第11話 行ってこい
嵐が過ぎた翌朝。
村では倒れた柵や崩れた小屋の後片付けが始まっていた。
レイも足を引きずりながら木材を担いでいる。
「足」
ダミアンだった。
「平気だ」
「嘘だな。歩き方がおかしい」
「関係ない」
「ある。座れ」
「嫌だ」
同じやり取りを繰り返した後、ダミアンは近くの木箱へ座った。
「じゃあ俺が座る」
「意味が分からない」
そこへディダが来た。
「レイ、見せて」
「嫌だ」
「見せて」
「嫌だ」
「じゃあ村長に言う」
レイの顔が固まる。
「卑怯だぞ」
「知ってる」
結局、レイは診療小屋へ連れていかれた。
「腫れてる」
「大したことない」
「大したことある」
ディダが薬草をすり潰し、足首へ包帯を巻く。
「今日は重いものを持たないこと」
「嫌だ」
「持ったら怒る」
治療が終わると、ダミアンも一言だけ告げた。
「今日は重い物を持つな」
「命令か」
「お願いだ」
命令なら反発できる。お願いと言われると困る。
ダミアンはそれ以上言わず、仕事へ戻った。
◇ ◇ ◇
夕方、村長がレイとディダを呼んだ。
「外を見てこい」
「嫌だ」
「お前はこの村の未来になる」
「なら残る」
「だから行け。外を知らぬ者に村は導けん」
村長は続けた。
「憎むのは構わん。疑うのも構わん。だが見もせず決めつけるな」
レイは拳を握る。
「気に入らなかったら帰る」
「ああ」
「全部嘘だったら帰る」
「ああ」
「騙されたら帰る」
村長は笑った。
「帰る場所はここにある」
追い出されるのではない。信じられているから送り出される。
レイは何も言えなかった。
◇ ◇ ◇
「私も行くよ」
ディダが言った。
「なんでだ」
「もっと多くの人を助けたいから。それに、ホワイトファルコンを見てみたい」
「変な場所だぞ」
「知ってる。だから見てみたいんだ」
翌朝、村人たちが見送りに集まった。
「お前は残れよ」
レイが言う。
「嫌だ」
「なんでだ」
「レイ一人で外に出したら心配だから」
「余計なお世話だ」
「知ってる」
四人は村を出た。
レイは一度だけ振り返る。
故郷。生まれ育った場所。そして帰る場所。
今度は少しだけ、外の世界を見てみようと思った。




