戦い方
『桐野リサイクルショップ』は相変わらず古びていた。
昨日掃除したことが嘘のように感じられる。
埃をかぶった方がそれらしいから、との桐野さんの注文で払わず、埃だらけの本を見つめてグレンが呟いた。
「これを買う人いるの…?」
僕も昔から疑問に思ってる。
でも度々、埃であたかも雪景色のようになった棚に本の形などの穴があくから、
結構繁盛しているようだ。
つけている値札的に意外にもかなり儲かっていそう。
「来たね、いらっしゃい。」
儲かっているわりに貧乏そうななりの桐野さんがカウンターの奥、
人一人分しかない小さな地下室への入口から出てきて言った。
「やっぱり、分かったんですね…」
僕は言うと目線を50%OFFのシールをベタベタ貼られたガラクタの方に逸らす。
「まぁね。
というか、地下室入る人って俺とじいさん以外で君達しかいないし。」
そう、だからバレるのは分かった上での計画だったし、動揺はしない。
ただ今は事の重大さが予想以上で、罪悪感で胸が痛い。
「なら話は早いですね。」
グレンが言った。
桐野さんも話を早く進める方針らしい。
「戦う術だろう?
残念ながら君達の期待するような感じとは違うと思うよ。」
古い、以前早紀が汚いからと必死に磨いていた剣を手にとりながら苦笑する。
「物理的に殴ったりするんじゃないんだ。
頭の中の敵だからね。」
山吹が 4歳児の玩具で遊んでいるのは見ないようにする。
グレンが眉間にシワを寄せながら、
「ならどうするんです?」
と短く尋ねた。
「寄生される人間には何か悩みや不安があるから、
それを解決したり、説得したり…かな?」
僕はようやく視線を上げた。
「…それってただのカウンセラーじゃ…
戦い方を聞きに来たのに…」
桐野さんと目が合う。
「まー…、そんな感じかも?
殴れないし、倒せているかどうかなんて確認出来ない。
それが僕達の敵なんだ。」
…かも?
僕とグレンの顔に出ている不信の色が一層濃くなる。
まさかとは思うけど…
「正直言うとハッキリ伝わってなくてさ。」
僕はガクンと肩を落とした。
……やっぱりか。
「ただ、唯一ハッキリした決まりに従わせてもらうことしか出来ないよ。」
そう言って先程出てきた階段へ促す仕草をして見せる。
「継承者を地下室に案内する。」
「俺も、いいですか?」
グレンが控え目に挙手して見せる。
「あー…まー…いいんじゃない?」
頭をボリボリ掻きながら桐野さんが視線を泳がせる。
浅葱が急に後ろを振り返った。
「君は来ないのか?」
全員が浅葱の視線の先を辿り見る。
「早紀?」
僕が呼んだのに対しビクッと肩を震わせて、おずおずと棚の陰から出てくる早紀。
埃の塊が頭に乗っている。
そんな汚い所にいつから居たんだ。
「すごい声……。」
早紀が開口一番もらした言葉は山吹と浅葱の事だった。
見知らぬ人が半数いる空間にたじろいで、入り口付近から足を進める気配がない。
「丁度良かったよ。
君も監視しておかなければならないから。」
浅葱が余計に怯えさせるような発言をする。
僕は浅葱に少し呆れながらも早紀に手招きして見せた。
「大丈夫。こいつら味方だから。」
「なら全員でかなー?」
桐野さんが、言っとくけど狭いよ?とか笑いながら先に入って行く。
僕らは後を追った。




