第41話 よくやったで賞
広場では住民たちが忙しそうに働いていた。
畑では収穫作業が進み、家屋の修繕も続いている。
少し前に鉱山の町から移り住んできた者たちも、今ではすっかりこの土地に馴染んでいた。
ダミアンはその光景を見渡し、小さく呟く。
「増えてきたな」
リーシャは微笑む。
「そうね」
子供たちの笑い声が聞こえる。
住民たちの呼ぶ声も響いていた。
やることはまだ山ほどある。
リーシャはダミアンの背中を軽く押した。
「見てるだけじゃ終わらないわよ」
「そうだな」
ダミアンは頷く。
「いくか」
二人は住民たちのもとへ向かった。
◇ ◇ ◇
その日の夕食。
食堂には住民や仲間たちが集まり、賑やかな時間が流れていた。
そんな中。
ダミアンが突然立ち上がる。
「よし」
嫌な予感がした。
なぜなら、こういう時のダミアンは大抵ろくでもないことを言い出すからだ。
案の定だった。
「よくやったで賞を作る」
数秒の沈黙。
「は?」
レイが真っ先に声を上げた。
「なんだそれ?」
「また始まったか」
ゲンジが呆れたように肩をすくめる。
ミアが首を傾げた。
「よくやったで賞?」
ダミアンは真面目な顔で頷く。
「頑張った奴を褒める賞だ」
「そのまんまだな」
レイが即座に突っ込んだ。
「頑張った奴にはご褒美が必要だ」
ダミアンは続ける。
「だから作る」
「ご褒美って何?」
ミアが身を乗り出した。
ダミアンは少しだけ考える。
そして答えた。
「何か一つだけ言うことを聞く」
食堂が静まり返った。
「重くねぇか?」
レイが真顔になる。
「絶対揉めるやつだろ」
ゲンジも眉をひそめた。
ミアは目を丸くした。
「えっ、すごくない?」
「そうか?」
「だって何でもお願いできるんでしょ?」
「一つだけな」
「それでもすごい!」
ミアは楽しそうに笑った。
「だから駄目なんだよ」
レイが頭を抱える。
食堂に笑い声が広がった。
◇ ◇ ◇
宴も進み、食堂のあちこちで談笑の輪ができていた。
レイのもとへ一人の少年が駆け寄ってくる。
「レイ兄ちゃん!」
ユウだった。
ユウは鉱山の町でダミアンたちに助けを求めた男の息子だ。
町の解放後、母親と共にホワイトファルコンへ移り住み、今では共同体の一員として暮らしている。
特にレイによく懐いていた。
「なんだ?」
「みんな楽しそう!」
ユウは満面の笑みを浮かべている。
レイは苦笑した。
「お前も楽しんでるだろ」
「うん!」
迷いのない返事だった。
◇ ◇ ◇
宴が終わりに近づく。
片付けを手伝いながら、ユウは広場を見回した。
「ここ好き!」
その言葉にレイは少しだけ目を細める。
「そうか」
「うん!」
ユウは何度も頷く。
そして少し不安そうな顔になる。
「ずっといていい?」
レイは迷わず答えた。
「当たり前だろ」
ユウの顔がぱっと明るくなった。
「ほんと!?」
「ああ」
「やった!」
ユウは嬉しそうに駆け出していく。
レイはその背中を見ながら小さく笑った。
◇ ◇ ◇
だが。
平和な時間は長くは続かなかった。
しばらくして。
広場の方から慌ただしい声が上がる。
誰かが叫んだ。
「ユウがいない!」
その一言で空気が変わった。
レイの表情が凍りつく。
笑い声は消え、食堂に緊張が走る。
そしてホワイトファルコンは、少年の捜索へと動き出すのだった。




