↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
22/50

第22話 千人斬りの用心棒

街道沿いの小さな酒場。


旅人たちが酒を飲んでいた。


しかし、一つだけ誰も近付かない席がある。


窓際。一人の男。


黒髪。鋭い目。腰には一本の刀。


無言で酒だけを飲んでいる。


誰も話しかけない。誰も目を合わせない。


皆、あの男を知っているからだ。


酒場の扉が開く。


子爵家の使者だった。


使者は迷わず窓際へ向かう。


「探しました」


男は顔も上げない。


「そうか」


「ラングレー子爵がお呼びです」


「断る」


即答だった。


使者の顔が青くなる。


「今回は特別です。報酬も出ると」


男の手が、少しだけ止まった。


◇ ◇ ◇


翌日。


領都。ラングレー子爵邸。


執務室には、失われた鉱山と止まった工房の報告書が積まれている。


扉が開く。


「連れて参りました」


ゆっくりと男が入ってくる。


刀。黒髪。無言。


子爵は咳払いした。


「仕事だ」


「報酬は」


やはり、それからだった。


「払う」


男は頷く。


「内容は」


子爵は書類を投げる。


男は受け取らない。書類は床に落ちた。


子爵の額に青筋が浮くが、我慢した。


「ホワイトファルコン」


男が初めて反応する。


「聞かない名前だ」


「最近現れた連中だ。私の鉱山を潰し、呪い子どもを逃がした」


男は黙って聞いている。


「潰せ」


短い命令。


男はしばらく黙り、やがて尋ねた。


「人数は」


「五、六人らしい」


男の眉が僅かに動く。


「少ない」


「だからお前を呼んだ」


男は初めて書類を拾った。


鉱山崩壊。工房停止。呪い子大量逃亡。五人程度の集団。


「本当にやったのか」


「何?」


「五人で」


子爵は眉をひそめる。


「だから調べていると言っている!」


「なるほど」


男は書類を閉じた。


「引き受けるな?」


男は少し考える。


「まだ受けていない」


子爵の眉が動く。


「何?」


「見てから決める」


「命令だ。潰せ」


男は初めて子爵を見た。


「俺は兵士じゃない」


静かな声に、部屋の空気が変わる。


「依頼なら受ける。命令なら帰る」


子爵の顔が歪む。


しかし何も言えない。


目の前の男が、本当に化け物だからだ。


◇ ◇ ◇


男は部屋を出る。


使者が小さく呟いた。


「今回は誰と戦うんです」


「知らん」


男は少しだけ空を見上げる。


「五人で鉱山を落としたなら、面白いかもしれん」


夕日の中、刀を揺らして歩き去る。


千人斬りの用心棒。


ゲンジ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。