信長と秀吉3
「ワレの嫌なことは退屈なことだ!」
信長は琵琶湖を眺めながら話した。
「退屈でございますか・・・・」
相変わらず話せない秀吉だった。
「前の世でもそうであったが、ワレは強すぎるのだ! それ故、我に向かってくるものはなかなかいない」
「たとえ、向かってきたとしても弱すぎる・・・・」
「ワレは強きものと戦いたい!」
「あの光秀というもの、その気概はよかったがいかんせん弱すぎる・・・・」
「キキ、お前に命じる! われの前に強きものを連れてくるのだ」
信長の目はキラキラしていた。秀吉はこれまで自分が知っている信長と大きく違い戸惑ってはいたが、どうやら自らの命は助かりそうだという安心感が大きく上回っていた。
「は、ははーっ」
秀吉は頭を畳にこすりつけて信長に手をついた。
「秀吉殿、い、いやキキ殿」
蘭丸は信長と秀吉の会話に割り込んだ。
「毛利はどうされたのですか?」
「そ、それは・・・・」
秀吉は困っていた。本来なら、信長のことを心配して駆けつけたという話で通すつもりであったが、いまや秀吉の立場は謀反人明智光秀を先導した影の張本人という立場である。信長に命じられて戦っていた毛利とも勝手に和睦をしようとしているとは言えなかったからである。
「ランマルよ、モーリとはなんだ?」
信長は初めて聞く言葉に食いついた。
「は、秀吉殿が上様に命じられて戦っている相手でございます」
蘭丸は信長のことを理解していたので端的に答えた。
秀吉は信長がなぜ、わかりきったことをきくのかと不思議に思った。
「ほう! そいつは強いのか?」
信長は興味津々だった。
「はい、毛利氏は中国地方の覇者でございます。特に吉川元春は、毛利元就の次男でありながら毛利氏、随一の武将でございます」
蘭丸は丁寧に説明した。
「なるほど、キキ! われを毛利の元へ連れてまいれ!」
信長は目をキラキラさせている。
「は!」
秀吉は内心不安で一杯であった。このまま、信長と一緒に行けば、自らの勝手な行動が確実に信長に知られる。しかし今下手なことを言えば、この場で殺される可能性もある。
「出発は明日じゃ、今日は宴会だ! キキもいつまでもそのようにへこんでないで、さっきのようにサルの真似でもせんか」
信長は上機嫌である。
「キキ。キキキキキ」
秀吉は必死に道化を演じた。
その夜は魔王城をあげて遅くまで飲めや歌えの大宴会であった。秀吉はどんなに飲んでも酔えなかった。
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