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海と水の楽園~ラリマーレ~ 1

 部隊員たちは離陸から約5時間が立とうとしていた。

軍用飛行機は旅客機用と違い、速度がだいぶ早いが貨物用の飛行機と合わせるため、軍の人員用飛行機よりも、やはり時間はかかってしまう。


戦闘員の数人が、言葉の端々に暑さへの愚痴を漏らしていた。

というのも、隊員達は着陸後、すぐに任務に就くために、すでに防弾スーツを着用しているからだ。

防弾スーツは首から下、つま先まで、全身黒のかなり厚手のタイツ状のため、防弾スーツだけでは一見怪しい人に見えてしまう。

なので、その上からズボンと靴を履いている。

ズボンのベルト周りには拳銃やナイフなどを装着し、主に、ソテルウスに乗る戦闘員はその恰好で任務にあたっている。


一方、指揮官や情報官は戦闘員と比べると、かなり薄手のタイプの為、その上から軍服を着るのがデフォルトだ。

ウルの猫用防弾スーツはさすがに無く、カミラに作ってもらった軍服に似せたものを着用するだけ。

ドックタグは、人間の時に首に掛けていたものだと大きすぎるため、ドックならぬキャットタグを特別に作ってもらい、首輪のように掛けている。


アルヴェールの戦闘服は、それはもう眼福だ。

防弾スーツの上からでもわかる腹筋や肩回りの筋を、黒の濃淡が艶やかに魅せてくれる。どこぞやの彫刻の様に美しい。汗もかかず、むしろ涼しげに見えるくらいだ。

そんな美しい彫刻が可愛らしいバスケットを持っているのだから、シュールな見た目極まりない。

そんな中、機内に着陸準備のアナウンスが流れ、一同はシートベルトを再度締め着陸に備える。

ウルはアルヴェールに言われバスケットの中へ入り、蓋が閉じられた。



着陸後、アルヴェールはすぐにソテルウスではなく、アウレウスへと乗った。

これから第13・14部隊との申し送りだ。


第7部隊のソテルウスに乗る戦闘員はアルヴェールの他に、シモンとロラン、それとジャンだ。

フラは主にアウレウスの運転とジルのサポート、ジルはパソコンで情報収集や、通信デバイス・GPSなどを管理する役割。

二コラは必要とあらば、潜入捜査などをする隠密部隊の為、今回はアウレウス内でウルのサポート役をしてくれる。


車内に乗った4人と1匹は早速、フラがエンジンをつけ、移動を始めた。

後部では、ジルがスライドモニターを出し2部隊との通信を繋げた。



「第7部隊のみんな~おつかれさ~ん。僕のフラ君は元気にしてるかい?」

とモニター越しに気さくな感じで声をかけてきたのが、第13部隊隊長のジェロ・バルトロメオだ。

長めの金髪を後ろで束ねている中年男性だ。


ん?なぜフラさん?とウルが疑問に思っているとアルヴェールがすかさず、フラの叔父だ。と答えてくれた。

あ!確かに同じ髪色だ。目元にも面影が何となくある。


当のフラは運転席のモニターを見ることもなく、不満そうに小さくうるさいと一言だけ口にし、前を見て運転している。



「そんなことよりも、早速申し送りを始めたいんだが?」

と圧力強めのもう一つの画面でにらみを利かせている方、こちらが第14部隊隊長のイサーク・グルエチノ。黒髪をオールバックにし、眉間にしわを寄せながら、話を進めようとしている。

歳はアルヴェールよりも少し上に見える体育会系の人だ。



「事前に送った通り、敵の国籍・目的はいまだ不明。

20日前より俺達、第14部隊がラリマーレ島で敵部隊と思われる数人を確認するも、

ボートで北東方面のウェーマス島・スフィー島方面へ逃げられ、追跡するも見失った。

その後、同じことがこの20日で6回。

いずれもラリマーレ島から見て、北東の方角に逃げて消息を絶っている。」

イサークは敵を捕まえられず、悔しそうな表情だ。


「本島の方でも夜、港で数人の怪しい人物を目撃しているんだけど、いずれも見失っちゃってるんだよね~。見失った部隊員の数人が目の前で敵が消えた。なんて言ってるんだけど、そんなスキル持っている人物に心あたりない?こちらで調べた限り該当がないんだよ~。」

重めのイサークとは対照的に気楽そのものの口調でジェロが問うた。


「お久しぶりです。イサーク隊長。ジェロ隊長にいたりましたしては初めまして。指揮官のウルミラージェ・ルーナスと申します。このような姿で大変申し訳ございません。」

ウルは指揮官席の操作パネルの上に座り、モニターに向かってお辞儀をした。



「ん?アルヴェール君、ウルミラージェ殿の姿が映っていないんだが?」

ジェロが首をかしげながら、姿を映してほしいと指示をした。


「ジェロさん、私の横、パネルの上にいる猫がウルミラージェです。」

アルヴェールはウルの背中に軽く右手を乗せ、淡々と答えた。


「おまえ!この非常時に冗談は体外にしろっ!!」

アルヴェールの言葉にイサークが怒鳴った。


それを聞いたアルヴェールが反論しようとしたが、ウルに阻止され、

「イサーク隊長、猫の姿ですが私はウルミラージェ・ルーナスです!2年前のカナリート防衛戦でご一緒したウルミラージェです!事情があり、猫の姿から戻れない状況なのです!」



「私からも申し上げますが、この猫はウルミラージェ本人です。」

アルヴェールも説得に協力をしてくれた。




「「………」」

二人はモニター越しに猫がしゃっべっている事態を呑み込めていない状況だ。



「このことは機密事項ですので、他に漏らさないようお願いします。あと、ウルミラージェが猫になった経緯は説明が長くなるので事件終了後でもよろしいでしょうか。」

状況を飲み込めていない2人に対して、またしてもアルヴェールが淡々と告げる。


「ほ、本当に、あのウルミラージェなのか…?」

イサークは驚きを隠せない表情でモニターを凝視している。


「はい。この姿につきましての説明は後日させていただきます。

まずは敵の件ですが、消えるスキルの保有者は存じ上げません。ですが、一つ思い当たる事がありますので現地調査をしたいのですが、許可をいただけますでしょうか。」





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