朝風呂
魔王と老人は朝まで飲んでいた。二人はそのまま座敷で眠ってしまった。どうやらここは
宿屋もかねているようだ。
プリヒスは迷っていた。魔王から呼ばれていないのに勝手に入るのは失礼だ。しかしすでに夜が明けている。銭湯は、もうすぐ朝の営業を開始しようとしていた。
なぜか、プリヒスの隣に人が集まり始めていた。プリヒスは警戒しながらも、騒ぎを起こさないため、あえて知らぬふりをしていた。
「あんたも、よく来るのかい?」
プリヒスの隣に立っているかっぷくのいい男が話しかけてきた。プリヒスは人間の男など汚らわしいと思いながらも、魔王のためにここで暴れるわけにはいかないと、愛想よく話をした。
「私は初めてでございます」
プリヒスの顔は少し引きつっているようだ。
「初めてで、一番風呂とは、お前さんなかなかやるな!」
なんと、プリヒスを先頭に、一番風呂を並ぶ行列ができていた。
「えっ?」
プリヒスが驚いていると、銭湯の朝の営業が開始して流れに押されてプリヒスは銭湯の中に入った。
仕方なくプリヒスは銅貨を渡して風呂へ入った。今のプリヒスは人間の姿をしていた。周りが服を脱ぎ始めたので、自分だけ服を着ているのもおかしいと思いプリヒスは服を脱いで、初めて風呂場に入った。
そこには中央に大きな絵が飾ってあった。ドラゴンである。プリヒスはその芸術性の高さに見惚れてしまって、しばらく立ちすくんでいた。
「おいおい、そんなとこに立っていると風邪ひくよ! 湯船にはいったら」
50代くらいだろうか、大柄の女性がプリヒスに声をかけてきた。プリヒスは言われるがままに湯船に浸かった。
「あっああああああああ」
プリヒスは思わず声が出てしまった。一晩中魔王を待っていたプリヒスの体は非常に冷えていた。朝一の銭湯のお湯は、そんなプリヒスの体をやさしく温めてくれた。
「こ、これがお風呂なんですの・・・・」
プリヒスは感動して涙を流していた。なぜ今までこんな素晴らしいものを自分は知らなかったんだろう!プリヒスは自分がこれまで、かなり損をしてきたんだろうと感じていた。
魔王様に進言して、すぐにでも魔王城に風呂を増築しよう! プリヒスは湯船に浸かりながら、そう決心していた。
1時間ほどゆっくり風呂を堪能したプリヒスは、椅子に腰かけていた。暖かい風呂で火照った体を冷やしていたのだ。他の人間たちを見ていると、同じ飲み物を変わったポーズをして一気に飲んでいる。
「あの飲み物はなんだろう! 皆とてもおいしそうに飲んでいる」
プリヒスはみなと同じように、その茶色の飲み物を飲んでみたくなった。
番台で皆と同じ飲み物を購入したプリヒスは、先ほどまで座っていた椅子に腰かけ、その飲み物を飲もうとした。
すると、先ほどの女性が声をかけてきた。
「あんた、コーヒー牛乳を座って飲むつもりかい。それはねこうして飲むんだよ」
その女性は他の人間と同じように腰に手を置いて、一気にコーヒー牛乳を飲みほした。
プリヒスは立ち上がり、その女性と同じように腰に手をついて足を開き一気に珈琲牛乳を飲み干した。
「プハーッ」
あーなんて、おいしいんだ! 幸せだなー!
プリヒスはまた1つ新たな幸せを発見した。
魔王城に風呂も欲しいが、やはりこの銭湯というものは別格だ。数日に一度はここの風呂に入って、その後はコーヒー牛乳を飲もう。プリヒスは決心していた。
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