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わたしを助けて

 風を切りながら疾走し、木々を上手くよける。

柳木は息を切らしながら走り抜け、その上魔物は時速50キロほどで追いかけきている状況である。


「はぁ…はぁ…どんな体力してるのよ…あの魔物…」


 出来るだけ魔力のを減らさない様に使っているが…暴走している状態の魔物は通常の人間の速度を上回り、なかなか振り切れない。


(このままだと…私の体力に限界がきて詰むわ…)


 柳木は走って汗をかいているのか…冷や汗をかいているのかが分からなくなっていた…

 柳木は魔力は多い方では無く、日々の鍛錬や実践でようやく三式クラスまで使える様になったそれでも…彼女より遅く入隊した三人の天才はあろう事か…1年あまりで自分達で部隊を作り…今も前線で戦っている…。

柳木はそんな三人の話を聞いて…自らも部隊を作る事に決めた。


(私みたいに気が弱くて弱虫なやつでも…努力を積み重ねれば人として強く、そしてカッコよく、憧れを抱かれる様な人間になれるのよ!!)


 柳木は自らを鼓舞し、自身の精神を強くあろうとする。


「まだまだ…バテないわよ…しっかり、ついてきなさい!!」


 そう言いながら彼女は…魔物を引きつけて、ある場所を目指す。

その場所は…やけにひらけた場所で、木々は生い茂っておらず地面は平坦で平らなところ。

円形の周りに木々がある様な場所である。


「はぁ…はぁ…着いたわね…。」


 遅れて魔物も到着し、柳木は槍を構えて闘志を剥き出しにする。


「本当は…救援を来るまで逃げるつもりだったけど、やめるわ…」


「ここで…戦って勝たないと、いつになっても私の目標は届かないもの…。」


 柳木は深呼吸して相手を見据える、そして自身の魔力を練り上げ内に溜めつつ唱える。


【三式解除…】


 その瞬間…乏しさがあった一部だけの武装が一変し全身へと行き渡り変わる。

その姿は、黒を基調としたミリタリーロングコートの様な軍服を身に纏う事により完成された姿になる。


「せいぜい!私の部隊の糧になりなさい!!」


 浅く息を吐き、一瞬にして魔物との距離を詰める。

捉えきれない速度で複眼に目掛けて槍を突き、魔物の目を失明させる。

地を蹴り後ろへ後退し、すぐさま魔力を練り上げる。

 魔物は目を失った痛みに悶え苦しむが…再び再生を試みている。


「私の魔力量では、長期戦は難しい。だから、一発で終わらせるわ…」


 自身を守るために全身に纏っていた魔力を減らし彼女が所持している槍に力を込める。

そして限界まで溜めた槍を構えて…助走のスピードを殺さず、その反動で生み出された全身のしなりを一瞬で槍の先端に伝えて魔物目掛けて投げる。

 

「ドンッ!………ッ!!」


 凄まじ速度で投げ出された槍は、魔物に頭蓋と胴体に風穴空き魔物はそのまま力なく倒れてしまう。


「はぁ…はぁ…やった…私の勝ちよ…」


 完全に魔力を使い切ってしまった柳木はその場にへたり込んでしまっていた。

 彼女は手の平を握りしめて喜びに満ち溢れる。


「やったわ!私1人で、中型クラスを倒したわ!!」


 柳木が喜びで馳せている中…倒された魔物に異変が起きる。

赤黒かった体色は色が抜け濁った白い色へと変色したのであった。

 その様子を見た柳木は困惑する。


「嘘…でしょう…何で…確実に脳や胸部付近の心臓部まで貫いたはずなのに…」


 魔物は体色を変化させると共に、欠損した部位を脅威の再生能力で自らを蘇生してみせたのだった。

 本来魔物は魔石と呼ばれる核は魔物によってある場所は違う。

それも相まって柳木は自身の魔力の大半を消費して、魔物に風穴を空ける事で場所が分からない魔石ごと破壊できる様にしたはずだったのだが…魔物はそれでも蘇生してみせたのだった。

 完全に欠損部分を修復した白い魔物は、再び柳木を見据える。

 

「ひっ……!」


「お、お願いだから…こっちに来ないで…」


 完全に戦意喪失した柳木は、立てない足を這う様に引きづり少しでも距離を取ろうとするが…

 白い魔物はそれを許さない…柳木目掛けて勢いよく突進してくるのであった…。


「グォォォォォォ!!!」


 腹の底に響く様な咆哮を上げながら迫る。

 

「あ…嘘…」


「ドォン!!!」


 柳木は叩きつけられる様に木々に吹き飛ばされ、身体全身を勢いよくぶつけながら徐々に速度を落とし倒木にもたれかかる様に止まる。


「かはっ!!」


 吹き飛ばされる直前に残りの微量の魔力を防御に振ったお陰で大事には至らなかったが…立つ事さえ難しい状況に陥る。


「ゲホッ!ゲホッ!…何とか…逃げないと…」


 視界が霞む状況の中無理矢理体を動かそうとするが…


「あれ?動かない?…魔力枯渇の影響…」


 柳木が今経験している魔力枯渇は、魔力がを使い果たした事による魔力欠乏状態であり身体を動かせないところか…魔力の生成が不安定に陥っている状況の事を指す。

 つまり…まともに指先すら動かせない共に魔力すら練れない危険な状態でもある。


「動いて!お願いだから動いてよ!!じゃないとまた…」


 焦りながらも柳木は、魔物の居場所を把握するが…


「あ、ああ…」


 白い魔物は柳木の目の前に大口を開けて既に目前に迫っていた。


「わ…私はまだ、死ねない…死にたくない!…誰か助けて!!…」


 その瞬間、上空から青い稲妻の雷鳴を轟かせて地上に向けられる。

一瞬…ほんの一瞬で、白い魔物は一刀両断されてしまっていた。

柳木は言葉を失い、そして…何者かが問いかけてくる声が聞こえた…。


「あの…大丈夫ですか?」


 涙目を浮かべながら…魔物が両断された方向に目を向けると…長髪の女性がそこに立っていた…。

 彼女を見ると…端麗な顔立ちをしており…髪は晴れ渡った空のような、明るく鮮やか青色の綺麗な髪色をしていた…。


「まるで…幸運を招くあの…ラピスラズリの様で綺麗な青髪色…」


 柳木は彼女の幻想的な髪の色に心を奪われていた…。


「ん?あ、ありがとうございます?」


「えっ!?あっ!ごめんなさい!いきなり…変な事を言ってしまって…。」


「いえ!面と向かってその様に言われたのは初めてでして…どの様に反応すれば…っと思いまして…」


 彼女は頬を赤く染めつつ、毛先の髪を指先で触りながら返答する。

 暫し二人は沈黙し…思い出したかの様に彼女は心配をする。


「あっ!お、お体大丈夫ですか?」


「え?あ〜、大丈夫よ!これくらい…うぃ痛ぁぁぁぁ!!!」


 彼女を安心させようと立ち上がろうとした瞬間に全身から激痛が走る。


「だ、大丈夫ではなさそうなのですぐに、医療班を呼びますね!」


「あ、ありがとうございます…えっと…」


「蒼です、白鳥蒼しらとりあおいと言います。」


 柳木は…この時この瞬間に…初めて心の底から蒼の様な凛々しく美しくそして…速やかに魔物を駆逐する彼女に強く憧れを抱いた瞬間であった。




 

 



 


 



 

 

 



 













 


 



  

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