第25話
まだ薄明かりの中、目を覚ますと──お腹が、ほんのりと膨らんでいることに気づいた。
手を当てると、小さな波が伝わってくる。
(……これって……赤ちゃん……?)
長いまつげの奥で、私の目が大きく見開かれる。
朝露の光が肌に触れ、世界が一瞬止まったようだった。
私は、レオノールの血を、そして王家の核を、この小さな体に宿している。
鏡の前で深呼吸した。
お腹の膨らみは、赤ちゃんの証。
(この命……レオノールの子ね)
思い浮かぶあの人の面影に心が震えた。
レオノールをまだ愛している自分がいて驚いた。
でも同時に、運命の重さが背中を押す。
(誰にも言わない。産むまでは――絶対に)
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翌日、私は決意を胸に隠れ里へと去った。
古い祠を借りて、静かに暮らせる場所。
木漏れ日が降り注ぐ土間で、私はお茶を淹れ、包帯を替え、ひとり、夜の祈りを捧げた。
「どうか、無事に……あなたがこの世界に届きますように」
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ある夜、お腹の中から蹴るような刺激があった。
息を止めて、掌をお腹にあてる。
(感じている……あなたの動き)
それは、言葉を超える鼓動。命のぬくもりが、心を溶かす。
私は涙をこらえながら、笑みを浮かべ、そっとつぶやく。
「あなたがいてくれるだけで、どんな夜も、私は強くなれる」
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月日は静かに流れ、お腹はすこしずつ丸くなっていく。
本を読み、詩を書き、あなたの未来を想像する時間が増えた。
「あなたは王族の誇りと、民を救う光を継ぐ」
――それが、私の揺るがぬ信念になる。
手のひらに届く小さな命の温もりに、愛情があふれる。
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ある夜、父から届いたのは簡潔な密書。
王都では巫女の存在が波紋を呼び、私の名前が囁かれているという。
でも、私は出ていかなかった。
「私の役目は、まずあなたを守ること」——それだけが、今は胸のすべて。
窓の外、月が静かに輝く中、私は決めていた。
——この子が無事に生まれ、そして王家の核を受け継ぐまで。
私はここに――この里に身を隠していよう。




