海と水の楽園~ラリマーレ~ 7
2年前のカナリート防衛線でもイサークは常に先読みをし、次々に敵を殲滅していった。
ウルはまだカミラの軍に配属されて間もなかったため、目立った功績は上げられなかったが、イサークの防衛作戦を目にし、自分もイサークのように活躍できる人物になりたいと思い、今まで努力をしてきた。
それでもまだまだイサークには敵わないなと自嘲してしまう。
出発できる準備が整い、隊員たちは各々の仕事に取り掛かる。
ウルたちもアウレウスごと船に乗り込み、直ちに島の反対側へと出発した。
船は島の岸を舐めるように進んでいく。すると数分後には崖岸へと変わり、船が到底岸に乗りつけれない高さまでの崖の光景が広がってきた。
ウルが目星を付けていた場所に近づいてくると、見張りをしていた乗組員が通信デバイス越しに言った。
「隊長!11時方向、岸壁の窪み、その奥に何かあります!!」
イサークが船の左側面に出て、双眼鏡でその場所を確認すると岸壁に確かに少し窪みがあるのが見てとれた。その窪みの間を確認したいがイサークがいる場所からは死角になって見ることができない。
すぐさま船首の方へ走り、再度双眼鏡を覗いた。
「あれは木造の船だ。あの窪みに向かって前進せよ!」
全隊員が通信デバイスで、イサークの言葉を聞き、すぐさま動く。
その命令を聞いたウルは、今度はアルヴェール達に命令を下す。
「第7部隊戦闘員は、地下への突入をお願いします!」
アルヴェール達は、ウルたちの移動中に地下へ続く階段を見つけていたため、待機してもらっていた。
ロランが待ってましたと言わんばかりに了解と返事をし、アルヴェールを先頭に地下へと入っていく。
船は目標地点まで移動させ、窪みの奥にある木造の船の監視位置に配置。
すると、軍船の水面脇からジェットモーター搭載の2人乗り水上バイクが次々と出現する。
イサーク達、第14部隊戦闘員と第7部隊の部下数人も引き連れて水上バイクで目標の窪みまで前進を始めた。
それをモニター越しに見たウルはすぐさまジルにミサイルの準備に取り掛かるよう指示をしアルヴェール達の映像を心配そうに見つめる。
まだウルが第7部隊に配属となって顔合わせしたのも今日のことだが、すでに自分も第7部隊としての責任も心配もある。まだ数時間しか共に過ごしてはいないが、ウルには仲間意識が芽生えてきていた。
どうか皆さんご無事でと強く願う。
イサークが窪みにある木造船の近くまで接近し、そのまま窪みの奥を調べ始めようとした時、
バンッ
バンッ
どこからか銃声が聞こえ、こちら側に攻撃をしてきた。
銃弾は海の中へと消え、誰にも当たらなかったが、水上バイクの後部に乗っていたイサークと他の隊員もすぐさま銃で反撃を開始。
バンッ バババンッ
しかし崖の窪みは洞窟上になっており、かなり暗い為、敵の姿を捉えることができない。
バンッ
バンッ
敵も再度攻撃を開始した。
するとイサークの仲間の戦闘員の1人が何やら大きな筒状の物を持ち、引き金を引いた。
ヒュ~~~ボンッ
筒の中から大きな玉のようなものが真上に向かって上がったと思ったら、すぐにそれが爆ぜ、一気に洞窟内が明るくなった。
「10時と2時の方向にいるぞ。撃て!」
イサークがすぐに敵の場所を見つけ出し隊員に指示を出した。
バンッバン
バンッ
隊員が交戦している間に、イサークは洞窟の奥に続く道らしきものを見つけ、水上バイクから崖の岸へ降り、辺りに敵がいないかを確認。
「戦闘員は俺に続け。」
イサークの声に、他の戦闘員がサーと返事をし後に続いて岸へ降りた。
イサークが見つけた道を暗視ゴーグルをヘルメットから降ろし装着した5人は、警戒しながら進んでいくと前方からまたも銃撃される。
どうやらこの奥にまだ敵がいる。イサーク達は道の端に避難をし、こちら側からも銃を撃つが、敵の倒れた反応はない。
「ウル指揮官、第7戦闘員は今どのあたりだ?」
できればあいつらと挟み撃ちにして殲滅できれば楽なのだが。
イサーク側は道の入り口から100メートルも進んでいない為、最悪敵にこの道を突破される可能性がある。
できれば入り口で構えて待ち、アルヴェール達に後ろから攻撃してもらうのが最善だと考えていたが。
「第7戦闘員は現在、地下道を700メートル進んだあたりです。私の計算ですと、この道はあと1キロ弱あると思います。」
地上の建物があった場所からこの崖の窪みまで、直線で1.2キロ、まっすぐには地下道は掘れないはずだから、全長1.5キロはあるとウルは計算している。
そうなると、一旦引いて、入り口で待機したいところだが…とイサークが考えていると、ウルが突拍子もないことを言ってきた。
「イサーク隊長、すみませんがもう少し奥で待機、もしくは交戦できますか?」
「はっ?入り口で待ち構えた方が得策だろ!お前は何を考えているんだ!」
イサークは少し苛立ちウルに反論した。
「少しの間だけでいいんです。あと70メートルだけ進んでください。」
「ったく、進めばいいんだろ!隊員行くぞ!」
イサークもウルが何か策略を考えていることはわかっているが、それでも無茶ぶりに納得がいっていない様子だ。
イサーク達が敵に向かって、銃で攻撃をしながら前進し始めた。
敵の攻撃より上回る攻撃でイサーク達は洞窟を突き進んでいく。
その様子をウルはモニターで監視しながら、イサーク達の前進距離を確認し、
「ジルさん!お願いします!」
ドドーンッ!! ドッカーン!!
イサーク達が前進しながら敵との交戦に勤しんでいると、後ろからもの凄い音が響いできた。
「……なんだ…?」
イサーク達も、そして交戦していた敵も何が起きたのかわからず皆、音のする方へ意識を向けていた。
「イサーク隊長、もう後退して結構です。」
ウルはイサークに告げた。




