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2人の贖罪-世界+ ~命《いきる》を選んだその先は~  作者: 【表現者のツボミ】/ようかの夜
第2章 求める者と阻む者

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舞台に立つ者、立たされる者






 移動した先は、さきほどの会議室からは少し離れた、地下にある巨大な石造りの空間だった。


 天井が高い。

 天然の大空洞に、あとから人工の床や壁を組み込んだような。


 そんな場所だ。


 地下とは思えないほど広く、頭上には暗い天井が遠くに見える。

 壁も床も石でできていて、ところどころに細かな線が走っていた。


 よく見ると、それはただの装飾ではない。

 壁面を這うように刻まれた紋様の一部が、呼吸でもしているみたいに淡く光っている。




「タブン、破損防止系の命式術だろうナ」




 ルルルが軽く見上げながらそう言った。



「ここなら多少暴れても、この場所ごと崩れることはないってところカ」

「……だからこの場所になったのね」



 空間の中央には、ほとんど何もない広い石床が広がっている。


 決闘場、というには殺風景だ。

 周りを大きな観客席が囲っているわけでもない。飾りもない。

 けれど、魔法や剣を使って戦う舞台としては、申し分ない環境。


 いかにもな闘技場ではないが、戦うために整えられた広間。


 そんな印象。



「別に見せもんじゃないんだけどな……」



 壁際の少し離れた場所には、見届け人として残った派閥の面々がいる。


 派閥ダステン。

 派閥リッジ。 

 派閥コレット。


 「第三座」と「第四座」の席に座っていた派閥はすでに帰っており、この場に残ったのは彼らだけだ。


 観客席というほど立派なものはない。

 ただ、決闘の場から少し隔てられた一角があり、彼らはそこから距離を取ってこちらを見ていた。



 決闘の舞台となるその場の中央に立つのは、計七人。


 派閥ルピナスから、ルピナス、ルルル、オレ。

 派閥ブラドリーナから、ブラドリーナ、オルディアン、クリュゼル。

 そして、即席でこの異議決闘の開始を告げる役を引き受けたらしいダステン。



 形式としては、一対一の試合を順番に行うものではない。


 三人対三人。

 つまり、双方全員が同時に決闘の場へ出る。


 同じ人数での勝負ということは、必然的に一人につき一人を相手しないといけない流れになるだろう。

 まずそれだけで、胃が痛くなった。


 ブラドリーナ、オルディアン、クリュゼル。


 誰がオレの相手になったとしても、どう考えても勝てる気がしないのだから。




「死人みたいな顔してるナ」

「ん……平気でいれる方がおかしいよ、こんな状況」




 オレは小声で落とす。



「正直、今すぐ帰りたい……オレ今日殺されるんじゃないかな」

「ブァハッ! 大袈裟ダナ、大丈夫ダッテ! ……なんて軽はずみに言うのも違うのかもダケド」



 ルルルはちらりと、派閥ブラドリーナの方を見る。



「でも、オメェは過度に周りを大きく見すぎダゾ」

「あんな明らかに自分より大物たちを前にして、恐れるなって方が無理あるよ」

「その言い分も理解はできるケド――」



 ルルルは少し乱暴に肩を組むように、オレの首元へ腕を回してきた。



「アイツらダッテ、みんなただの“人間”ダ」

「……ただの?」

「初対面だと特にサ。

 相手がとんでもねぇ凄い奴なんじゃないか! トカ、化け物みたいな存在なんじゃないか! トカ、勝手に実物よりデカく見積もっちまうことがあるケドサ」



 ルルルはブラドリーナたちのほうを見たまま、少しだけ目を細める。

 ……特に、オルディアンの方へ一瞬視線を向けた気がした。


 そこに宿っていたのは敵意などではなく、もっと柔らかい感情だったと思う。



「でも実際は、みんな、ただの人間ダ。

 人間はみーんな弱い。弱い一面を、誰だっても持ってるもんダカラナ」



 そう言い切って、オレの背中をぽんっと叩いた。



「だから、そんなに恐れる必要はネエヨ」

「……誰しも弱い、か」



 本当にそうなんだろうか。

 そう思う気持ちもある。


 一方で、どこか納得させられる部分もあった。


 そんなルルルの言葉だった。


 オレは勝手に相手の虚像を作り上げて、それに怯えていただけなのかもしれない。

 それが分かったからといって、何かが解決するわけではない。



 それでも、少しだけ呼吸は楽になった気がした。




「思い込みって怖いな……」




 そんなオレたちのやり取りの横で、ルピナスは静かだった。


 いつものような軽い調子がない。

 視線はずっとブラドリーナへ向いている。


 オレと同じように、相手を恐れている、というわけではないだろう。



 ――『戦いたくない』



 言葉にしなくても分かるくらい、その感情が横顔に出ていた。



「ルピ―…ルピナス」



 声をかけると、彼女は視線を向けないまま、一度だけ強く瞬きをした。



「大丈夫……」



 短くそう返ってくる。



「……もう、どうしようもないのかな」



 その言い方が、少しだけ痛かった。


 オレは、オルディアンが告発した内容――ブラドリーナを襲撃するなんて計画は、本当に立てていない。

 そんな覚えは一ミリもない。

 本当だ。言いがかりもいいところだ。


 けれど、今こうして派閥ルピナスと派閥ブラドリーナが対立してしまっているのは、オレ絡みで生じたトラブルが原因。


 それは事実だ。


 やっていないものはやっていない。

 だから謝るのも変な話だ。

 それでも、胸のどこかで申し訳なさが消えない。


 ルピナスとルルルは、オレを純粋に信じてくれている。

 ブラドリーナの特者能力によって、オルディアンの発言が“彼の記憶上では真実”だと示された後でも、だ。


 それが素直に嬉しい。

 けれど、だからこそ痛い。



 信じてくれる彼女たちを、巻き込んでしまっていることが。






いつもお読みいただきありがとうございます! ദ്ദി ˃ ᵕ ˂) ́-

お待たせいたしました、ここから、第2章後半スタートです!


前半の最後では、思いもよらない疑いをかけられたアイトたち。

そしてここから、その対立はいよいよ本格的な展開へと進んでいきます。



改めて、ここまでお読みいただいた皆さま、本当にありがとうございます!


今後も続きを追ってみたいと思っていただけましたら、評価・ブックマークなどで応援していただけるととっても嬉しいです! 励みになります!


それでは、第2章後半~も引き続きよろしくお願いいたします! (*˘︶˘*).。.: *♡



【平日は18時過ぎ、休日は17時過ぎの毎日投稿を予定しています!】

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