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2人の贖罪-世界+ ~命《いきる》を選んだその先は~  作者: 【表現者の蕾】/ようかの夜
第2章

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セントラディア中心都-2

 



 初めて見る街の景色と、あふれるような賑わいを堪能している中で、少々気になるものを発見した。



「……ん」



 金属製の枠に、透明な板のようなもので作られた道具。

 持ち手が一ヶ所ついていて、大きさは子供が両手で抱えられるくらい。



「ルルル、あれなに?」

「アレは急速加熱用の魔品ダナ」



 どこか電化製品じみた響きが返ってきた。



「……そもそもだけど、その”魔品”ってなに」

「魔品ってのは、誰でも魔法みたいな、常理を外れた力を扱える品のことダナ」



 ルルルが、店先の商品を指先で示しながら続ける。



「命力を流し込んで、その機能を使う。そういう仕組みのものが多いナ」

「魔道具的なやつか……」



 なるほど。便利は便利だ。

 まさにオレのような人間のための代物。


 ただ、自分の命力も使う必要があるというのは、少しだけ不便な気もする。


 ……いや、普段から魔法や身技・武技を使わない人間なら、日常生活で命力を消耗する場面なんてほとんどなさそうだ。

 そう考えると、別にそこまで大きな欠点というわけでもないのか?



「追求者らの界隈にいると、さも当然のように魔法を使ってくる連中ばっかで感覚狂うケド、全世界で見たらそういうの使える人の方が全然少数派ダカラナ」



 ルルルが肩をすくめながら言う。



「そりゃまあ…需要はありそうだね」

「そういうコトダナ」



 そんなふうに店先であれこれ話していると、




「――よぉ兄ちゃんたち、どれか買ってくかい?」




 店の奥から、不意に声をかけられた。


 顔を上げると、店主らしき男がこちらを見ている。



「あーすみません、ちょっと気になって見てただけで」



 オレたちがずっと商品を見ていたので、話しかけてきたのだろう。


 なんか買わないと気まずい感じになるだろうか……?



「そこに指を当ててみ」

「……?」



 そう言いながら、店主は魔品の金属枠の下部を指差した。


 言われた通り、おそるおそるその箇所に指先を当ててみる。

 すると、すぐに反応があった。



「……っ!」



 指先から、体の内側にあった無機質な何かが、細く吸い出されていくような感覚。

 魔法を使ったときと同じような感覚だ。


 これが命力を使う感覚なのだろう。


 しかし、体感ではあるが、消費されてる量は魔法の比ではない。

 ほんのわずかで、意識しなければそこまで気にならないくらいの減り方、な気がする。


 その感覚と同時に、魔品の方でも面白い変化が起きた。



「え、すごっ!」



 透明な板の下で、火種のような小さな光が灯る。

 次の瞬間、それは輪を描くような炎のようなものへと変わり、板のまわりをぐるりと巡り始めた。


 炎ともつかない何かは、暴れることなく、決められた軌道をなぞるように静かに回る。

 そのたびに、金属枠がみるみる熱を帯びていくのを感じた。



「ほんとだ! 暖かくなった……」

「そこの板に好きな食い物乗せれば、簡単に、楽に火を通せるって代物だ」 

「へーそういう……。なんか電子レンジみたいだな」



 もちろん電子レンジとは異なるが、発想は限りなくそれに近いと思う。



「人気商品だから買うなら今のうちだぜ」



 店主がにやりと笑って、売り込みをかけてきた。


 オレも曖昧に笑い返しつつ、隣のルルルを見る。



「命力注ぐっていっても、そんなに取られるわけじゃないんだね」

「さっきも言った通り、一般人向けの品ダシ。

 そんなんでゴッソリ持ってかれるようジャ、実用的じゃないダロ」



 それもそうか。


 魔法などとは無縁に市井で暮らしている人々の多くは、オレと同じで、命力の量だってそこまで多くないはず。

 ちょっと家電使うとか、ちょっと家事するくらいの程度のことで、命力を枯渇させてたら世話ないか。



 ……にしても、仕組みは違えど、こんな生活用便利アイテムまで存在しているとは。



「おもしろいね」

「ウチにはイラナイものデスヨ! 買いませんカラネ!」

「駄々こねてる子供みたいな扱いやめろ!」



 軽く手刀を入れてツッコミを入れようとしたが、ルルルはそれを片手でひょいと受け止めた。



「仲いいな、お二人さん。微笑ましいねぇ」


「「――良くないです!」」



 ぴったり重なった否定に、オレたちは思わず顔を見合わせる。

 なんだかそれがおかしくて、少し笑いあってしまった。



「とりあえず今は行くゾ。ワタシは腹が減った!」

「うん」



 店先には他にも、百均で並んでいそうな雰囲気の商品などもいくつか置かれていた。


 もちろん材質や細部は全然違う。

 けれど、 “こういうの便利だよね”という発想は、どれも近いものな気がした。


 なかなか面白いお店もあったもんだ。

 今度また、一人で見に来てもいいかもしれないな。




「すみません、また寄らせてもらいますね」

「おうよ!」




 ――――。




「ちなみに、ああいうのも命式術が使わたりして作られてるンヨ」

「そうなの!? 全然規模違くない?」



 ルルルはえっへん、と腕を組んで得意げに教えてくれた。

 



「街で機能させてる大規模のものと比べたら、そりゃ全然小さいケドネ」

「へー……」



 命式術という技術。


 魔法とはまた別の技術。

 ゲームや漫画でなんとなく触れてきたものとも、少し違う。


 この世界では、それが当たり前みたいに街のあちこちに溶け込んでいる。



 生活の中に、防衛の中に、都市の仕組みそのものの中に。



 この先の旅では、もっと思いもよらない形で使われているところを見るのかもしれない。


 そう思うと、胸の奥がじわじわと熱くなってくる。

 まだ知らないものが、いくらでもある。




 そんな話をしながら街をぶらぶらしていると、気づけば少し開けた場所に出ていた。



 広場だ――。



 人が集まり、それぞれ思い思いのことをしている。


 芸をしている者。

 声を張り上げて何かを訴えている者。

 座って食事をしている者。

 楽しそうに駄弁っている者。

 ただ見ている者。


 さっきの通りとは、また少し違う空気だ。

 買い物の途中に、一息つける場所になっているのだろう。



 その中で、ひときわ目をひく芸者がいた。


 真っ赤なスーツのような衣装に、白い仮面を被り、ピエロのように笑った表情のそれの下には、同じく白く塗られた肌。

 そして体には、無数の鈴。


 ――だが、音が一切鳴っていない。

 動いているのに鳴っていない。


 パントマイムのような動きで、空中に“見えない壁”を作り出し、珍奇な動きを披露している。


 数メートルほど距離を取った場所で、数人の観客が、それを見てくすっと笑っている。




「あれ何やってるんだろう。ルル――」



 そう声をかけて横を見る。


 が、いなかった――。




「……あれ?」






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