王都来訪
次々と貴族たちが王都に入っていく。
歩いて入る者もいれば馬車で少数の私兵を連れて入る者。
そこで異色を放っている貴族がいた。
「なんだなんだ!?」
王都の入り口にたくさんの人が並んでいる。
その列は数十分経っても途切れず王都の門の前に入ってくる。
そしてやっと貴族であろう者が王都へ入った。
そのものは華美に装飾された御輿の中に入っていた。
「総司令殿、王都に着きました」
「ふむ…ご苦労。私はとっている宿に向かう。後は好きにしてくれ」
「我々は王都の入り口にて待機しております。何かあった際は我々が総司令殿をお守りいたします」
「そうか…ではそうしてくれ」
「はッ」
アブラハムは宿の方へと向かった。
「失礼。ケントと言う名義で予約を取っていたものだ」
「ケントね。…あったわ。部屋は505、朝食付きって予約ではあるけど」
「あぁ昼と夜は別でとってある」
「わかったわ。じゃあ案内するわね」
看板娘が部屋へと案内してくれる。
「ここね。ベットとここに寝巻が入っているからサイズが合わなかったら受付に着てちょうだい」
「わかった」
「じゃあ私は出るから」
看板娘というか受付嬢が手を振りながら扉を閉めた。
「ふぅ…」
アブラハムは少し休憩をして今年の目玉政策である、『国境の壁建設』と『軍事組織と治安維持組織の分離』の報告書、そして学者などが書いた論文を整理を始めていた。
「国境の壁建設、ね。いい案ではあるが金がかかり過ぎる。今年の出費は激しく日本に対しての復興資金、日本とはじまった共同研究組織『日本技術学会』の創設資金と研究資金。数えるだけでも頭が痛くなる」
だがこれ以上にも壁の建設やら治安維持組織の創設やらを進めるほどの余裕というのがケント男爵にはある。
『失礼します。総司令殿、お時間が来ました』
「わかった。御輿の用意をしたまえ」
『了解であります』
服飾屋やらに仕立ててもらったものに着替御輿が来るのを待つ。
「総司令殿」
「あぁ」
御輿に乗り込み王城の門の前まで行く。
「招待状の提示を」
「こちらだ」
護衛兵が招待状を衛視に渡す。
「ふむ。確かにこれは本物のようだ。入城を許可する」
「では失礼」
輿はまだ上がり王城へと入っていく。
王城は金がないのか装飾品もあまりなく警備も門の前の衛視しか見ない。
そんな王城の道に金に塗られた輿はなかなか目立つ。
舞踏会の会場に着くと下級貴族はすでに入っており残すは中級、上級貴族、そして王族のみとなった。
下級貴族間で話しているものが多数見えるがアブラハムに声をかける者はだれ一人としていない。
これは人種差別が所以だろう。
我々北方民族は身体的にも頭脳的にも優れており逆に普通民族は北方民族に比べ平凡で優れている者はいるが北方民族を超える文武両道な種族はいない。
このことで北方民族は優等人種であり普通民族は劣等人種という論文が公になり対立が激しくなった。
だがそこで歴代の北方民族は普通民族に対し融和政策を講じてきたが結果普通民族が付け上がり、お互いが共に避け合う世になった。
このことが現代においても残っている。
だが徐々に中級、上級貴族、王族が入場していくとアブラハムの周りに人が集まってくる。
「あらあらアブラハム様。ご機嫌はいかがですか?」
この人物はケント男爵領の南西に位置するメルケンブルク伯爵夫人だ。
「あぁ貴殿の夫もご健勝のようで嬉しい限りだ」
「あらあら、そんなことを本当に思っているのかしら?」
「いや我々ケント男爵領は貴殿の夫の領地であるメルケルブルク伯爵領が南方方面の生命線となっておる。……マァ?グンセイチョウカンガイマトウチシテイルンダガ」
「あらなんか最後に何か言っていたような…?」
「いやはや貴殿はもう耳が腐っているようだ。いい医者を紹介しよう」
「要らぬお節介ですわ。それにまだ私は30!ですの!」
「女は30で賞味期限切れ、40で消費期限切れだ。最近いつメルケルブルク伯に抱かれた?」
「……」
「そうだろう。いつの時代、権力、権威あるものには綺麗で若い女が寄ってくる」
「……」
「いい加減諦めてはどうかな?貴殿は確か18。高等部を卒業したのちにすぐにメルケルブルク伯、まぁ当時は嫡男だったが結婚をした。だが結果30にもなって子供もできない貴族の夫人としての役目を果たせていない。私の耳は地獄耳のようだ。最近メルケルブルク伯が確か…ロンメル公だったか。其処の若い娘を孕ましたようだ。で、貴殿に内緒で側室にする準備を着々と進めているようだ」
なぜここまで夫人を追い詰めているのか。
この夫人はディマインド子爵の長女でありアブラハムの元婚約者なのだ。本来であるならばアブラハムがディマインド子爵に婿で行くことが決まっていたのだがケント男爵の称号と遺産を相続することに決まった。
ケント男爵はお金は持っているがその事実はあまり周知されていなく輿が金だとしても搾取した。ということで納得してしまう。
そして安易で500年くらい続いているのに子爵どまりのディマインド子爵と現在の夫人は婚約を破棄しメルケルブルク伯の嫡男に行ったのだが発覚したのはなぜかメルケルブルク領内にケント男爵軍が駐在している事実だ。そしてメルケルブルク領内に軍政長官と言う役職を持ったケント男爵軍人がいた。
この件については前ケント男爵がケント男爵領南西方面の平和安全法制が関わっている。
南西方面はケント男爵、メルケルブルク伯爵、ロマ―ナ神聖帝国という感じであまり安定していなくメルケルブルク伯爵が間に挟まっていることでロマ―ナ国境付近に軍を継続的に配置することが極めて厳しいということが軍の補給本部が出した。そのことでメルケルブルク伯付近を囲うようなぐうの配置をしたほうがインフラ的にいいということで配備を確定したがこれに対してメルケルブルク伯が抗議。
なぜ抗議をしたかというとケント男爵は王家から外務卿と国境警備・防衛担当という役職をもらっている。外務卿、内務卿、軍務卿は王国領内の相続や内乱に介入できる権利を保有しており、そのことで常に請求権を持っているが外務卿、ケント男爵が領内を囲んでいることを懸念している。
相続や内乱といっても相続人がいないとなるとその領地を自分の領地にすることも可能だ。
こうして第一次メルケルブルク紛争が勃発した。
すでにメルケルブルク領内はケント男爵に囲まれていたため劣勢に立たされていたがここで好機と見たロマ―ナがこの紛争にメルケルブルク側になって介入。
だが本命のロマ―ナが出てきたところでケント男爵は主力、ケント男爵軍第101旅団の投入を決定。
この101旅団は戦略魔法師として育てられた魔法師をを後方支援に置いており初撃約一つの都市が跡形もなくなくなる、戦略魔法(禁忌魔法)ツァーリ・ボンバを使いあと普通歩兵師団が追い打ちする。
そしてできたのは荒廃したメルケルブルク伯爵領。
すぐさまロマ―ナ軍は撤退しメルケルブルク伯もケント男爵の拠点であるケント村の招集場所でケント条約に調印しメルケルブルク伯爵の長く続く統治は終焉し領はケント男爵に信任を受けた軍政長官が管理している。




