表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2人の贖罪-世界+ ~命《いきる》を選んだその先は~  作者: 【表現者の蕾】/ようかの夜
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/77

四芒星の功能-2

 



 オレは少し考える。


 規模は小さめで、魔法がある世界ならありそうな魔法。



「――よし」



 オレは再度、首飾りの結晶へ意識を向ける。


 そして思い描くのは、炎でできた剣。

 鋭く短い、まさに今アエリスが握っている剣と、似たような形状のもの。



 真っ直ぐ飛び、突き刺さる炎。



 そのイメージを、強く固める。


 しかし――





 …………。





 反応はない。




「……あれ?」




 もう一度やってみる。


 が、それでも何も起きない。

 炎のイメージはできているが、さっきのような引き出される感覚がこない。



「出ないね」



 それと同時に、体の内からなにかが抜け落ちるような、熱のない何かだけを吸い上げられていくような感覚。


 さっき魔法を使った時もあったが、その時よりもわずかに大きい気がする。



「炎で剣の形を象った魔法、みたいなのを想像してみたんだけど……もしかしてこんな魔法存在しなかったのかな?」

「――いや、あるよ。

 そんな感じの魔法、ルピナ使えるもん」



 あっさりと言い切るルピナス。



「ソレニ…… “そんな魔法が存在しないから使えない”ってのは、理屈としてはあり得ない気がするカラナア」

「それはどういう意味?」



 少しだけ面倒くさそうにしながら、ルルルは話し始める。



「魔法に“こんなものは存在しない”なんて枠組みはないッテコト。

 想像で創造するものデアル以上、理論上、可能性は人の数ダケアル。

 体系化され、一般化された魔法もたしかに多く存在はするケドオ、そんなのは全てジャナイ」

「ほ、ほへぇ……」

「本来、魔法とは各々の発想から思い描き、生み出されるもの。

 ダカラ! 『そんな魔法はない』という考え方自体が、そもそも間違っているのダヨ!」



 腕を組み、博士ぶった態度でそう説明するルルル。


 なんか話が学問的になってきて難しい。

 が、要は魔法の才さえあるなら、その人の発想と実力次第で、オリジナルの魔法も生み出していける、といった話だろう。


 既存の魔法をマスターして戦うもよし。

 自分に合った魔法を新しく創って、それで戦うもよし。


 それがこの世界における“魔法”というものの在り方なのだろう。



 ともあれ、 “この世に存在しない魔法だから使えなかった“という線は消えた。

 とすると、使える魔法と使えない魔法の違い。


 それは何なのだろうか。



 そのころ、ルピナスも同じように考え込んでおり、こめかみに手を当て小さく唸る。



「――とりあえずさ、炎魔法だから使えるってわけじゃなさそうだよね」

「特定の属性の魔法を使える、って功能ではナイカ……」



 しばらくの沈黙の後、「オッケェ」とルピナスは軽く手を叩き、



「次は、水の魔法を適当にやってみて! なんでもいいから」



 “なんでもいい”って言われても難しいんだってば!



「例えばどういうのがある? 言ってくれたやつをイメージしてみるよ」


「うーん、そうだね。簡易なものがいいから……。

 アクシアオルブっていう水の球をいくつかポンポン生み出して、それで攻撃する魔法があるから、それやってみよ」

「了解」

「あ、詠唱はなしでいいからね」



 オレはひとつ頷き、言われた通り水の魔法を思い描く。


 自分の周りに浮かぶ、丸い水の塊。

 あるいはそれを、いくつか飛ばすようなイメージも。





 …………。





 だが、これも反応しない。

 冷たさも重みも、何もこない。



「ごめん、ダメっぽい」

「ふーん……どうしたもんかなぁ」

「そもそも、水系の魔法はまだリアルでは見たことないから…ちょっと想像しづらいのかも」

「なるほど?」

「じゃあルピナス先、一回お手本見せてあげればいいんジャナイ?」

「――そうだね。

 アエリスちゃーん! 一回ルピナが魔法撃つからお願いねー!」



 アエリスが遠くから、剣を握ったまま腕をあげて応じる。


 ルピナスはその禍々しい愛杖と共に、オレの隣まで歩み寄ってきて「よく見ててね」と一言告げると、



「――水の魔法、アクシアオルブ」



 掌を軽く持ち上げ、短く唱える。


 その瞬間、ルピナスの周囲の空気にわずかな揺らぎが生まれた。



 何もなかったはずの空間に、水が滲むように現れる。


 やがてそれは形を成し、人の頭ほどの大きさの水球が――一つ、二つ、三つ、と次々に浮かび上がっていく。



 夕暮れの斜めの光を受けて、水球の中には木々の色が歪んで映っていた。


 それを見て、「綺麗だな~」なんて思っていた、その直後。



「じゃあ、いくよ!」



 その声と同時に、ルピナスの周りに浮かんでいた無数の水球が、一斉に弾けるように動き出す。


 瞬く間に、すべてがアエリスへと殺到していた。



 それを追うように視線を向けると、アエリスもすでに構えていた――。



 さっきオレが放った炎流をしなやかに薙いだ時とは違う。

 より低くより強い、地面を掴むような踏み込み。


 全身に無駄のない力が行き渡っている。




「……!」




 無数の水の球体が、弾丸のように迫る。

 合わせてアエリスも動いた。


 鋭く走った短剣の軌跡が交差する――。



 一つ、二つ、三つ。



 連続する斬撃が、飛来する水球を次々と切り裂いていく。

 裂かれた水は霧のように弾け、空中で霧散する。



 ――だけじゃ終わらない。



 次の一撃は、迫る水球二つをまとめて薙ぎ払う。

 二つの刃が重なり、その名残だけが視界に刻まれる。


 そしてすべてを正確に捉え、一切の取りこぼしなく斬り払った。




「す、すげぇ……」




 実体験も踏まえての感想ではあるが、アエリス――この子は普段の淑やかな印象に反して、相当強いのかもしれないな。


 無論、これは彼女に限った話ではない。



「ルピナスって…炎系統ばっか使ってたイメージだったけど、他の属性?とかもいろいろ使えるんだね」

「そりゃあ当然よ」



 自慢げにニヤッとするルピナス。



「まあ得手不得手はあるけど、基本的にいろいろぶっ放せるよ!」



 言い方がおっかないな。



「属性ってそんな簡単にまたげるものなんだ。

 “炎の使い手は炎一筋だ!” みたいな前知識もってたから、意外っちゃ意外かも……」

「その印象も間違いではないよ。多種多様な魔法が使えるル・ピ・ナ! が、ただすごいだけだからな! っつって。

 ……でも、そもそも“属性”って分け方自体が曖昧なものだからさ」

「曖昧?」

「例えば、氷系の魔法は水属性の一つなのか? それとも”氷”という属性なのか? とか。

 霧系の魔法は水なのか風なのか? とか。人によって主張はさまざまだから」

「あくまで人間が作ったものダカラナ」



 ルピナスは杖をペン回しのようにくるっと回転させ、手の中に収める。



「ま、そんなことはどーでもいいのよ。次はアイトくんだよ。

 今ルピナが見せたやつ、やってみて!」

「……分かった。

 アエリスさーん! オレも水の魔法をやってみまーす!」



 離れたところにいるアエリスへ一報を送り、オレは再び構え直す。


 ルピナスが浮かべていた無数の水球。


 丸い形。

 透明な揺れ。

 冷たい重さ。


 できる限り、見たまんまの景色を思い描く。



 ――すると、今度はすぐに反応があった。



 掌の前の空気が揺らぎ、透明な塊がひとつ浮かぶ。


 さらにもうひとつ、もうひとつと、オレの周囲にも水の塊が浮かび始めた。




「っ! できた……!」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ