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2人の贖罪-世界+ ~命《いきる》を選んだその先は~  作者: 【表現者の蕾】/ようかの夜
第2章

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四芒星の功能-3




「できた…!」



 さっき挑戦したときはまるで駄目だったのに、今回は成功だ。



「え、え、使えるの!? 正直ダメかなって思ってたわ……」



 隣からそんな声が聞こえる。


 しかし、ルピナスが出したものよりも水魂の大きさは小さく、数も少ない。



「とりあえず、これどうにかしないといけないか…」



 浮かんだままの水魂をそのままにしておくわけにもいかないので、オレはそのまま前に撃ち出す。

 先ほどと同じように、アエリスが軽くそれをいなした。



「ちょ、ビックリしたんだけど……」

「でもルピーナが創成したやつと、完成度が全然違う気がしたけど」

「そりゃ当たり前よ。

 実力差もあるし、詠唱もしてないし」

「詠唱をすると威力が上がるの?」

「ざっくり言えばそう。その分、命力の消費量もガッツリ持ってかれるけど」



 なるほど。


 だから繰り返しオレに「詠唱はいらない」と言っていたのか。



「じゃあなんでルピーナはわざわざ詠唱つけたんよ。

 自分の腕前を見せびらしたかったとか?」

「それもあるけど……」

「あるんかい」

「でも一番は、今言った通り命力の問題かな。

 ルピナは余裕あるけど、アイトくんは魔法経験とかないでしょ? 

 多分命力の量少ないと思うから、アンタはなるべく節約したほうがいいでしょーて」

「なるほど……」


「――それにシテモ、なんでさっきは使えなかったのに使えるようになったんダロウナ?」



 オレとルピナスの会話に割って入ってきたのは、少し離れた位置からここまでの試行を眺めていたルルルだ。



「見た直後だとできた……? 単純に想像しやすくなったのかな」

「いや、想像しやすくなったからってすぐにできるわけじゃないと思う。

 さっきも言ったけど、得意不得意とかはあるだろうし。

 炎の魔法使えたばかりの人がいきなり水の魔法まで使えますって、ちょっと考えにくいけどなあー」

「シラツキ・アイト氏がとんでもない潜在能力をモッテタトカ!?」

 

「え…なになに。もしかしてオレ魔法士としての天稟(てんぴん)があったりする?」



 夢見た展開が、ついにきたのかもしれない。



「その可能性はないと思う」

「即否定かよ!」

「だって、今まで魔法に触れたこととかなかったんでしょ?」

「まぁ、そうだけど……」

「それか……その首飾りの力が、 “魔法を使えない人でも熟達者と同等程度に魔法を使えさせる”みたいな功能なのかもしれナイシ」

「あるならやっぱそっちだよね。属性も幅広く、アイトくんが別の系統の魔法まで使えるとは思えないもん、正直」



 オレが天才だったかもルートには、いまいち納得がいってなさそうなルピナス。


 悪意なく、オレの夢を幻想をへし折ってくる。



「だったらこの首飾り超強いじゃん。それならそれで別にいっか」

「魔法がもともと使えないシラツキ・アイト氏ダカラコソ、功能をフルで発揮して使えるヨナ~」

「あ、でもそれだと…… “見た後しか使えない”ってのが謎だよなぁ」

「うーん……」


「アァー!!! ワタシ、分かっちゃったかもシレナイ!」

「びっくりしたぁ」



 突然声をあげ出したルルル。



「自分が見た魔法を使えるようになる力! それがこの首飾りに秘められている力ナンダ!!!」



 謎が解けた興奮を隠しきれないのか、両手を頭上で合わせたルルルが、その場でクルクル回り出す。



「いきなり叫ぶな! ……でもそれは、ありそう」

「だとしたらもの凄い代物だけど、あり得ない話ではないのかも。

 ……それの元々の所有者のことも考えるなら、なおさら…」



 ぼそっと何かを呟いたルピナス。だが後半の方はよく聞き取れなかった。


 そしてしばらく悩んだ末、出た答えは。



「――分かった。じゃあ次、めっちゃ珍しい魔法を使う。

 ルピナが作った、ルピナ以外に使ってる人みたことない魔法」

「なんかすごそうだな……」

「そんな派手なのはやらないよ。

 けど魔法学の範疇じゃないし体系化もされてない。複雑に組み合わされた魔法」

「それもできたらもう絞れるナ」

「…学校で習う類のものではない。見ただけで再現できるわけがないはず」

「おっけぇ。試してみよう」


「――じゃあ、早速」



 そう言われたのと同時、足元を違和感がかすめた。



「え…? うわっ!」



 足首に文字通り光が走り、何かが絡みついた。

 糸のように細く、それでいて強靭な光の縄が、両足を一瞬で縛り上げる。


 それに気づいた瞬間――



「――!」



 足場が、消えた。


 地面が、音もなくぽっかりと口を開ける。

 支えを失った体は、そのまま真っ逆さまに落下した。




「……うわあああああ!!!」




 視界が反転したかと思えば、次の瞬間バシャンッ! と水面に叩きつけられた。


 冷たい衝撃が全身を襲うが、落差はそこまでなく、水が衝撃を和らげてくれたおかげで痛みはなかった。



「っ……はぁっ! ……びっくりしたぁ…」



 不意の出来事に、一瞬息が止まった。


 頭を水面から出しながら、荒く息を吐く。

 水もそこまで深くはないので助かった。


 ……というより、オレが怪我を負わないよう、ちゃんと調整されているように感じた。



「ブァハッハッハッハ!」

「アーヒャッヒャッヒャ!」



 地上から、遠慮のない笑い声が降ってくる。


 その笑い声で、オレはようやく状況を察した。――「してやれらた」と。

 あのイタズラコンビめ……。



「な、なんだよこの魔法ー! 地味だけどめっちゃうぜーな!!」


「自然魔法と水の魔法と光の魔法の合わせ技」

「それぞれを同時に発動……さすがルピナス先デスワ!」


「さすがじゃねーよ! 早くだせやい!」

「ほーい」




 ――――。




「おい」



 全身びしょ濡れのまま、オレは無事引き上げられた。

 水が服から滴り落ちる。



「びしょ濡れなんだけど……」

「怪我するといけないから」

「じゃなくて!

 そもそも落とす必要なかったよね!?!? あと足縛るやつも必要なかったよね!? 絶対!」



 濡れた衣服が肌に貼りつく感触が、気持ち悪い。



「ヤッパリドンくせぇな、オメェ!!!」

「だからオレのせいじゃねーだろ!」

「ごめんごめん、ちょっとやり過ぎたわ」



 ひとしきり笑った後、軽い調子で謝罪を入れられる。


 そうして表情をを少しだけ引き締め、



「――それで、どう? 今のはできそう?」

「ん……ちょっと待ってて」



 オレは目を閉じる。


 今やられたことを、そっくりそのまま頭の中に引き写す。


 脚を縛る光。

 立っている地面を落とし穴に。

 その中に水。



 そして、標的も決める――。




「ほいっ!」


「――ア? ブぅぁッアアアアア!!!」



 前触れもなく足元が消えたルルルは、間抜けな悲鳴を上げながらそのまま落下していった。




「やったなオメェェェェ!」




 穴の中から怒声が響く。

 オレは思わず吹き出した。



「ハハッ…アハハハハハッ!」



 いい気味だぜ。

 ルピナスとどっちにしようか迷ったが、転送の件もあったので今回はこっちだ。



「それにしても、マジか……」



 笑いとは対照的に、ルピナスの声は低くなっていた。



「できちゃうんだ」



 驚き。

 或いは、それ以上の何かか。



「しかも…複数の魔法をまるまる、どれも再現できてたね……」

「そう、みたい」



 その様子を見ていたであろう、アエリスもこちらへ駆け寄ってくる。



「状況はどうです……? もう終わったのですか?」

「うん、多分ね」

「いったいど――うわぁっ!?」



 ちょうどアエリスの足元から、ルルルが自力で這い上がってきた。



「マッタク……油断も隙もネェナア」

「ふふ、仕返しだよ」



 ニヤリと、オレはわざとらしくルルルに微笑みかけた。



「コノヤロオオオ……!」

「痛い痛い痛い」



 ぐりぐりと、握り拳で頭を押される。



「……それで」



 そんなふざけ合いはよそに、アエリスが静かに問う。



「その首飾りの力の正体は、判明したのですか?」



 指を立て、ルルルはどこか挑発的な笑みを浮かべる。


 まるで、ワタシが一番最初に気づいたんだぞ、とでも言いたげな顔。



「――確定シタナ」

「答えは…?」

「一番可能性が高い答えは……!」




「ズバリ。――『模倣』ダァ!」




 そう、自信満々に言い切った。




「まじ、か……」



 もしそうなら、この世界でも本当に“最強”クラスの力なんじゃないか! と一瞬胸が熱くなる。

 けれど同時に、そんな都合のいい話が本当にあるのかという疑念も込み上げていた――。






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