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現在、僕は、
藤崎さんの見舞いで、
病院に居たハズである。
ところが、気づいた時には、
僕は1人、
コンクリート倉庫の様な、
場所に居る。
広さは、体育館ほど。
根拠は無いが、
ここは、地下の様に思える。
僕は、数秒前まで、
この倉庫で、
2頭の恐竜に、襲われていた。
しかし、殺される直前、
僕は、血を吹きかける事で、
恐竜を眷属化する事に、
成功した。
すると、それと同時に、
1人の男が、倉庫に入って来た。
何か言ったが、僕には、
聞き取れなかった。
男は、50センチほどの、
棒を持っている。
そして、その棒を、
器用に回転させながら、
こちらに歩いて来る。
僕は、心の中で、
2頭に指示を出した。
『僕を守れ、必要なら、ヤツを殺せ』
男は、160センチちょっと、
恐竜よりも、少し背が高い。
眼鏡をかけている。
髪型は、芸人の蛍原さんの様な、
おかっぱ頭である。
顔は、似ていない。
『優しそう・・・』
僕は、そんな印象を受けた。
そんな、男が、僕に接近、
2頭の恐竜が、
僕を守る為、男に向かって行く。
ところが、次の瞬間、
2頭の恐竜が、
左右に吹っ飛んだ。
先程、僕は、
恐竜に襲われ、
尻尾で、ぶん殴られ、
吹っ飛んだのだ。
ところが、男は、
そんな恐竜を、2頭同時に、
吹っ飛ばしたのだ。
男は、長さ50センチの細い、棒。
『新聞を丸めた棒?』
僕には、その様に見えた。
吹っ飛んだ恐竜は、
直ぐに立ち上がるが、
バランスを崩した。
身体が麻痺したのか?
何度も、立ち上がろうとするが、
力が入らないのか?
見えない、何かに、
押さえられて居る?
僕は、その様に感じた。
その間にも、
男は、新聞棒を回しながら、
僕に接近、そして、
今度は、僕が吹っ飛んだ。
見えていた。
棒を、回している最中、
それが新聞棒である事は、
解らない。
しかし、殴って来る最中、
僕には、それが、
スローモーションの様に、
見えていた。
結果、その棒が、
新聞棒である事も、
見て解った。
ところが、その棒を、
かわす事が、出来なかった。
殴られた瞬間、
ずっしりと重みを感じた。
恐竜の、尻尾攻撃とは、違う。
鉛の棒?
鉛の棒に、新聞を巻いている?
そんな事を考えながら、
僕は、6メートルも吹っ飛んだ。
しかし、骨は折れていない。
恐竜の尻尾攻撃とは、
明らかに違う。
これは、技なのだと、
僕は理解した。
男は、相変わらず、
棒をクルクルと回している。
バトンの様に、
棒の中心では無く、
棒の片方の端。
新聞の棒を、片手剣の様に持って、
回している。
スターウォーズで、
ライトサーベルを使う人は、
なぜか、必ず、回転させる。
アクション・シーンの為の演出。
それは理解出来るが、
もし、本当にライトサーベルが、
実在した場合、
それを、回転させるだろうか?
おそらく、
それを練習する過程で、
手が滑って、何度も落としている。
しかも、それは、棒では無い。
ビームの剣である。
つまり、無駄にケガをして、
最悪は死ぬ。
つまり、
刀を回転させるパフォーマンスは、
アクションシーンの為の、
華やか演出であり、
現実の戦い方では無いのだ。
では、現実の世界では?
例えば、ヌンチャク。
ブルース・リーの影響で、
ヌンチャクを、振り回す人が多い。
しかし、それもまた、
アクションの為の演出であり、
戦いには、不要な動きなのだ。
無駄に振り回し、
失敗したら?
自分を叩いたら?
振り回している最中に、
敵が、何かを投げて来たら?
打ち返せるのか?
絶対に?
バッターや、
卓球選手が、試合で、
空振りする。
ところが、殺し合いの最中、
ヌンチャク使いは、
空振りしないのか?
何の保証がある?
そもそも、ヌンチャクで、
打ち返せるのか?
手榴弾でも?
重さ1キロの鉄でも?
などと考えた場合、
戦いの最中に、
武器を、振り回す行為は、
弱い相手を、ビビらす手段であり、
攻撃や防御が犠牲に成る。
ところが、この男は、
先程から、新聞棒を、
クルクルと回転させている。
『あれ?』
この時、僕は気付いた。
もし、その新聞棒に、
鉛の棒が入っている場合、
その重さは、何キロなのか?
それを、こんなにも、
軽やかに、回転させる事が、
出来るのか?
すると、男は、
僕の気持ちを察した様に、
新聞棒の回転を止めた。
そして、
右手に持った、新聞棒を、
自分の左の手の平に、ポンポンと、
打ち付けた。
その動きや、音から考え、
鉛など、入っていない。
そう考えていると、
男は、接近して来た。
棒は、回していない。
そして、その棒で、僕を叩いた。
その打撃は、軽いモノだった。
本当に、新聞を丸めた棒。
その時、僕は、気付く、
『かわせなかった・・・』
なぜなのか?
見えていた。
少し、移動すれば、
かわす事が出来た。
ところが、その時、僕には、
かわすという発想が、
消えていた。
『この男も、感情を消せるのか?』
僕には、それが出来る。
つまり、この男に、
それが出来ても、
否定出来ない。
自分だけが、特別。
そんな都合の良い事など、
現実には、存在しない。
それが、僕の持論である。
そんな事を考えながらも、
僕は、警戒しながら、
男を見ていた。
そして、男の、動きに関する感情、
それを消失させる事を考える。
しかし、出来ない。
そもそも、この男は、
僕の事を、考えていない・・・?
中学校では、誰かが、
僕に関して考えた場合、
それは僕に伝わる。
家でも、そうである。
恐竜だって、そうであった。
ところが、この男は、
僕の事を考えていない?
そんな訳は無い。
事実、僕に向かって立っている。
そして、男は、
新聞棒を、回転させた。
今回は、1回転である。
それを僕に見せたのだ。
つまり、僕の事を、
考えているのだ。
ところが、それが、
僕に伝わらない。
結果、僕は、この男の感情を、
消す事が出来ない。
『そんな馬鹿な・・・』
今、男は、やさしく降り下ろす。
見えている。
少し、移動すれば良い。
何なら、走って距離をとる。
そんな事も出来る。
この倉庫内ではあるが、
僕が、走りまわれば、
男の攻撃を受ける事は無いのだ。




