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7つの扉  作者: chihir。
22/23

携帯は使用禁止

「クロスワードとかあるんだね。」


早紀が言うのを聞いて、やっと僕も問題に目を向ける。


「これなら私でも解けそう!

 なんか面白いかも!」


とはしゃいだ声でみぃなが言うように、クロスワードにナンバープレイス、穴空き問題など、多種多様な遊び感覚の問題が並んでいる。


「ゲームだからね。

 本題は宝探しなんだし、解けない問題では見ている側も楽しくないんだよ。」


突然の雅人の声に、というより、皆がいる状況で雅人の声がした事に驚く。

しかも声がしっかりとした肉声だ。


見回すと、厚底を履いたみぃなの腰ほどの背丈しかない黒髪の少年がこちらへ歩いてきていた。


「雅人!」


僕が叫ぶと、全員がその視線を追って少年を見つける。


何故か彼の周りだけ人込みが割れている。

おかげで皆、すぐにそれが雅人なのだとわかった。


人込みの事がなくとも、違和感を感じるほど子どもらしさの無い笑みと落ち着き払った瞳は、普通の人間では無い事を明らかにさせていた。


「彼等は君達が追い詰められて焦って、駆けずり回る様が見たいんだ。

 だから答えは大雑把なものだよ。メインは走り回る方だからね。」


そう言って、雅人は笑わない目で口元だけにこりとする。


「はじめまして、皆さん。」

「こっそり見てるとか、悪趣味ね。」


と姉が言うと、雅人は苦笑して、


「不正の無いよう監視する為に、彼等は全員この道頓堀にいるよ。

 …例の人達もね。」


一度切り、グレンを見据えて小声で付け足した一文に、グレンの眉が微かに動いた。

それを見て、僕はそれが『封印されなかった敵』の事なのだと察する。


「教えてしまうと、今いる僕を除いた思念体は11人。

 今回の相手はさっきの女性、山下 可菜 24歳OLにとり憑いてるヤツね。」


オレンジっぽい茶髪のショートヘアで小柄な、元々は明るく元気な人そうだった。

精神が弱って寄生されたなんて信じられない感じだったが、


「カナさんにとり憑いてる敵の名前は?」


みぃなが訊いて、


「僕らには名前の概念が無い。

 本当ならあまり交流とかしないからね。」


と雅人が簡潔に答える。


「なら罪もないカナさんの名前を敵の名前として呼ぶしかないのかー。」


うーん。と深刻そうに眉を顰めてみぃなが唸った。

それを見て敬介は、意外に律義な人だな。と思った。


「妨害する可能性は?」


次はグレンが質問を投げた。


「ないよ。ルールの追加はもう無いから安心していい。」

「それで、アンタこっち来てていいの?しかも情報ペラペラ喋っちゃって。」


姉が一番気になっていた事を訊いた。


「ゲーム自体には支障の無い情報だからね。」


雅人がまた、今度は苦さの色が強い苦笑をして見せた。


「いや、有用な情報だと思う。」


とグレンが返して、雅人はホッとした表情をした。

グレンは例の8月26日連続殺人犯、(といっても思念体達の殆どがそうなんだが。)に相当興味があるらしい。


「それにしても、扉7つに1人ずつで、雅人を抜いたら6人。

 それで対戦相手は11人って事は、5人も封印を逃れてたって事だよね。」


僕が言うと、早紀が疑問を抱いたらしく、雅人が答える前に続ける。


「その人達は封印できないって事?」


考えていなかった事実に気付いて全員がハッとした。

雅人だけが、全く表情を崩さずに答える。


「大丈夫だよ、正統継承者が新たに封印すればいいだけだから。」


なんだ。と僕らが胸を撫で下ろす中、早紀だけ、一層不安そうな顔をしていた。


「五分経っちゃったし、

 そろそろ問題にかかるべきだよね。」


それじゃ。と雅人は裾を翻し、配置に戻っていった。

追いかけても問題が解けていなければ意味がないので見送り、僕らは言われた通り、問題にとりかかる。


「クロスワードは皆で解けるよね。」


とみぃな。姉も頷き返す。

その表情は完全に遊び感覚になっている。

グレンはさっさと一人ナンプレに取り掛かっているし。


なら他を、と思い穴埋めをしてみたら文字が消えたので、

周りに気付かれていないか確かめ、小さくため息をついて、僕も姉達とクロスワードに取り掛かった。


「…全部大阪関連な問題なんですね、コレ。」


暫くしてみぃなが顔をしかめてこぼした。

みぃなにとってはやりづらい内容だ。


「縦の7番『タレの二度付け禁止といえば』は串カツ。

 このふざけた横3番の『足フェチが狙う金色キューピー』は多分ビリケンさんね。」


姉が「そうね。」と軽く相槌を打ちつつサクサク進めていく。

時間が惜しいのだろう。


「この辺の大阪関係ない問題とかやる?」


僕は提案しながら携帯を取り出した。

わからない事はネットで調べようという腹だ。


が、


「あれ…」


液晶は真っ黒だ。

地下鉄を出てすぐに携帯の電源を入れて、その後切った覚えはない。

様子を見て、みぃなも携帯を取り出して操作するが、反応は無く、同じく真っ黒だ。


「私のもだ…。」


と早紀も自分の携帯を出して呟いた。


これはまさか…。

僕にだけは思い当たる節があった。

さっと辺りの人を見渡す。


見覚えのある長い黒髪が視界に入った。

相変わらず華奢な少女は黒目がちな目をこちらに向けて、無表情に立っていた。


「携帯を使ったら他の人間も協力出来てしまう。

 それでは人数を絞らせた意味がない。」


平坦な声で言い、そしてツカツカと近付いてきた。


姉とグレンは一瞬顔を少女に向けたものの、妨害はしないという話だったからか、さっさと問題に戻った。

早紀とみぃな、僕はそうもいかず少女の動向を見守る体で固まってしまっている。

少女は僕の前で立ち止まり、


「この前は、私を騙したの?」


と、少し感情の入った声で尋ねた。

病院の外で会った時の事だろう。

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