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第23話 それぞれの思惑

「ぎゃああああああああああああ」

「ああああああああ」

「ぐあああああ」


 神々の逆鱗に触れた枢機卿たちの末路はあまりにも凄惨なものだった。見せしめと言うべきか無慈悲かつ容赦がない。苦痛に悶え苦しんでいるのは聖女モモカに対して暗殺命令を出した愚か者たちだ。


 それは同時に他の聖女たちのパトロンでもあった。彼女たちから新たな聖女であるモモカが邪魔だという言葉を聞き、聖女たちの好感度を上げるため私兵を使った結果がこれだ。徐々に身体が黒ずみ激痛は回復薬(ポーション)でも消えず、癒されず、聖女の力をもってしても無意味だった。


 その事実に他の枢機卿たちもおののき、自分たちが何に喧嘩を売ってしまったのか遅まきながら理解する。手を出してはいけない──本物を虐げた報いが、文字通り天罰が下ったのだ。


 しかしこの状況下の中で3人の聖女は余裕を持っていた。単に枢機卿たちの情報を聞いても自分に降りかかるはずがないと思っているからだ。だからこそ彼女たちは各々動いた。


 ピンクの髪で小悪魔系の魅了の聖女エレンはエイブラム卿とオウカを自分の物にするために、黄金獅子聖騎士団を引き連れて地下迷宮(ダンジョン)55階へ転移。直接、声を掛けるために行動を開始する。

 白銀狐(シルバー・フォックス)騎士団の騎士たちが、聖女を出迎えた。アルバートを含む数名の騎士は元々聖女エレンの騎士で、様々な騎士団の中にいる手駒だ。


「聖女様、お待ちしておりました」

「それで~~お目当ての騎士はどこなの?」


 労いも挨拶もなしに、目的のモノに対して尋ねた。


幸運亭(カリシネヒア)です。エイブラムはそこで上質な酒を飲むのが日課ですので。オウカを含めて他に二名の騎士が向かったのを確認しております」

「ふ~~~ん。じゃあ連れていってちょうだい~~♪」

「ハッ!」


 聖女エレンは聖女であることを隠さず、白いベールを被り純白のドレスを纏って歩く。その背後に獲物を狙う狩人たちが張り付いていたことに気づく者はこの場にはいなかった。



 ***



 地下神殿の祭壇。等間隔で炎が灯るがあまりにも薄暗い。

 甘い薫りの香が炊かれ続けていた。

 血で描かれた魔法陣には幾人もの贄として捧げられた奴隷たちが転がっている。今まで好き勝手生きてきた報いを受けてた聖職者や魔術師の中には諦めの悪い──いや底意地の悪い者たちがいた。


 自分たちが滅ぶのに、他の者たちが今まで通りというのが許せないという身勝手な者たち。そんな彼らは世界に、一矢報いるため儀式を決行した。


「星を喰らう怪物。空を覆う絶望。海から這い出る魔物」

「太陽が闇に消えし宵闇に顕現せよ」

「地を這い、冥府の地下迷宮に封じられし追放された邪神」

「そしてその眷属たちよ、我らを贄として顕現せよ」

「「「「死の(タナトス・)軍勢(ストラスト)」」」」


 身体が漆黒の痣によって蝕まれる中、悲鳴を上げて叫ぶ者たちとは違いひたすら祈祷し、禁術を使う聖職者や魔術師がいた。彼らもまた私利私欲のために他者を貶めて今の地位にいる。しかし彼らが最後に縋ったのは神々ではなく邪神だった。


 この世界から追放された神々を呼び寄せる邪神召喚。それも複数の邪神を呼び寄せる。その贄は自分を含めた部下たちの命だ。全てを道連れに、そして神々が寵愛する聖女モモカを殺すこと。あまりにも身勝手な逆恨みによって、召喚術式は完成してしまう。


 禍々しい黒霧と共に赤紫色の稲妻が迸り、周囲にいた者たちの命を喰らい増長していく。


「辺境地の地下迷宮(ダンジョン)。55階を恐怖に染めてやれ」

「聖女モモカを」

「我々を見放した神々に復讐を」


 とってもなく身勝手な逆恨みによる邪神召喚の(ゲート)が開く。絶望を形にした邪神や魔物が輪郭を帯びて目的地へと転移し、祭壇だった場所には何も残っていなかった。



 ***



 白銀狐(シルバー・フォックス)聖騎士団の大半は間者だ。それは辺境地の地下迷宮(ダンジョン)の100階層にいる魔物を討伐した時の報酬を、横取りするためでもあった。

 前人未踏の100階層。

 100階層に辿り着き、ボスを倒すことで地下迷宮(ダンジョン)は崩壊する。それにより魔物の発生という脅威は消えるが、傭兵や冒険者にとって稼ぎ場所などの収入源がなくなることを意味していた。


 だからこそ100階層に辿り着かないよう様々な仕掛けや罠を増やし、時に足の引っ張り合いや仲違いをさせて攻略の足止めをしてきた。また万が一100階層に辿り着いた場合は報酬だけ奪い、ボス討伐はせず退却という指示も出ていた。

 様々な思惑が入り乱れ、100階層到達を進めようとする派閥もいれば、現状維持を望む商人や貴族、より資金を得るための方法を考える王族などどれも勝手な考えばかりだ。


 そんな彼らの手足となって働いているのが白銀狐(シルバー・フォックス)騎士団の面々の実情だった。逐一報告することも仕事に含まれる。

 そうやって生きてきた者たちは今、人生の分かれ道に立っていた。


 ある者は早々に55階から地上に脱出した。

 ある者は本来の雇い主の下にはせ参じて、点数稼ぎに精を出す。

 ある者は「今さらどうにもならない」と酒を煽って、現実逃避をする。


 そんな中、料理長であり斬り込み隊長のバルトロメオは旅支度をしつつ、必要な調味料などを買い込んでいた。彼はアルバートと共に、聖女の下(クソ女)に戻るつもりはなかった。

 部屋で荷物を纏めていると、思わず鼻歌を歌っていることに気づく。それはバルトロメオの妻や子どもが好んでいた歌だ。


「それよりも料理を楽しんでくれる聖女のほうが、何倍も良いわ」

「それが貴様の答えか」


 音もなく漆黒を纏った暗殺者が姿を見せる。


「そうよ。人生は一度きり、楽しいほうに全振りしたいじゃない」


 高級ホテル内で爆破が起こったのは、その直後だった。連続で爆破が起こり、あっという間にホテルを取り囲んでいた者たちが突入してくる。


 同時刻。

 幸運亭(カリシネヒア)の個室にて、念願の異世界のエールを飲んでいた桃花たちは、ほろ酔い気分で談笑していた。既に幸運亭(カリシネヒア)の周囲は敵に囲まれ、疑似的空のある55階層に暗雲が立ちこめる。


 とんでもない嵐と厄災が55階層の幸運亭(カリシネヒア)に集結しつつあった。


お読みいただきありがとうございます⸜(●˙꒳˙●)⸝!



めちゃコミックオリジナルとしてコミカライズ連載中

現在9話まで先行配信中

コミカライズタイトル名『やり直し悪役女王は溺愛に惑う ~婚約破棄したいのに、王子の愛が止まりません~』

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