羽柴秀吉
一人の男が首を長くして連絡を待っていた。備中高松城で水攻めの最中であった羽柴秀吉である。
「官兵衛、まだ連絡はこぬか?」
秀吉はいらいらしていた。
「すぐにでも都に上る準備は整えてあります。光秀の謀反の報が入り次第、京に向かう手はずです」
秀吉の重心、黒田官兵衛は落ち着いていた。
「殿、今そんな、そわそわしておられると、あらぬ疑いを招きますぞ! ここはどっしりと構えてくだされ」
「官兵衛、そうはいってもな・・・・」
その時、一人の武者が息を切らせてやってきた。
「おお。やっと来たようじゃ!」
秀吉はにやにやが止まらない。
「構わん、入れ」
官兵衛は武者を呼び寄せた。
「なにっ、殿! 明智光秀謀反! 上様を本能寺にて強襲とのよし!」
黒田官兵衛は立ち上がり大げさなほどに大きな声で読み上げた。
「なに! それは一大事だ! すぐさま今日に向かい上様の仇を討たねば!」
秀吉は芝居がかった口調でにたにたしている。
「殿、まだ上様が討たれたとは書かれておりませぬ・・・・」
官兵衛は秀吉に小声でささやいた。
「おお、そうであった」
秀吉は少し慌てて、冷静になった。
そのとき、新たな武者が知らせを持ってきた。
「な?なんと!」
官兵衛は知らせを見て、明らかに動揺した。
「どうしたというのだ」
秀吉は官兵衛から知らせをはぎ取って自らの目で読んだ。
「な、何! どういうことだ」
「上様が・・・・」
そこには、信長が謀反人明智光秀を討ち果たし二条城に入場したとあった。
「官兵衛、光秀の奴は何をしておったのだ! これでは毛利との戦をやめて京に戻るわけにはいかんではないか!」
秀吉は動揺して、あたりをぐるぐると歩き回っている。
「殿、ここは一度上様のところに行かれた方が! 毛利のことは私にお任せください」
官兵衛はいまだに平常心を取り戻せない秀吉を無理やり籠に乗せ、数人の兵とともに今日に向かわせた。
「官兵衛様!」
秀吉がいなく立った後、一人の男が官兵衛の前に現れた。
「明智と上様に何があったのか、つぶさに調べ上げるのだ」
官兵衛は冷静に指示を出すと、その男はすぐに、その場を去った。
「後は毛利か!」
官兵衛は当初の予定通り毛利との和睦に動くのだった
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