吉川元春
吉川元春が部屋に入ると中央に信長らしい男が鎮座していた。
「お前がキッカワなのか?」
元春は突然名字を呼び捨てにされて驚いたと同時に大いに戸惑った。
「織田殿、遠路はるばる何用でみえたのでしょうか」
元春は動揺を必死に抑え信長に質問した。
「いや、そんなにたいしたことではないんだが、お前が強いと聞いてな!」
信長はとても機嫌がよさそうだ。
「そうですな、これまで数々の武勲をあげたことは確かでありますな。しかし私ももう若くないですからな・・・・」
元春は信長の真意がわからず、探り探り話をしている。
「なんだと、歳だから弱くなったのか!」
信長は立ち上がり、声を荒げた。
信長が立ち上がったため、蘭丸や官兵衛、秀吉も合わせて立ち上がった。
毛利の兵たちは慌てて、剣を構えた。
「おっ、やるのか!」
信長はとても嬉しそうにニヤッと笑った。
「待たれい」
その時、秀吉からの書状で駆けつけた小早川隆景で慌てて部屋に入ってきた。
「織田殿、兄上!」
「毛利と織田は和睦を結んだはず! 織田殿、約束を反故にされるおつもりか」
隆景は、必死の形相である。
「ワレは約束などしておらぬが、和睦の件は好きにするがよい」
「そこのキッカワとやれればよい、それで満足だ!」
信長は元春を指さした。
「元春殿、上様は元春殿との一騎打ちをご所望であります」
蘭丸は信長の意向を伝えた。
「なっ!」
驚いたのは、毛利勢であった。大将同士の突然の一騎討つなど聞いたことがなかった。
「われは、全員相手にしてもよいが!」
信長はそういうと剣を抜いた!
「ま、待て!」
剣の手合わせというなら、庭に出よう! ここでは手狭だ。
元春は、ちょっとした腕試しだと理解したようだ。
「信長はうつけだと聞いていたが、ここまでとはな!」
元春は庭に移動する途中、秀吉に嫌味をいった。
秀吉は苦笑いするしかなかった。
「ではやろうか」
信長はそういうと剣を抜いた。
「うむ」
元春も観念したようで、剣を抜いて対峙した。
「どうした、キッカワ! かかってこい!」
元春は、ここまで抑えていたが信長の失礼な態度に懲らしめてやろうという気持ちがわいていた。
「いつまで、その減らず口が叩けるかな!」
元春は信長に剣を振り降ろした。
信長は元春の渾身の一撃をゆうゆうと剣で受け止めた。
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