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猫のウルです。

「約3ヶ月前、ツァボラ魔跡をとある組織が狙っているとの情報が入ったことで、

周辺調査をすることになったのですが、

その任務中、私は他の隊員とアウレウスで、

カミラ様と他3名はソテルウスに乗って見回りをしておりました。


ツァボラ魔跡は市の中心部から離れているのもあり、第6部隊の精鋭人のみでの見回りとなりました。

ソテルウス4機とアウレウスで固まって、市の基地から魔跡へと移動中だったのですが、

市街地からだいぶ離れて、山間部の麓付近まで行き、魔跡までもう少しというところで、雪がちらつき始めたので、休憩をすることになったのですが…それで…」


ツァボラは他の魔跡と違って魔跡周りが緑豊かになるため、魔跡の周りはほぼジャングルだ。

少し離れた場所では恩恵が弱まり、穀物や野菜などが育てられる環境になるため、他の地域と違って魔跡付近に街はない珍しい地域だ。



猫のウルはなんだか話しづらそうというような表情で一度首を下げ、その後ゆっくりと顔をあげて話し続けた。


「そろそろ、休憩も終わらせようとなり、私だけ先に車に戻ったのですが、その直後、運転席で休憩をとっていたバクラ隊員が急に車を走らせて…」



「私たちも何が起きたか瞬時にはわからなかったんだけど、すぐにウルちゃんが連れ去られたのだと思って追いかけたの。」


カミラ達はバクラが急に車を発車させた後、すぐにウルがいないことに気づいてソテルウス4機で追いかけた。


「車はかなりのスピードでどこかの森の奥へと入りました。かなり荒い運転で30分くらい走ったあと、小さな建物の前で止まりました。

すぐに車の後部にいた私をバクラ隊員が持っていた縄で手首を縛って、小さな建物に連れて行きました。」


そこでアルヴェールには疑問が生まれる。


「ちょっと待て。指揮官とは言えど、君は抵抗しなかったのか?武術など経験がないはずがないだろ?」


MSETの精鋭人は必ず高度な武術や特殊なスキル持ちが前提で選ばれる。

いくら同じ部隊員とは言え、流石に男相手だと勝てないと判断したのか?

でも、抵抗くらいはしてもいいはず。

なぜ彼女は抵抗をしなかったのか?


「私自身武術の心得はあります。それに…魔スキルも持っています…」


魔スキルだと…っ⁈



この世界のわずか4%しか存在しない魔スキル持ち。かくしてアルヴェールも魔スキル持ちだ。

アルヴェールも同じ魔スキル持ちとは数人しか会ったことがないのもあって、驚きを隠せなかった。

しかし、いったんスキルのことは置いておくことにし、


「だったら、尚更なぜ抵抗しなかった?」


「それは…誰がなんの目的で私を連れ去ろうとしているのか調べたくて…」




呆れた…

この猫は自ら、相手の目的を調べようとしたのか。


「それで、小さな建物に連れて行かれ、そこに数人の男たちがいました。そのグループのリーダーにやっと捕まえた。と言われたんです。」


「最初にツァボラ魔跡に不穏な空気があると進言してきたのが、バクラ隊員だったのよ。おそらくバクラ・ドロスはどこかの国と繋がっていて、ウルちゃんのことを密告したのね…これは私の失態だわ」


ウルはすぐにカミラの方に顔を向け、

「それは違います!決してカミラ様の責任ではありません!」

と必死に反抗する。


「ウルちゃんはそう言ってくれるけど、それでも責任が0ではないわ。本当にごめんなさい。」


カミラ様の気持ちもわからなくもない。

でも、やっぱりカミラ様の責任だとはウルは思わない。

ウルは涙ぐみながら、首を左右に振り、否定の意を無言で訴えた。

でも、すぐに顔を前に向き直し話を続け始める。


「リーダーの男はゴトーと呼ばれていました。

あまり、この国では聞かない名前と服装からして、国内の組織ではなく、海外の組織だと思ます…

海外の組織を装っているという感じでもなかったです。

建物に入ってすぐに地下へ続く階段を降りるよう、縄を引っ張られたんです…

そこで抵抗しないのも変だと勘繰られるかと思って、

抵抗しているふりをして、何発か殴られました。

勝ち目がないと思って大人しく従うフリをして、

半地下にある部屋に押し込まれました。」


アルヴェールは表情を変えずに話を聞いていた。



「奴らがあと15分ほどで迎えのヘリが到着すると言っていたので、

逃げるには今しかないと思いました。

部屋の中には古びたデスクと椅子がしかなく、半地下だったので、窓も高い位置にあって、

人が通れる大きさがなく、鉄格子もかかっていたので…」


「それで、猫になったってわけか?」

ソファーの肘置きに肘を置き、手の甲で自身の頭を預けながら、真顔でアルヴェールは問うた。


「…はい。後先も考えなしに…猫になってしまいました。」


猫なのに反省の色が伝わる姿だなとアルヴェールは心の中で思った。


すかさずアルヴェールはさっき置いていた疑問を投げかける

「君の魔スキルは猫になれるというスキルなのか?」


「違います。スキルは別です。

猫になったのは、…自分で呪いをかけたからなんです…」


「呪いだと…?呪いというものか存在するというのか?」

アルヴェールの顔がかなり険しくなった。



「正式には、呪いではないのですが、〔古くから伝わる魔スキルの応用〕とでも言いますか、

私の実家は魔スキルの応用研究を唯一行っていた一族でした。

それと、先祖代々魔スキルを持って生まれる家系でもありました。

魔スキル保有者がその力を応用し、別のスキルを使えるようにする研究をしていたんです。

よく覚えていませんが今回使ったスキルは、ある意味【呪い】のスキルとも祖母は言っておりました。」


「待て。そんな研究をしている一族があるなんて、初めて知ったんだが…」


「はい。でも違法ではございません。このことを知りうるのは、代々皇帝となったお方のみです。なので、違法ではないのですが、誰にも知られない研究でもありました。」


アルヴェールも、もちろんカミラも知らないことだった。

カミラは先に事の顛末を知っていたのですでに知っていたが、カミラもまたこのことを聞いた時に驚いたと言う。



「私は研究には関わっておりませんでした。

しかし、実家の書庫には過去に研究した本がたくさんあり、私は小さい頃に人目を盗んでよく、研究記録などを読んでいたんです。

たまたま、捕まった時に、その当時の記憶を思い出して、動物に肉体を変えられる魔スキルを使ってしまったんです…」


アルヴェールは単純疑問を投げかける

「動物になれるスキルなら、なぜ猫なんだ?」



すると、ウルは申し訳なさそうに

「思い出した本の内容には、猫やリスといった小動物が描かれていて、私も小さい頃の記憶だったので、全部は覚えていなくて…

たまたま思い出して発動したスキルが猫に変化するスキルだったんではないかと…」



アルヴェールが核心に迫る。

「全部覚えていない。ということは?」


「はい…解き方がわからないのです…」


なるほど…

一旦納得したアルヴェールだが、新たな疑問が湧いた。


「だったら、実家で本を探せば、解き方がわかるのではないか?」


またまたウルは申し訳なさそうな顔で、

「実は今回、狙われたのは私だけではなく、ルーナス家ごとだったみたいで、実家の家も全て焼かれてしまいまして…

私はすでに両親が他界していて、実家には誰も住んでいなかったんです。でも、実家を守ってくれていた使用人からすぐに連絡が来て家が全焼したことは確認取れています。

それで…唯一肉親の兄が、現在行方知れずで…

兄なら本を電子化している可能性があって、探してはいるのですが未だ行方はわからずで…」


ここまで聞いてアルヴェールは思考を巡らす。

ルーナスの一族が狙われたということは、ルーナス家が行っていた研究を知っているものが狙うはず。

彼女は皇帝しか知り得る情報と言った。そうなると怪しいのは皇帝となるが…

皇帝のみが知りうる情報とはいえ、身近な側近も知っている可能性があるのか。

まぁ皇帝はともかくその辺りの側近の裏切りの方が現実味がありそうだな。


ところで、この猫のウルは俺たちのとこをどこまで知っているのか…?

アルヴェールは目だけ、カミラを見る。

カミラは目で何かを訴えている。

カミラの顔を見る限り、俺たちのことまでは話していないのか。


ん?ちょっと待てよ。


「ひとまず、猫から人間に戻るには、君の兄を見つけ出さないといけないのは分かった。

それなら、それまで姉さんが面倒見てればいいのではないか?」


というか、3ヶ月前の出来事なら、今までは姉さんが面倒見ていたということだろ。

なぜ押し付けようとしてくる。


「あー実は、その後も色々あってね…ウフッ」


【アウレウス】=ウルなど指揮・解析・情報処理部隊が乗る車

【ソテルウス】=戦闘部隊が乗る専用機

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