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2人の贖罪-世界+ ~命《いきる》を選んだその先は~  作者: 【表現者の蕾】/ようかの夜
第2章

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これからの旅路





「ま、いろいろ教えてくれてありがとう。

 魔法のこととか諸々、なんとなく掴めた気がする」



 オレは順に三人を見渡した。



「恩寵とかの事情もあって、ルピーナはいざとなったとき一人の方が動きやすいってことね。おっけぇ」

「実力を惜しみなく発揮できるカラナ」

「そ。てなわけで、ルピナじゃなくこの2人にアイトくんの子守は任せるから。

 それでよろね!」

「子守って…まあ了解」



 小さく笑って返す。

 それで、このレクチャーの時間は一区切りついた。



 オレはふと少しだけ考える――。


 変な話だが、ルピナスのことがほんの少し気になった。


 強いし、誰よりも自由に動けて、誰よりも単独で戦える。

 ……だからこそ、ふと気を抜いた時、ぼっちになりやすい。


 そんなタイプな気がする。



 ……まあ、余計なお世話か。




「とりあえず今日はこんなところにしておきまっか」

「ですね」

「思ったより時間食っちマッタナ。早く帰ってメシダ!」



 ルピナスは息をつくように体を伸ばし、アエリスは優しく微笑み、ルルルは面倒くさそうに欠伸をする。

 三者三様の在り方で。


 この子たちと、オレはこれから旅をしていくんだ。



「旅に出るための基礎は、ひと通り叩き込んだよね。

 今日はこれで終わりぃ!」

「ありがとう、いろいろ知れたよ」



 気づけば、辺りはすっかり暗くなっていた。


 森の奥から、虫の音がかすかに響いてくる。



「帰るか」



 誰ともなくそう言って、オレたちは歩き出した。



「アイトくんさ、魔法のこととか特にそうだけどさ。

 深掘りしようと思えばいくらでもできるくらい奥深いから、気になったら学院とか通ってみるのも面白いかもよ」

「どこからでも通学できるようになってますので、旅をしながらでも通えると思いますよ」



 学院、か。

 前にも勧められたっけか。


 ……でも学校は嫌だなぁ。


 正直、あんなところにはもう行きたくないんだが。

 


「んーひとまずはいいかな。

 ちなみにだけど、命式術のこととかも学べるの? その学院で」

「――命式術のことなら、学校じゃなくてワタシに聞くベキダナ!」



 隣を歩いていたルルルが、オレの肩に手を置きながらでかい声で言った。



「そういえば…あの洞窟の試練のやつとか、どうやって作ったの? 

 夢みたいな世界に飛ばす仕掛け」

「アレはワタシじゃありまセーン。最初からあったものを利用させてもらってるだけダヨ」

「え、そうだったの…?」



 ルルルは、なぜか得意げに胸を張る



「ワタシが昔行ったどこかの洞窟の中で、たまたまあの構造物をミツケテ、その時ビビッときたんよネェ!

 『これは館の新しい防衛に使える』って!」

「じゃあ、ルルルもあの試練みたいなの受けたの?」

「モチロン。じゃないと出られないカラ」

「……」



 ということは、あの石台の近くにあった開封済みの宝箱らしきもの。

 あれを開けたのはルルルだったのか。



「悪者をワタシがあの石室に飛ばしテ、試練に強制的に突っ込ませる。突破できなきゃ戻ってこれない――。

 防衛としてなかなかいいダロウ?」



 悪びれもなく堂々と言い放った。



「鬼畜だな。……でもオレが飛ばされたの、あの石室から少しズレたところだったよ? あれだとワンチャン、試練受けずに済むんじゃない?」

「――え、ウソォ!?」



 またしても想定外の欠陥報告だったらしく、ルルルは露骨に焦った顔をした。



「座標の設定間違えたのカナ~……」



 部屋でも話したが、どうやらそれ以上に、まだまだ不完全なところが残っているらしい。



「場所ちゃんと把握してないの?」

「ダッテ~。ワタシがあの洞窟行ったの、結構昔の話だからナー」



 ……ん。



 ん?



「ちょっと待って。もしオレがあのまま飛ばされて帰ってこれなかったら、どうするつもりだったの??」


「エ、ソレハ…マア。トウゼン、タスケニイキマスヨ……」

「場所ちゃんと把握してないって言ったよね!?」

「大丈夫大丈夫……。わ、わかってるってー」



 わざとらしく誤魔化された。



「ウルセーー! 別に何かに襲われるわけじゃないんだから、文句イウナ!」

「襲われるわ! 実際、気持ち悪い妙獣に襲われかけたんだから!」

「靴から首生えたやつカ……?」

「そうそれ! …いやそうそれじゃねーよ! ほんとに危なかったんだから」

「アイツは別にそこまで恐ろしい妙獣ジャネーカラ」



 どう見ても十分恐ろしい見た目だったけどな。



「まじでダメダメじゃねーか…この似非(エセ)開発者が! 最初から作り直しだ!」

「うるせーよ! ドン草童子! 作り直しなんて嫌だ!!!」

「……へ? 今なんつった?」


「――でも、ルルル様が開発した命式術は本当にすごいんですよ」



 庇うように、アエリスが言葉を挟んだ。



「ウチの館にも防衛の命式術がすでに施されていますが、とても助かっています」

「侵入者があったときに知らせてくれる、みたいな警戒式のやつだよね。

 あれすごいよね……」

「一人でここまでのものを開発できるのは、控えめに言って鬼才です」

「普通は、一人で作るもんじゃないの?」



 少し引っかかったので、そう尋ねてみる。



「小規模なものならともく、規模が大きいものほど、複雑なものほど本来は複数人で共同開発するのが常ダナ」

「へー」



 命式術のことに詳しくはない。

 だがそれでも、ルルルはオレが想像していた以上に、とんでもないことをやっているらしい。


 思ってるより何倍もすごい人なのかもしれないな、この人。



「中心都市にあるのがまさにいい例なのですよ」



 アエリスが続ける。



「かなり大規模な命式術です。

 セントラディアの国法を犯した者を、街を囲んでる大水溝に落とすという命式術が施されています」

「え、怖すぎない?」

「全部の国法違反が対象ってわけじゃないケドナ。殺しとか暴力系とか。その辺の重罪だけだった気がスル」

「へ、へぇ~」



 それでも十分に怖いっちゃ怖いのだが。



「治安の面では分かりやすく強いですけどね。

 でも、そういう管理が息苦しいって感じる人も当然います。

 だから命式術の管理が濃い都市部から離れて、辺境の地で暮らしている人達たちもいるのですよ」

「ルピナたちも、その類だね」



 ルピナスが短く言った。


 なるほど。

 拠点が街中じゃなく、少し離れた場所にある理由も、それで腑に落ちた。



「ちょうど良いジャネーカ! ドン草童子、明日一緒に都市に行ってミルゾ!」

「その呼び方やめろ!」

「でもちょうどいいんじゃない? アイトくん新しい生活でいろいろ揃えないといけないでしょ? 買うものとか」

「た、たしかに」



 今話した命式術は怖い。

 だが、まあ犯罪でも犯さない限り大丈夫なはずだ。


 普通にその都市で暮らしている人も大勢いるわけだし、そこまで身構える必要もないだろう。



「じゃあ一緒に行こっか、ルルル」

「楽しんできてくださいね」


「――んじゃ!」



 ルピナスはぱん、と手を叩いて場を仕切るように言った。



「旅出発は1,2週間後くらいを目安に、各自準備よろ! 

 また行き先とか段取りとかは改めて伝えるから!」


「了解です!」

「おっけぇ」

「ほいほい」




 ひんやりとした空気が、肌を撫でる。


 こうしてオレたちはその日の活動を終え、静かな夜だけが、ゆっくりと広がっていった。






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