアルヴェールに向き合う。


アルヴェールはソファーのクッションを頭に預け、寝転ぶような態勢だった。

それすら、素晴らしい絵画になりうるな。とウルは少しドキっとしてしまう。


「アルヴェール様、なんでしょうか?」

呼ばれたので、ウルは質問をした。


「君も移動やら説明やらで疲れただろ。ゆっくり休め。」

アルヴェールは寝転がった姿勢のまま、本を片手にウルにそう告げる。


その時、キッチンからマルセイユが戻ってきて、

水を入れたロックグラスをテーブルに置いてくれた。


「ウルミラージェ様も喉が渇いたでしょう。お出しするのが遅くなり、申し訳ございませんでした。」

マルセイユは丁寧にテーブルにグラスを置くと、

また元の位置に下がっていった。


「あっありがとうございます!あっあと、ウルで大丈夫です。」

マルセイユはニコリと笑みを返してくれた。

ウルは説明も長くかかったこともあり、すごく喉が渇いていたので、早速ソファーの座面から一度床に降り、少し勢いをつけてグラスが置かれているローテブルーに飛び乗った。


ちろちろとグラスに入っている水を上手に舌を動かして飲んでいく。


ウルは視線を感じて、感じた方向を見るとアルヴェールがこちらをまじまじと見ていた。


「ゴクッ。えっ…と、何か?」


「…… いや、なんでもない。」


なんだか、飲みにくくなってしまったので、ウルは気になっていた質問を投げかける。


「あのっそういえば、私が寝る部屋はどちらになるのでしょうか?」


「………」


アルヴェールは本を読んでいる姿勢を崩さず、黙ったままだ。

聞こえなかった…訳ではないよね…


読んでいた本をローテーブルに置いて、体を起こし座り直したアルヴェールは


「そういえば、そうだな。姉さんのところではどこで寝ていたんだ?」


「カミラ様の家では、客室用の部屋がありましたので、そこを使わせていだきました。」


言い終えて、アルヴェールが眉間に中心に寄せた。何かを考えているのか?

しばらくして


「今、うちで余ってる客室がないんだ。しばらくは俺と同じ部屋でいいか?」


「え…っと?」


「流石に革のソファーで寝かせられないし、猫とはいえきちんとしたベッドが適切だろ」


まあ、猫だし?襲われることはないけどー…

同じベッドは流石に…アルヴェール様は私の上司になる訳だし、でも猫の姿だから私のことを部下とは思ってなさそうだし、でも私にとっては上司だし、でもアルヴェール様は私のこと猫扱いだし、確かに猫なんだけどーどうしよう…

って、そうじゃない!きちんと断らなければ!


「わ、わたし、全然ソファで大丈夫です!」

慌ててウルはアルヴェールの提案を拒否するが、


「リビングは使用人が朝早くから働くし、夜も遅い。それに掃除の邪魔になるから、俺の部屋が適切だ。」


「でも、猫と言えど私は部下にあたりますし、流石にアルヴェール様に対して失礼極まりないです!」


このままだと、なんだか丸め込まれそうな気がするっ!絶対に阻止しなければ!こんなに綺麗な顔面と一緒に寝るとか、猫の姿と言えど赤面してしまいそうだ。


「本当に余っている部屋がないんだ。後日、俺の部屋に君用のベッドを用意するから、ひとまず今日は俺のベッドで寝てくれ。一緒に寝るのが嫌なら、俺がソファで寝るから」


「そっそんなこと、させられませんっ!」


「……」

だったら、どうするのか?とでも言いいだけな目で顔を寄せてきた。


ウルは頭をフル回転させるが、打開策が思いつくこともできない。なにせアルヴェール様の顔が近い!

こんなに間近で見られては、考えたくても思考が働かない。


もう、白旗をあげるしか…


「わ、わかりました…アルヴェール様の提案を受け入れ…ます。」


アルヴェールが、それがいい。と短く呟いた後、少し笑った気がした。


ウルは目を見開く。


すぐにアルヴェールが元の座り方に戻ったあと、

「それと、家ではアルと呼んでくれ。俺の名前は長いだろ。」


呼んでくれ。と言うことは命令なのか?


ウルが真顔のまま考えていると、

またアルヴェールが顔を寄せようとしてきたので慌てて、承知しました!と返事をした。


この人、無言の圧力が強すぎるっ

ウルは、テーブルに置かれていたロックグラスの水を再び飲みながら、赤くなっているであろう顔を見られないよう誤魔化した。

(猫なので赤くはならないが…)


それからはカミラが置いて行った、大きなスーツケースをアルヴェール様が開けてくれて、

中に入っていた猫用の服などを衣装部屋に持って行ってくれたり、


各部屋の説明をしてくれたり、食事の塩分や糖分の加減などを使用人と打ち合わせたりした。


猫になって寮に戻ったの時にキャットフードは当初試したが、脳は人間のままなので、美味しく感じることができなくて、食事を薄味で作ってもらったのが、きっかけだ。


ちなみにお風呂は毎日、女性の使用人のショウカさんが入れてくれることになった。

至れり尽くせりで、なんだか申し訳ない…




その日の夜は、アルヴェール様と一緒に食事をして、ショウカさんにお風呂と歯磨きなどを一通りしてもらい、アルヴェール様のベッドへと向かった。

部屋に入るためのドアは猫1匹分の隙間を開けといてくれている。

ちなみにトイレのドアも。


さすがに猫砂トイレでは周りに丸見えで、猫と言えど用をたしにくいので、人間用のトイレで済ます。流す時はジャンプしてボタンを押せば簡単に流れる。




寝室に入ったものの、家の主人より先にベッドに入るのは申し訳ないないので、アルヴェールが来るまで寝室のソファに座って待つことにした。


しばらくして、アルヴェールが寝室へ入ってきて

ウルの横に座る。


「うちの指揮官の決定通知が先ほど本部から届いた。あさって一度本部でうちの部隊員と顔合わせの後、ラリマーレへ移動だ。」


「承知しました。私ラリマーレ市へは初めて行きます。よろしくお願いいたします。」

さあ、第七部隊でお仕事だ!

今はやれることをやるしかない。ウルは気持ちを新たに新天地での任務に気合を入れて、眠りにつく。


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