ゲーム「宝探し」開始
一度敬介の家に集まり、全員でマンションを出る。
山吹は途中までだけれど見送りに来てくれた。
思念体をステージに連れてくるのは禁止。という後付けルールの為、浅葱や茜も留守番だ。
地下鉄に乗って、まだ時間には余裕があったので、
姉とグレン以外、みぃなに合わせてゆっくりと山梨との違いなどについて話しながら歩いた。
道頓堀に着くと、やはり平日でも変わらず沢山の人で賑わっていた。
「一応、あんた達はおせっかいそうな人とか、警官とかに気をつけなさいよ?」
姉が振り返って言う。
まだ夏休みが始まったと嘘を吐くにも苦しい日にちで、平日の真っ昼間だからだろう。
補導されて時間ロスなんて冗談じゃないし、冗談で済まない。
グレンは大人びているし、今日もスーツみたいなパリッとした服を着ているから問題なく、
みぃなは声をかけ辛いので、問題あると言えば大いにあるとは思うのだが、今回の点においては、なく。
問題は僕ら二人なわけだ。
どう高く見積もっても中学生くらいにしか見えない。
「最低限、敬介と早紀ちゃん並ぶ事ないようにね。
目立つわ。」
「まぁ元々単独行動の予定だけど。」
全員に配られた、答えの候補や注意しておくべきポイントなどのリストの載った冊子に目を落とす。
『来たな。』
急に、周りの雑音に紛れる事のない、クリアな声が聞こえて、
皆にも聞こえていたのだろう、一斉に辺りを見回す。
そうしてやっと、耳ではなく頭に直接響いてきていたんだと気付いた。
『問題用紙は今から渡す。
受け取れ。』
言われて間も無く、ビラを配っていた茶髪のお姉さんから数枚バサッと渡される。
まさか。
見上げると、お姉さんの目は全く笑っていなかった。
殺意というのがあんなに恐ろしいものだとは思っていなかった。
足が竦むなんてものじゃない。
喉が、閉じたみたいに動かない。身動き出来ない程の恐怖。
心臓がバクバクいったりするのかと思っていたが、逆だった。
目があった瞬間、耳鳴りがしそうなくらい音がしなくなって、心臓が止まっているのかと思ったほど、一切の音を感じなくなった。
呼吸もし辛くなって、息苦しいほど浅くなる。
彼女が他の人に視線を逸し、普通のビラを配り出して、ようやく呼吸を再開できた。
突然動揺して固まった僕を、早紀が腕をひいて移動させてくれたので、数メートルの距離があいた。
彼女はもう見向きもしない。
急に、静かだった心臓が、耳に五月蠅いほど脈打ち始めた。
ずっと力が入らなかった手が、途端に震えだした。
皆、「どうしたのか」「敵に何かされたか」と心配してる。
あのお姉さんの目を見たのは僕だけだったらしい。
握り締めてしまっていた、クシャクシャな問題用紙を差し出す。
グレンが受け取って、全員に配った。
用紙には15問の問題が印刷されている。
皆は軽く目を通すが、
僕はまだ見る事もできずにいた。
突然、また頭に声が入ってきた。
『答えをその解答欄に書けば、間違っていれば消え、合っていれば赤くなる。』
姉が、赤ってまた不気味な…丸つけなさいよ…。と小さく嘆息するのが聞こえる。
『では、――開始だ。』




