表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載版】あなたを愛していたから、蛇の呪いを受け入れたのに・・・  作者: 風谷 華


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/40

第37話

重厚な扉が、静かに閉ざされる。


アストリア王宮の政務殿、第一会議室。

この日、その扉の奥で語られた言葉は、第一王子妃セレナの運命を決定づけた。


「王家は──終わったのです」


静かながらも重苦しい声でそう告げたのは、王国宰相・ガルド。

傍らには、セレナの父であるエルメイア公爵。そしてその隣には、王宮の最高法務官まで立ち会っていた。


セレナは、白百合のように凛と立ちながらも、僅かに拳を震わせていた。


「……どういう意味か、説明していただけますか?」


冷えた声。けれど、内心の動揺を隠すには足りなかった。


「神祈りの儀式が失敗したことは、すでにご存じかと存じます。そこで“王家の核“が失われたかもしれない、となったことも。あれから綿密に調査した結果、王家に継承されるべき“神の核”が失われていることが明らかとなりました。」


「……嘘、でしょう。まさか、本当に……」


「残念ながら、事実です。

 そして、王家に核がない以上、王位の正統性も、君臨する資格も──存在しない」


セレナは、椅子の肘掛けを握りしめた。


「……それで、父上。わたくしにどうしろと?」


エルメイア公爵は、重たく口を開く。


「レオノール王子はすでに、王宮北塔に幽閉された。

王もまた、政から退くことに同意し、事実上の隠居状態だ」


「……じゃあ、王家は」


「終焉を迎えた」


宰相が明言する。


「そして、貴女──セレナ様も、王族の一員ではいられなくなる」


沈黙。

セレナの喉が、無意識にごくりと鳴った。


「離縁ですか……」


「正式な婚姻解消の手続きが進行中です」


それは、王族に嫁いだ令嬢として、最も屈辱的な通告だった。


「……これが、王家の末路だと?」


セレナの瞳に、今までにない色が宿る。

冷たく、凍りつくような──そして、悔しさに濡れた光。


「そして、その後の処遇ですが……」


宰相が、次の書状を机に置く。


「隣国・ヴァルシュテイン王国が、“新たな同盟の象徴”として、

貴女を側妃として迎えたいとの打診が来ています。これは、王国として外交上非常に有利な……」


「──わたくしを、“道具”にするおつもりですか?」


セレナの声が、鋭く割って入る。


「王子妃としての責任を果たしてきたわたくしを、

あろうことか五十歳の隣国王の“十人目の側妃”に落とすと?」


誰も返事をできなかった。


「私はただの華ではありません。王家の“妻”だったのです」


「その“王家”は、もう存在しないのです」


宰相が静かに告げる。


セレナは、息を飲む。

胸の奥に、焼けるような怒りが広がっていく。


(──アリアナ・リース……あなたが、すべてを壊した)


彼女の名が、まるで毒のように胸を満たす。


けれどその一方で、確かに“自分が選ばれなかった”という現実もまた、胸を突いた。


(あの男が本気になったのは、私ではなく……あの田舎娘)


──誇りは、砕かれた。


──名誉は、地に堕ちた。


セレナの美しき人生は、ここで幕を下ろした。


これより先は、他国の王宮で、十人の妃のひとりとして静かに生きるのみ。


──“もう、王子妃ではない”。

その言葉が、心を鋭く切り裂いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ