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護身術など、必死に練習しても、
結果は見えている。
そもそも、それを使う場面に、
遭遇しない。
そして、本当に、
身を守る必要がある場面では、
習った事など、実用出来ない。
現実世界で、身を守る場合、
それは、試合では無い。
トラックに突進されたら?
ナイフで刺された後なら?
ガソリンで放火されたら?
その全てに対応する訓練など、
存在しない。
そして、練習しても、
その通りの出来事など、
起こらない。
それが、現実なのだ。
しかも、
現在、僕の目の前には、
2頭の恐竜がいて、
僕を狩る事を、
楽しんでいる。
本当なら、もう、すでに、
僕は、殺されている。
しかし、この2頭は、
それをしない。
僕の反応を見て、
玩具にしているのだ。
つまり、僕は、
遊び道具として、
殺されるのだ。
と思うのだが・・・
それは、僕の常識的な思考である。
では、僕の非常識な思考とは?
『僕は、ヴァンパイアだ!』
その瞬間、右ヒザに、違和感。
ヘシ折れた右ヒザの、
回復が始まっている。
だから、僕は、
1歩が踏み出せた。
通用しない事など知っている。
しかし、僕には、
それ以外の、選択肢など無い。
次の一瞬で、恐竜が動いた。
僕は、1頭の左足、目がけ、
タックルを出していた。
『なるほど、やっぱり、そう成る』
僕は、意外と冷静だった。
僕は、再び吹っ飛んでいた。
恐竜は、尻尾を使うのだ。
推定160センチの尻尾。
その尻尾をムチの様にして、
僕を、殴打した。
しかも、今回は、
タックルの瞬間、
僕の頭部に、尻尾を叩き込まれた。
本当なら、首の骨が折れ、
脳が破壊されたと思う。
しかし、僕は、
恐竜の尻尾攻撃を、
予測していた。
本当は、恐竜の、
ツメ攻撃を、警戒していた。
結果、その警戒が、
条件反射を生み、
尻尾の攻撃を、
僕は、両手で受けたのだ。
もちろん、止める事など、出来ない。
おそらく、
プロの格闘家の蹴りよりも、
強くて重いのだ。
それを、僕の腕力で、
受け止める事など、
出来る訳が無い。
当然、僕の両手首は、
粉砕されていた。
その上で、
オデコに、尻尾を受けた。
しかし、その時、僕は、
のけ反りながら、
それを受けた。
その為、首と脳は無事であった。
と思ったら、
後ろから、足払い。
もう1頭が、
僕を狙っていたのだ。
しかし、この時、
僕は、それを知っていた。
僕には、僕に向けられる感情を、
認識する事が出来る。
これまでは、クラスの人間が、
相手だったが、
恐竜相手でも、
それは、有効な様である。
その為、僕は、
前方に転がる様に逃げた。
しかし、そのタイミングで、
もう1頭が、尻尾を放つ。
つまり、でんぐり返りの途中で、
吹っ飛ばしを、食らったのだ。
僕は、床をゴロゴロと、
転がった。
もちろん、2頭の恐竜が、
それで満足する事は無い。
僕を狩る。
その意思が、理解出来る。
僕は、その感情を、
消失させようと、
先程から、何度も、
挑戦しているのだが、
上手く行かない。
恐竜は、本能で動いている?
本能は、感情では無い?
そんな理屈が、湧いて来るが、
そんな事を、
考えている場合では無い。
僕には、反撃の手段がある。
しかし、それを有効に使えるのか?
チャンスは、1度しか無い。
つまり、それと同時に、
もう1頭に狩られる。
だから、必殺技が使えない。
僕は、弱者である。
そんな弱者が、
技を出し惜しみしている。
例えば、ピストルを持っているのに、
使わず、刺されて終わる。
そんな、お巡りさんを、
僕は、無能だと思う。
しかし、自分が、
その状況に成ると、
最後の手段があっても、
使える訳では無い。
使った瞬間、
もう1頭に、殺られる。
結果、僕は、再び、
吹っ飛ばされた。
来ると解っていても、
かわせない。
チャンスと思っても、
1歩届かない。
だから、僕は、反撃が出来ない。
この時、僕は、
自分の死を覚悟した。
1頭の恐竜が、倒れた僕を、
踏みつけたのだ。
恐竜の左足のツメが、
僕の、右胸と、
右脇腹に食い込む。
僕の腕力で、
どう成る状況では無い。
そして、僕の首を食らう為、
大口を開けた。
しかし、僕は、
この瞬間を待っていた。
僕は、先程の攻撃で、
口の中を切った。
だから、僕は、その口の中の、
傷口から、血を吸出し。
恐竜の口の中に、吹きかけた。
そして、命じる。
『もう1頭を殺せ!』
しかし、
僕の血を吹きかけても、
その瞬間に、
眷属化する訳では、
無い様である。
僕を踏みつけた恐竜は、
多少、苦痛を感じているが、
自分の意思が、優先されるらしい。
その為、地面の土を、
後ろに蹴り飛ばす様に、
僕を、蹴り飛ばした。
結果、もう1頭が、
僕の頭部に噛みつく。
恐怖で、その光景が、
スローモーションで見える。
だから出来た。
僕を頭部を噛まれる瞬間に、
自分の口内を噛み。
血を吸って、それを吹きかけた。
次の瞬間、僕の首から、
「ゴリ、グリッグチ」っと、
恐怖の音が聞こえた。
僕の首が、ねじり折られたのだ。
絶望的な状況であるが、
事実として、折れたヒザや、
手首は、回復している。
その結果、僕の感覚は、
麻痺していた。
本来なら、
恐怖で気絶する状況だが、
僕は、ヨダレを垂らしながら、
笑っていた。
僕の血が機能したのだ。
眷属が増えた。
恐竜が2頭。
一体、誰が、何の目的で、
恐竜を誕生させたのか?
今の時代、
恐竜など居る訳が無い。
つまり、
ジェラシックパーク的な方法で、
恐竜を復活させたのだ。
しかし、そんな恐竜が、
現在、僕の指示を待っている。
そこに、男が1人、入って来た。
手に棒を持っている。




