王宮にて
魔王が去った後の王宮では、王とその側近が真剣な表情で論議を重ねていた。
「やはり、あれは魔王か?」
王は側近に尋ねた。
「九分九厘間違いないかと・・・・」
側近の男は頭を下げて答えた。
「ワシも銭湯で見たときはまさかと思ったんじゃが、一緒にいるほどにそう確信するしかなかったわ」
王は難しい顔をして答えた。
「どうされるおつもりですか」
側近の男は、鋭い目をして王を見ている。
「わからん、これまでの魔王とあれは明らかに違っておる。これまで魔王が人間界に必要以上に干渉することなどなかった。あれは危険だ!」
王は考えを改めなければならないと思っている。
「魔王城の見張りは万全か?」
王は少し考え込んだ後、側近の男に尋ねた。
「はっ! それは抜かりなく!」
「奴らは魔王城の周りの森林を拭き飛ばした後、穴を掘り進めております」
「新たなダンジョンを作っておるのかと最初は思いましたが、どうも違うようでございます」
側近の男は危機感をにじませている。
「ほう、穴をな・・・・」
「新しい勇者をぶつけてみるか! どうだ?」
王は、側近に顔を近づけ、威圧感がすごい状態である。
「お、王・・・・勇者のレベルはまだ早いと思われます」
「今ぶつけるなら、剣聖では・・・・」
側近はかなり言いづらそうである。
「また、あの爺に頼るのか・・・・」
王は剣聖のことが嫌いだった。自分自身も爺ではあったが剣聖はかなり変わり者だった。
「ワシはあいつとは話したくない。お前が行ってまいれ!」
「わたしでございますか・・・・私ごときが話をしても来てもらえるとは・・・・」
側近はこれまでも王に押し付けられて何度か剣聖に会いに行っては追い返されていた。
「ワシはその間、もう一度あの魔王に会いに行ってまいる」
「あの魔王の真意を確かめなければ寝ることもできん!」
王と側近が人類の存続がかかる話を王宮で重ねていたころ、当の魔王はプリヒスとともに海に来ていた。
「よし、船を出すぞ! そして刺身を食すぞ!」
魔王はさらなる食の充実を図るため、今まさに釣りに出ようとしていたのである。
「刺身ですか?」
プリヒスは刺身を知らなかった。
「なんじゃ、刺身を知らぬのか! 生の魚の事じゃ!」
「そんなものがおいしいのでしょうか?」
プリヒスは不思議だった。
「食ってみればわかるわ!」
2人は小舟で大海原に漕ぎ出した。
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