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2人の贖罪-世界+ ~命《いきる》を選んだその先は~  作者: 【表現者の蕾】/ようかの夜
第2章

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増長もほどほどに

 




 四芒星の結晶に触れ、意識を向ける。

 そして、昨日見せてもらった魔法の感覚を思い出す。


 別に彼らにそんな大ダメージを与えたいわけじゃないので、ちょっと軽くイタズラするくらいの魔法でいい。



「……なら、あれにするか」



 ルピナスに見せてもらった、光の縄のような魔法。

 まずは、あれを使ってみる。


 標的は、まだ状況を飲み込めていない、ほっそりとした体つきの男。




「オマージュ……!」




 詠唱というわけではない。

 ただ詠唱のような感覚で、短く口に出すと、魔法の発動がしやすくなる……気がする。



 次の瞬間、男の足元に細い光が走った。


 淡い光の縄。

 それはするすると伸びて、男の足首へ巻きついた。




「ぅわっ!?」




 男は慌てて踏み出しかけた足を取られて、その場で無様に転んだ。



「てめぇ…っ!」

「は!? だから俺じゃねぇって」


「じゃあお前らのどっちかか?」

「そんなわけねぇだろ!」

「そも、俺たち魔法なんて使えねーだろ」



 バカみたいに擦り付け合う小悪党たち。


 とうとう仲間割れすら起きそうな雰囲気になってきた。




「オー、やるジャン」

「できた……!」




 とりあえず、魔法はうまくいった。

 ほんの少し、胸が高鳴る。


 欲を言えば、もう少し上の位置で縛るイメージだったが、細かい操作はやはり慣れも必要か。



「ヨシ、じゃあ残りもカタスゾ」

「えー、またオレがやるの?」

「ヤッチャエ!」

「しょうがないなぁ……」



 乗り気じゃない感を醸し出しつつも、オレは内心調子づいていた。

 その勢いのまま、残りの2人へと狙いを定める。


 今度は、同じくルピナスが使っていた、瞬間落とし穴の魔法だ。


 立っている場所の足元をぶち抜いて、その下に水を生成するやつ。

 2つの魔法の組み合わせで。



「オマージュ…」



 この模倣の力も、試すうちにだいぶ扱いの感覚が掴めてきた感じがする。


 さっきと同じ要領、――2つ連続で創造。



 残り2人が並んで立っていた足元の石畳が、すっぽりと抜け落ちた。




「――!?」

「ふあ!?」




 間抜けな声と共に、男たちは空を掴むみたいに手を振る。

 だが、当然そんなことができるはずもなく、そのまま落ちる。


 じゃぼん! と派手に地上まで水が跳ねた。



「つめってえええ!」



 遅れて響く情けない悲鳴。


 オレもルルルも、笑いが堪えきれない。



「っ…ふふっ……」

「ブァハッ……ハハッ!」



 さっきまで威圧していた連中が、一人は脇腹を押さえてうずくまり、一人は転び、もう二人は穴に落ちて水浸し。


 絵面があまりにもひどい。

 締まりがないどころの話じゃない。――ダサすぎる。



「ちょっとやりすぎたかもなぁ」



 スカッと気持ちよかったが、少しだけ罪悪感も湧いてきたので、心の中で手を合わせておいた。




「な、なんなんだよ一体…」




 輩たちに押されていた若者も、この奇妙な状況に若干引いている。


 それを見て、ルルルは前へ出て行った。




「――ハイハイ、そのへんにしとけよ~お馬鹿ドモ」




 騒ぎの中にいる3人が、一斉にルルルの方を振り向く。



「なんだてめぇ」



 足を縛られたまま、威嚇するように吠える細男。


 だがそんな状態で必死に吠えたところで、ルルルは当然気にも留めていない。



「なんだじゃネェヨ。みっともねぇなオメェ」

「んだとこらぁ!?」

「なんでその状態でそんな強気に出られるんダヨ……」



 言い合いをしてる間に、オレもさりげなく物陰から出る。

 どうかヘイトがオレに向きませんように。


 連中の反応を見る限り、さっきの魔法とこちらが結びついている感じはなさそうだった。



「大丈夫だった?」



 オレが若者に声をかけると、相手は鼻息荒く答えた。



「大丈夫なわけあるかよ!

 こいつら、あんなゴミに対して金払えだのなんだの――」

「……」



 オレに強く当たってこないでよ……。



「何があったの?」

「糞どもが糞を売りつけて来たんだよ」


「――話聞いたうえで買うっつったのはてめぇだろうが!」



 光の縄で足を縛られたままの男が、弁明するように食い下がってきた。



「落ち着けって馬鹿ドモ! 順番に話してミナ。

 はい、まずコッチから」



 そこで話をちゃんと聞いていくと、事情は微妙だった――。


 若者の方は、 “誰でも絶対に儲かる方法”みたいな胡散臭い情報商材のようなものに、自分から食いついていたらしい。

 で、いざ購入してみたら、曖昧な内容をそれっぽく言った文が並べられているだけの、中身のないものだった。


 それで、金を払う前に逃げようとしたと。



 小悪党側はもちろんまともな売り手ではなく、半分詐欺みたいなものを吹っかけていた。


 だが、首を突っ込んだのは若者の方で、その“儲かる情報”とやらを独り占めしようと、押しかけて売ってくれと迫ったらしい。




「そもそもそんなもの買おうとしないほうがいいよ……あなたも」




 思わず本音が漏れた。



「ソウダナ……どっちもどっちだなコレハ」



 ルルルも腕を組み、うんうんと頷く。



「いや、でもこいつらの方が悪いだろ! こんな糞を売りつけてくんだからさ」

「あなたが欲に目が眩んだからってのも……」

「あ!? 文句あんのか?」



 なんでオレに当たってくるんだよ。



「文句っていうか……」

「まあなんでもいいからさ、さっさとこいつら痛めつけてくれよ。

 俺イライラがおさま――」


「――言い訳を積む暇あるナラ、オメェも反省をひとつ積んどけヤ――!」



 すぱん! と乾いた音が路地に響く。


 ルルルの手のひらが、容赦なく男の頭を叩いていたのだった。




「いっ……!?」




 若者は、こいつもこいつで間の抜けた声を上げた。


 さっきまでの調子の良さはどこへやら、完全に出鼻を折られていた。

 そんな拍子抜けするような一撃。



 でも、そんなことを言っている場合ではない。




「あ」



「あ」




 ルルルとオレの声が連なる。

 顔を見合わせる。



 ――次の瞬間、ゴォンと、空で鐘に似た音が鳴った。



 直後、ルルルの足元から淡い光が立ち上がる。


 これが命式術の反応、だろうか。




「――っ!? オーマイガー!? マザァファッカーアアアアアアア!」




 そんな叫びを残して、ルルルの姿が一瞬で消え去った。


 ちゃんと最後までは聞き取れなかったが、遠くからそんな声だけが、尾を引くように届いた気がするようなしないような……。




 ――静寂。




 その場にいた全員が固まる。



「……何やってんだよ」



 大きくため息をつきながら、オレは額を押さえた。







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