信長、毛利へ
信長は秀吉と蘭丸を伴って、姫路城に入った。
黒田官兵衛が毛利と和睦し姫路城で信長を迎える準備をしていたためである。
「上様、遠路はるばるご苦労様でございます」
官兵衛は頭を床につける勢いで信長を迎えた。
「ランマル、毛利はどこだ?」
信長は官兵衛のことを一瞥し、森蘭丸に尋ねた!
「上様、ここは播磨です! 毛利はまだ先でございます」
蘭丸は本能寺以来、これまで以上に信長にぴったりと寄り添っていた。
「上様、ご報告が遅れましたが、毛利とは和睦が成立いたしました」
官兵衛は信長の前にでて、報告した。
「和睦? われは毛利と戦いに来たんじゃが!」
信長は不思議な顔をした。
「官兵衛殿! 上様のお許しも得ずに毛利と和睦とはいかなことでしょうか!」
蘭丸はきつい口調で官兵衛を責めた!
「ランマル! まあ良いではないか」
信長は特に怒ってないようだ。
「キッカワ・・・・というものが強いと聞いたが、そ奴を呼んでまいれ!」
信長は強いものと戦いたいだけのようだ。
「吉川元春どののことでしょうか?」
官兵衛は恐縮して尋ねた。
後ろで大人しく控えていた秀吉は官兵衛に目で合図した。
「和睦をしたとはいえ、毛利の対象がのこのこ来るとは考えられませぬ」
官兵衛は切られるのを覚悟で答えた。
「そうか、ではわれが行こう!」
官兵衛は思わず信長の顔を覗き込んだ。
信長は、新しいおもちゃを見つけた子供のような顔をしていた。
「上様・・・・」
蘭丸は余りに危険な行いであるため、止めようとしたが、途中で飲み込んでしまった。
信長は姫路城で宿泊することなく、その足で吉川元春の居城、日野山城に向かった。
友は森蘭丸、羽柴秀吉、黒田官兵衛のみであった。
官兵衛はもはや死を覚悟していた。和睦したとはいえ、信長以下、秀吉、官兵衛とそろっていれば、殺してくれと言っているようなものである。
しかし、驚いたのは毛利側であった。突然織田信長がほぼ単身で訪れたわけである。ほとんどの毛利側の武将は、いくら確認しても信じられなかった。
「殿、信長殿はすでに部屋でお待ちです!」
吉川元春は部屋の隅から隅を行ったり来たりしている。
「今、参る!」
吉川元春は織田信長本人にはあったことがなかった。果たして本人なのかどうか面と向かってもわからないのである。
それは毛利の他の武将も同じであった。黒田官兵衛や羽柴秀吉ならばわかるが信長がここまで来たことは当然一度もなかった。
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