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2人の贖罪-世界+ ~命《いきる》を選んだその先は~  作者: 【表現者の蕾】/ようかの夜
第2章

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席がある者たち




「――では、続いて追求者同盟の詳細について説明する。

 両派閥 には、これを理解し、同意したうえで加入してもらうことになる。特によく聞いておいてほしい」



 ここからは制度の説明か。

 オレも気になっていた点だ。よく聞いておこう。


 この同盟の序列、それはどう決まっているのか。 


 たしかルピナスが現在『第五座』だと言っていた。

 なら、その上下は何を基準に決められているんだ。




「――最初に、席次についての説明しよう。

 数字を持つ席は『第一座』から『第六座』まで与えられている。それ以下は“無席”という扱いだ」




 無席。

 つまり第六座に届かないすべての派閥は、そこに含まれる。


 今日この会議に呼ばれているのは席を持つ派閥だけなので、無席は今日この場にはいない。



「そして、もし世改の書が発見された場合、第一座に優先的な所有権が認められることになっている」



 現時点では、ブラドリーナがそれに該当する。

 もし今、世改の書が発見されれば、ブラドリーナがその所有者となる。ということだ。


 つまりこの同盟に加入している追求者たちは、書を探すだけでは足りない。

 同時に、この第一座の席の奪い合いにも勝たなければ、結局『世改の書』には手が届かない、という構造だ。



 まだ詳しい説明はこれからだろうが、おそらく席次はこの同盟への貢献の度合いで決まっていく。


 そんなところだろうとオレは見ている。


 少し違うかもしれないが、会社の出世とかに近い感覚だろうか。

 表面上は仲間だという言葉で覆われているが、本質的にはそんな純粋な関係ではない。



「席次の査定基準についてだが――もちろん、単純な腕っぷしの比較で格付けられているわけではない」



 ブラドリーナは指を3本立てる。



「評価基準は大きく三つ。

 情報提供、実行力、そして戦力だ。

 この項目に則って各派閥を評価し、その積み上げた評価によって席次が決まる」



 情報提供、実行力、戦力。


 やはりか。

 この三つの指標で、その派閥がどれだけ同盟に貢献しているか――ひいてはどれだけ価値を出しているかを測っていると見て、間違いなさそうだ。



「順番に説明していこう。まず【情報提供】だ。

 情報提供とは、そのまま新規情報の共有のことだ。

 ただし量だけではなく、質も見る。

 未検証・仮説・検証済み・確定情報――そういった段階ごとに、提供してもらった情報の確かさも評価している。

 “新規性”と“信憑性”。それが大事だとだけ覚えてくれればいい」



 新規性と信憑性。

 つまり、適当な情報をばら撒いても意味はない。


 そこでリッジが手を挙げた。



「ひとついいですか。その評価は、誰が行っているんですか?

 第一座であるブラドリーナさんご本人が?」

「いや」



 ブラドリーナは首を横に振る



「細かい仕様等の説明は省くが、査定そのものは命式術によって行われている。

 感情や私情が入り込まぬよう、なるべく公平に評価できるようにな」



 なるほど。

 命式術で査定までやっているのか。


 思っていた以上に、この同盟は“仕組み”で動いている。



 個人的な推察だが、今ブラドリーナさんが第一座の席を獲得できているのは、この“情報提供”の観点からの評価が一番大きいのではないだろうか。


 恩寵者である彼女が持つ特者能力――『追憶視』

 人の記憶を覗くことができるその力は、情報収集能力が段違いだろう。



「そして次に【実行力】。

 これは危険地帯への挑戦や踏破、現地での調査、書の手掛かりに繋がる行動。

 簡単に言えば、 “実際に動いたかどうか”だ」



 リスクを負った行動そのものが評価対象、か。



「最後に【戦力】」



 ここで一瞬、間が置かれる。



「戦力は、直接行動しなくとも評価対象となる。

 書探しは危険と隣り合わせな場面も多い。危険や妨害を排しうる力を持つ派閥、そこに所属する人物が同盟に加わっていること自体、同盟の全体の利益となるためだ。



 「たとえば」とブラドリーナは続ける。



「特別指定妙獣のような、書を探すうえでも大きく害となりうる存在を排除できる力、それは結果として同盟全体としても書探しがやりやすくなる。

 そんな理屈だ。

 もちろん、評価の比重としては一番低く定められているが」



 なるほど。

 たしかに筋は通っている。


 村で遭遇した『三貌花』とか呼ばれていた大型妙獣。

 ああいった存在が世界にまだいるのだとしたら、強いやつがいるってだけでも意味はある。


 そのおかげで、本来なら近づくことすら難しい場所にも踏み込めるようになる――そんなことも十分あり得るだろう。




「――以上だ。

 ここまでで何か質問があれば受け付けよう」



 再びリッジが挙手する。



「ではもう一つ。

 この同盟に所属するだけで、何もせず情報だけ得るような奴はどうしてるんですか?」

「ただ乗りの対策の話だな」



 リッジは頷く。



「それはこれから話す内容の話に含まれている。

 運営上の取り決めの話だ」



 ブラドリーナは話を次の区分へ移す。



「――同盟に加わるだけ加わって、一定期間、成果や情報提供、何も動いていない派閥は……降格、あるいは除名の対象となる」

「なるほど。

 ちゃんと対策はしているんですね」

「その通りだ」



 分かりやすく納得した顔をするリッジ。



「もっとも、加入時点でこうして評議を通す。

 不適格な者を最初から入れないことも重要視しているがな」



 ブラドリーナの能力は、こういう新規加入者の品定めの時にも使えそうだ。


 ……つくづく便利な能力だ。

 この“世改の書の追求”という活動と、とても相性がいい。



「無論、そこまで厳しく審議するつもりはない。

 だが、最低限の信用が担保されなければ、同盟は成り立たないからな」



 そこで、今度はコレットが恐る恐る手を挙げた。



「あの……得た情報とかの共有、とかって……どうやるんでしょうか?

 こうやって、集まるん……ですか?」



 今度はコレットから質問が投げられた。

 声はおずおずとしていて、勇気を振り絞っての問いだと伝わってくる。



「いい質問だな。

 同盟への加入が決まったら説明をしようと思っていたのだが……そうだな、先に説明してしまっても構わないだろう」



 ブラドリーナは頷き、小さな帳面を取り出した。



「得た情報等の共有だが、この『共同記録帳』を使う。

 これは各派閥に一つずつ渡している」



 それを少し開きながら、説明を続ける。



「ここへ記した内容は、他の派閥が持つ記録帳にも反映される。

 なので、得た情報等は、随時ここへ記入してもらう形となる」



 クラウドで同期しているメモ、のような感覚だろう。

 とても便利な代物だ。


 これも魔品なのだろうか。



「じゃあ、情報共有のためだけにこうしてわざわざ集まる必要はないってことですね」

「その通りだ。

 ちなみにこれは恩寵者のみ使用可能で、誰が記入したかの記録も残るようになっている」

「へー」

「さらに生体連動型でもある。

 所持者が同盟を抜けたり死んだりすれば、その記録帳も消える。情報漏洩防止のためだ」



 なかなか徹底している。



「なお、世改の書が万一発見された場合、各派閥の代表者へ通知が行く仕組みになっている。

 その点については、過度に心配する必要はないことを伝えておこう」



 つまるところ、もし誰かが書を見つけたとしても、それを隠してこっそり自分のものにすることはできない、というわけだ。



「以上が、同盟の基本構造だ。

 なにか確認したいことがあれば、またいつでも改めて聞いてくれて構わない」



 ひとまず締めに入るようだ。



「先も述べた通り、両派閥はこれを理解したうえで加入してもらう。

 取り消すなら、今の段階で遠慮なく言ってほしい。それでこちらが責め立てることはない」



 リッジがすぐに肩をすくめた。



「いや、大丈夫ですよ。ルールは守りますぜ」



 コレットも慌てて頷く。



「は、はい……! わたしも、大丈夫です! 

 よろしくお願いします……!」

「了解した。

 ならば、審議を無事通れば、こちらこそよろしく頼む」



 ブラドリーナは、部屋全体――参席する追求者全員へぐるっと視線を回す。


 一部眠りこけている者もいたが、ブラドリーナは特に気にする様子もなく、淡々と締めくくった。




「では、審議の時間を設ける。

 各派閥は判断の準備をしておいてほしい」




 そこで評議はいったん区切りがつき、ひと息つく空気が流れる。


 そう安心しかけたとき。



 不意に、ここまでずっと黙っていた人物の声が割り込んだ――。






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