元春の一撃
「どうした、もっと本気でかかってこい!」
信長はそういうと剣で元春の剣をはらった。
「ん、んむむむ! 舐めるな!」
元春は怒りにまかせて、剣を何度も信長に振り降ろした。
信長はそのすべてを、子供の相手をするようにさばいている。
「なんだ、こいつは・・・・とても勝てる気がしない・・・・」
元春の心はオレかけていた。
「なんだ、こんなものなのか・・・・がっかりだな!」
信長は頃合いだと剣を掲げ元春を切りつけようとした。
「上様、ここまででよろしいのでは・・・・」
官兵衛が割って入った。
「元春殿の力量は十分にご判断されたはず!」
「そうだな、こいつを切っても詰まらんな」
信長はそういうと剣を捨てて、立ち去ろうとした。
それを見た元春は余りの屈辱に、剣を持たない信長に切りかかった。
「ガシッ」
「ボキッ」
信長は元春の剣を素手でつかんで、その剣を握りつぶした。
「ほう、なかなかやるではないか」
信長はそういうと、顔を元春の顔にぐっと近づけ「ニヤッ」と笑った。
元春は余りの恐怖に持っていた折れた剣を落として膝をついた。
それをみた、隆景は兄を支えた。
「織田様、余興は十分でしょう。宴の用意を致しております! 城内にお戻りください」
隆景の声は震えていた。
「飯か! いいだろう! キッカワ、最後の一撃はよかったぞ! またやろう」
信長はそういうと場内に向かった。
隆景はほっとした表情を浮かべ、秀吉に声をかけた。
「羽柴殿、のちでお話があります」
秀吉は無言で首を縦に振った。
場内では信長に贅を尽くした食事が提供された。信長は大満足でそれらをたいらげた。もはや毛利に信長一行を殺そうという気配は微塵もなかった。
宴会の裏では小早川隆景、羽柴秀吉、黒田官兵衛による密談が行われていた。
「羽柴殿、これはいかなることでございましょう。 光秀が信長殿を討って、光秀をあなたが討って秀吉殿が天下を取るということであったはず!」
隆景は事前の話し合いと随分と変わってしまった現状について、秀吉に問いただした。
「すまない隆景殿、わしも、まさかこんな事態になるとは・・・・」
「しかし、今の上様は明らかに以前の上様ではないのは確かだ!」
秀吉は素直に隆景に対して頭を下げた。
「確かに、あの織田信長は私の知る織田信長ではありません! 一体、本能寺で何があったのか・・・・」
黒田官兵衛も何かが以前とは明らかに違うと感じているようだ・・・・
3人は、それぞれに事態をいまだに吞み込めないようである。
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