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マンティアリ帝国

ここはマンティアリ帝国の首都パラバトル。

マンティアリ帝国は広大な土地を有した、先進国の一つだ。


別名、魔跡帝国とも呼ばれている。


マンティアリ帝国がどうしてこんなにも発展しているのかというと、魔跡の力があるからだ。

魔跡は各所に散らばるように存在し、

その恩恵の大きさは大小さまざまだが一ヶ所一ヶ所で違う力を放出してくれている。


例えば、ドュビー市という地域は帝都から西にだいぶ離れているが、約500万人が暮らす都市で、物作りなどが盛んだ。


ドゥビー魔跡はその一帯で暮らす人間には他の街で暮らす人よりも、力が増す恩恵が受けられる。

そのため、力仕事をするには他でもないドゥビーでする方が効率が良い。


なので、力が必要とされる職種の人が移り住んできていたり、その関係企業が多く集まり、本社を構えていたりしている。






魔跡は国内外で14ヶ所発見されており、ここマンティアリ帝国には現在、そのうちの8個の魔跡を保有している。国民はそれぞれの特性に沿って生活の基盤を作って暮らしている。


しかし、それだけ重要な魔跡を幾度となく奪おうとする国内の反帝国組織や、国外からも奪おうとしてくる襲撃などがあるため、


帝国はその襲撃や被害から守るための、〔帝国魔跡特殊部隊=MSET〕を設立した。


そのほか、魔跡の調査や新たな魔跡を探索したりする別チーム〔帝国魔跡調査研究部隊=ARTS〕も存在している。


MSETは現在は約30もの部隊に分かれており、編成は5〜10人の精鋭人とその下に付く20〜30余の隊員で1部隊が成り立っている。








------------------------------


春の陽気も顔を出し始めた日、

今日は朝から快晴で気温も23度ほどとちょうどいい気温だ。



ここはパルバトル市内にある、高層マンション。

ペントハウス内のリビングに置かれているソファーに、

MSET第7部隊隊長のアルヴェール・ヴァレリーは優雅に足を組みながら、本を読んでいた。


アルヴェールは黒髪、端正な顔立ちで街ですれ違う女性は必ず二度見をしてしまうような容姿。

なおかつ高身長。


一枚の絵画の様な姿でソファーの前のローテーブルに置かれた煎れたてのコーヒーを手にとり、口へと運ぶ。


アルヴェールは昨日から休暇中で、自宅でゆっくりと過ごしていた。


すると、来客を知らせるチャイムが鳴った。

使用人の老人男性マルセイユがインターホンを対応すると、すぐさまアルヴェールの元へと寄ってきた。



「アルヴェール様、カミラ様がお越しになっております。」


アルヴェールは眉を少し内側に寄せたが、あくまで表情を変えずに使用人のマルセイユに返答した。


はぁ…


「通して。」


気だるそうに。






姉さんのことだから仕事の話か…それとも、夫婦喧嘩でもして愚痴を言いに来たか…

こちらの都合などお構いなしで勝手に来る。

絶対にいい話ではないのだけはアルヴェールには分かっていた。



しばらくして、今度は玄関用のドアチャイムが鳴った。すぐさま使用人のマルセイユが、玄関の方へと消えていく。


ほんの数十秒後


「やっほ〜我が弟よ!元気〜?」


姉は何やら大きめのバスケットとスーツケースを持って部屋へ上がってきた。




「……」



ドーマンさんと喧嘩でもして家出してきたか?

口には出していないはずなのに、さすが姉弟。


言いたいことが、むしろ頭で言ったことがカミラには分かったらしく


「家出じゃないわよ?夫婦仲はいたって順調よ。

今日は折り入ってお願いがあってきたのよ〜」


カミラはニヤニヤしながら、

スーツケースをソファの脇、バスケットをソファの座面に置き、そのバスケットの横に座った。


アルヴェールは表情には出さないが、オーラであからさまに嫌そうなことは使用人マルセイユには分かった。


マルセイユにカミラの分のコーヒーを淹れてもらってから話が始まった。


「ねえ、3日前にアルくんところの指揮官、移動になったでしょ?新しい指揮官決まる前に移動だけしちゃって大変ね〜。新しい指揮官決まったとか聞いた?」



「いや。異動の件もあって昨日から休暇だ。

まだ決まった話は聞いていないが。」


「ふふーん♪アルくんのところの部隊の指揮官決まったわよ!」


アルはまた眉間を内側へ寄せる。

なぜ、姉さんが知っている?そもそも姉さんの部隊は今もツァボラ地区で任務中ではないのか?



「姉さん今、任務中では?」


「実は、うちの部隊の任務は一旦、第4部と第5部隊、合同であたることになって、うちの6部隊は編成のし直しになっちゃったのよー」

と残念そうにカミラは話す。


編成の見直しではなく、し直し…?


「それで、色々あってアル君のところにいた指揮官のユベール・アンドレ隊員がうちの部隊に来ることになったのよ。」


「そういうことか。姉さんにユベールを奪われたわけだ…。」

アルヴェールが睨みながらカミラを見る。


カミラは慌てて

「違うわよ。別に奪ったわけじゃなくて…うちの部隊に、少し問題が生じてしまって今回パオロ大佐にきちんと相談をしたのよ?」


問題?

アルはまだ険しい顔のままカミラを見ている。


「実は…うちの部隊の指揮官が少し問題で…

今回アルくんの所で指揮官としてお願いしたくて…というか、もう決定しちゃったんだけどっウフッ」

カミラは胸の前で両方の人差し指をツンツンしながら、もじもじとしている。


姉さんの所の指揮官といえば、確か辺境の地から来たという、まだ若手の女性指揮官だった気が…名前は確かウルなんとかルーナスだったか。


会ったことは一度もないが、姉さんがよくウルという指揮官の話を会うたびに俺してきてたなと思い出す。



「なぜ、問題児を俺のところになすりつける形になるんだ。断る。」

静かな口調だか、確実に怖みがある声でアルヴェールはカミラに告げた。



「問題児とかではないわよ?ウルちゃんはとても優秀なのよ!でも!今うちの部隊では働けないというか…」

カミラは必死にアルヴェールに問題児ではないしとても優秀なことを伝えるが、アルヴェールは信じてくれていない。



「ウルちゃんはすごい子なの!アルくんも会えば絶対気にいると思うし… …実は今日…連れてきてて…

ウルちゃん出て来れる?




             ガサガサ…




…この子がウルちゃんよ。」




というと、カミラは自身が座っているソファーの横に置いてあったバスケットの蓋を開けた。


そこからするっと出てきたのは、薄いグレーと水色が混ざった様な毛色の、部隊服を用いたような服を着た猫が出てきた。






そう。猫が出てきたのだ。






「…………」




少しの間なにも言葉を発さなかったアルヴェールは、カミラに揶揄われたのだと思い、何事もなかった様にコーヒーを口に運ぼうとした。




その瞬間、






「お初にお目にかかります。アルヴェール・ヴァレリー様。私、ウルミラージェ・ルーナスと申します。」






ゴンッ!






アルヴェールは飲もうとしていたコーヒーをカップごと落としてしまった。

きれいな白い絨毯が台無しだ。


 


そして、ほんのコンマ後、






ガッシャーン  カッラーン




猫から人の言葉が発せられたため、リビングの端にいたマルセイユと他の使用人も驚きのあまり、持っていたお盆や食器を一斉に落とした。






猫が…  喋った…




「だ、大丈夫ですか?!」

猫が少し慌て気味にワナワナしている。


すぐさま皆、我にかえり落としたものを各々拾い始め、

マルセイユはアルヴェールが落としたカップの片付けをし始めた。


その間もアルヴェールはこちらを見続けたまま動かない。

鳩が豆鉄砲を喰らったかのような顔だか、整いすぎている端正な顔が優って、

ウルは少しドキッとしてしまいそうになる。




あまりにも見つめられすぎて困っていると、すかさずカミラが

「アルくん見過ぎよ。信じられない気持ちもわかるけど、そろそろ正気に戻ってあげて〜」


はっとして、アルヴェールは正気に戻ったが、またウルの方をマジマジ見つめる。


猫の人形に音声マイクでも付けているだけとか、そういったおもちゃだと疑がいをかけたが、

それもカミラに思考を読まれ、


「言っておくけど、猫の人形がマイク付けてるだけとか思ってるんでしょうけど、この猫は本物で、中身は本物のウルちゃんよ。」


アルヴェールは、そうか。とでもいう態度で咳ばらいをしながらソファーに座り直し、ウルを見つめたまま、言葉を放った。




「…説明をしてもらっても?」




「はい…すみません突然驚かせてしまって…説明すると長くなるのですが…」


と言いにくそうにウルはカミラの方を見る。




「ウルちゃん、大丈夫よ。うちの弟は信用できるから安心して。何があってもあなたを裏切る様なことがないのは保証するわ。」




アルヴェール様が信用に値するか今の時点ではわからないが、私が1番信用しているカミラ様はアルヴェール様を信用できる人だと言ってるんだ。

怖いけど今は信じてみるしかないんだよね。

私には、もう何もない。頼れる人もいない。

カミラ様が与えてくれた一本の蜘蛛の糸を掴むしか行ける道はないんだ。


よしっ!



「本日、こちらにお伺いさせていただいたのは、

アルヴェール様の部隊の指揮官の異動のご挨拶ということもありますが、

この姿では…日常生活もままならず…ここへ住まわせていただきたいとお願いしにまいりました。」


無言のままのアルヴェールの端正な顔が険しくなる。



「まず…私がこうなってしまった経緯をお話しいたします。」


そういうと、アルヴェールは、そうしてくれと短く返事をくれた。




意を決してウルは話し出す。


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